『奇門遁甲ビジネス開運方位術』を読んで
『奇門遁甲ビジネス開運方位術』(安藤成龍著・アスペクト刊)という長ったらしい書名の本を読んだ。何故「ビジネス」という名称を加えたのか知らないが、内容的には必ずしもビジネスに偏っているわけではない。
近年は「奇門遁甲」という占いも、それなりにメジャーなものになって、知られてきてはいるが、どんな占いか知らない…という人の方が、まだまだ多いに違いない。一言で云えば、古代の兵法から進化した占いである。多分、これはプロ占い師であっても、知らない方が圧倒的だと思うが、この占いは元々は戦術であって占術ではない。
これは、本書の中身とは何の関係もないのだが、ついでなので記しておきたい。「奇門遁甲(きもんとんこう)」という名称は、現代的に解釈すると「神王を宮殿内から逃れさせる戦術」といった意味合いになるのだ。つまり「遁甲」とは「逃れる甲」の意で、ここで云う甲とは「頭(かしら)」又は「首領」の意味を持つ「甲」なのだ。元々、甲骨文字としての甲は「頭骸骨のひび割れ」に由来した形象である。一般の書物で「種子の発芽」に由来していると説明しているものが多いが、誤解である。つまり、戦いにおける頭で、古代では王そのものに当たる。
日本でも、戦国時代は影武者を立て、危うくなると、首領は城内から一目散と逃げ出そうとした。それと全く同じである。
次に「奇門」とは何かというと、文字通り「奇なる門」で「不思議なる門」の意だ。実際には、刀剣を意味する「庚」に負けない十干の門を意味する。庚に負けないのは「乙・丙・丁」の三干である。したがって、これらの三干を「三奇」とも呼ぶ。五行理論的に考えると、丙・丁は「火」で、庚の「金」に勝てるが、乙は「木」で負けそうに思える。ところが、乙は庚と干合するので、一体化し負けないのだ。両方を合わせると「奇門遁甲」とは、本物の王を秘密の門から城外へと逃れさせ、いずれは敵に打つ勝つための兵法…と解釈できる。だからこそ、諸葛孔明が、或いは真田雪村が、必死で研究した戦術として語り継がれているのだ。
まあ、そういったヘンテコな占術なのだが、平安時代以降、我が国でも大いに普及し、明治初期まで継承されていた。それが、明治中期から大正、昭和の前半までは完全に途絶えて、昭和四十年代から、再び中国から輸入された占術なのである。
そう云ういわく付きの占術が「奇門遁甲」なのである。
さて、本書の中身だが、その奇門遁甲を使った方位術を、具体的に365日分詳述されている実用書で、初心者にも判りやすい。何よりも、これだけの分量、原稿を書くのは大変であったろう、と思う。そういう点では廉価でもあり、素晴らしい。但し、一つだけ、著者は当然この本を手にする人達が、九星気学にも興味のある人達と気付いていたはずである。そうであるなら、何故、九星気学でなく奇門遁甲なのか、もう少し説明を加えるべきではないだろうか。一般の九星気学による暦を所有している人達にとって、同じ方位が全く違った意味合いで記されていることに疑問を抱かないはずがないからだ。早い話が、どっちを信用して良いのか、判らないはずだからである。九星気学の方が一般的である以上、奇門遁甲の優位性(?)を説明する義務がある。
或いは、説明し出すと面倒なので、あえて解説しなかったのかも知れない。ただ、本書では奇門遁甲らしく(?)、年盤はあまり意味がないかのようなことが記されている。そのようなことを記す以上、やはり説明責任はある…と言わざるを得ない。ただ、実用的であること、判りやすいこと、挨星法という占法技法を一般書に取り入れた点などは高く評価したい。
Posted by 0075 at
11:55:59 │
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