日本の国語の外国語化に話を戻すと、小説家志賀直哉は、日本語は「不完全で不便」であり、そのため「文化の進展が阻害されて」いるから、これを廃止して代わりに「世界中で一番いい言語」であるフランス語を採用してはどうかと主張しました。
彼は「小説の神様」とまで言われた文学者ですが、どうしたんでしょう。
大体、フランス語を「世界中で一番いい言語」と断定するのはどういう根拠なんでしょうか。
私が調べた限りでは、彼がフランス語に堪能であったとの証拠は見当たりません。
想像で適当に言ったのでしょう。
まあ、フランス人およびフランス語に幻想を抱く日本人は多いですからね。
評論家の小林秀雄もフランスでは普通の人たちが街のカフェで朝から晩まで哲学的な会話にふけっているなんて言っています。
実際には、暇があるとカフェにたむろしていることは本当ですが、ほとんどの場合、ものすごくくだらないことばかりしゃべっているんですが。
何度も脇に逸れて申し訳ありません。
しかし、占領国や宗主国(植民地を支配する側の国と考えてください)から言われるのならいざ知らず、自ら進んで国語を棄てようなんてあまり聞きません。
それも普通の人が言うのではなく、文部大臣や大文学者ですからね。
この話を掘り下げると大変なのですが、一言で言えばどの言語にも長所と短所があり、絶対的に優れた言語なんかないんです。
また、言語はその国のアイデンティティに直接関わるものであり、これを棄てることは国としての尊厳を棄てることに他ありません。
日本人特有の自虐が出たのでしょうが、実現しなくてよかったですね。
では。
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