「江戸しぐさ」と「いなかっぺ」

20170830065909-3205dd45a944fbf2df2d6fe8ed8eb91c2302f9e8.jpg少々前のことですが、「江戸しぐさ」なるものが話題になったことがあります。

相手を思いやる江戸っ子の粋さで、殺伐とした現代人が忘れた心意気だそうです。

なんだか物凄くうさん臭いですが、それは良いとして、これに関連して、「いなかっぺ」とは、「田舎の人」ではなく「井の中の蛙」から来たもので、江戸しぐさを守らないような世間知らずで粋ではない人を指す言葉だなんて説が最近出てきています。

なんでも、井中蛙(いなかのかえる)から「いなかっぺ」になったんだとか。

まあ、誰が考えついたのか知りませんが、本当に笑わせてくれます。

「いなかっぺ」は地方出身者に対する差別意識丸出しで、放送禁止用語だから(実は「田舎」自体が放送禁止用語です)、誤魔化そうとしてこんな出鱈目の語源を考えたのが丸分かりじゃないですか。

「粋な」江戸っ子のせりふには似合わないとでも思ったんでしょうね。

しかし、過去を現在の価値観で美化してはいけません。

もちろん、おとしめても。

昔は「いなかっぺ」なんて言葉を本来の意味で使っても誰もなんとも思わなかったでしょうし、江戸っ子が地方の人間を馬鹿にしていたことは周知の事実です。

それに似たような表現は、江戸に限らず、京都や大阪を初めどこにでもありますよね(英語にもフランス語にもあります)。

なのに、「江戸っ子」とは関西人も北海道の人も粋で心栄えする人や江戸っ子気質を持ってる人間を言い、野暮な人、性根の悪い人は何代江戸に生まれ育っても「いなかっぺ」と言うなんてことまで言い出します。

なんですかねえ、これで取り繕ったつもりなんでしょうか。

これじゃあ、江戸っ子の優越意識丸出しじゃないですか。

関西の人間があなたも江戸っ子だなんて言われたら怒りますよ。

もし、それでも「いなかっぺ」=「井の中の蛙」に固執する人がいるのなら、この意味で使われたという実例を示して欲しいものです。

ついでに言っておくと、江戸しぐさも実際には昭和の後半に作られたものでそうで、言ってみればでっち上げなんですね。

では。