表の仕事用のPCの件と、
来週のすぴこんの件の話をするために、銀朱様が訪れてくれた。
一通り、仕事の話をしてから。
ふと、昔の話に入る。
3年ほど前の8月、私達は出会った。
私はまだ、結婚をしていた。
2度目に会ったのは2週間後。
その時、彼は私に「準備できるだけの今までのお前の写真を見せてくれ」と願った。
私がもって言った写真を大切そうに見たあと。
彼は私の頭を撫ぜて、こう言った。
「付いて来い。俺の覚悟はもうできている」
その言葉を聞いた2週間後。
私は離婚を決断した。
あれから3年。
私の人生の全てが、変わった。
誰かの役に立ちたいと願い、生きることを思い出させてくれた彼に、
私は感謝をしている。
「覚えているかな。
俺はあの時、覚悟をしているって、お前に告げたな。
お前があのまま、結婚しているならば、
それが恙無く上手く行く様にするのが俺の役目だと想っていた。
お前が夫との関係の修復を願うなら、そうできる様に手助けをするつもりでいた。
お前が結婚生活の終わりを願うなら、
後腐れなく夫だった男と終われる様にしなければならないと想ってた。
お前が1人で生きることを選ぶなら、また誰かと出会える日まで生きていける様に力をやろうと想った。
・・そして、お前が俺の傍で生きるなら。俺の生きる道についてこられる様に教育してやらなければならないと想ってる。
それには、お前の努力も覚悟もいるんだってことも、分かるだろう。今なら。
なのに、お前、二股かけて、俺を天秤にかけたのな。ったく、失礼な(笑)」
笑いながら、彼は頭を撫ぜる。
ごめんなさいー、もうしません。
もうしませんと頭を下げるたび、
「いいやー、お前絶対、あと2〜3回はするよ」と言われるのだけれど。
でも、今日は私が真顔になる。
ゆっくりと頭を下げて、口にする。
「一生を賭けて、償わせてください」と。
・・・。
あの時から、変わらずに。
揺らがずに、想っていてくれたのに。
今でもこんなに尽くしてくれているのに。
愚かなことをしてしまった。本当に。
そう想ったから、私は深々と頭を下げた。
「顔、上げろよ」
顎を捕まれる様にとられて、視線を合わせられる。
時折見せる、少し怖い瞳。
息を吸うのも、困難になる目。
初めて会ったあの日も。
そう、この目に怯えた。
多分、一生忘れられない、瞳。
幾多の生の中で、私はこの瞳に囚われた。
叶わない想いと知りつつ、焦がれた。
「ああ。一生、添えよ。付いて来い」
低い声に小さく頷く。
時間を越えた私の願いは叶ったのだろうか。
どうだろう。
ソレはこれからなんだろう。
愛しているなんて言われたことはないけど。
多分コレが、彼なりの愛なんだろう。
そう思う。
***番外***
「あー、宣言しておく」
「何をデスか?」
「んー、俺、マッチョになる」
「は?」
「マッチョになって、日焼けサロンに行って、黒くなるぜ。
でもって、オイル塗って、テカテカッとな・・。フフフ、そんな40代、いないだろ?」
「・・・それって。私がゴキブリと同じくらい大嫌いなチョコボール○井じゃないですか・・・」
「お前の好き嫌いなんて、関係ないだろう。フッフッフッ!さーて、鍛えるか。フハハハハハ!」
天使さん、天使さん。
お願いがあります。
・・・銀朱様のマッチョ計画を、どうか全力を賭して止めてください。
切実なお願いです。