翌朝。朝ご飯をお母さんに食べさせてもらって。
お母さんの好きな人とお話をする。
お母さんの好きな人は料理人。
だから、2人共話をしながら、お店の料理をせっせと作る(笑)
夜は別のお店を持っている人だから、いないけど。
お母さんの仕事でもプライベートでも、欠かせない人。
そろそろ出るねと告げると、2人はそろって見送りに出てくれた。
「俺のスリッパ・・」
「あ、ごめん」
「いつもお前は俺のを履いて行く・・(涙)」
そう言って、笑いながら、慣れたようにスリッパを交換する。
それが何だか、夫婦みたいだった。
5年。いろいろあった。
離婚して、店を立てて。
周りからみた幸せを捨てたお母さんは、
本当の心の幸せを今噛み締めている様に思える。
あの頃、お金はたくさんあったけど。
お母さんは幸せそうじゃなかった。
欝で拒食症で、いつも辛そうにしてた。
・・38kgまで体重が落ちちゃったんだよね・・確か。
見せびらかされるように、養父はお母さんを色々な所に連れて行ったけど、
お母さんは幸せそうじゃなかった。
少しでも反抗すると、暴力を振るわれて。
何度も何度も、私は庇ったのを覚えている。
世でいう不倫からはじまった恋。
だけど、私はそれを応援してきた。ずっとずっと。
・・・それは、お母さんが失う覚悟も身を切る想いもして、
たくさんの代償も払ってきたから。
私を産んでくれた人だから。
私は。
不倫をした人が全て不幸になるなんて思えない。想わない。
それが摂理だと誰かがいうなら、その摂理など私が変えてみせる。
・・・世の中は、方程式みたいにそう簡単に答なんて出ないはずだから。
「あのね、あのね。
私ね・・えっとね・・・」
見送りに着てくれた2人にを見上げる。
銀朱様は、気を利かせてくれて、車の助手席にいる。
帰ったら、言おうと想っていた。
言わなきゃと想っていた。
だけど、照れくさかったから、最後になって。
でもね・・伝えたかったの。
「いってくるね。・・・お父さん、お母さん」
顔を見合わせて、2人は笑っていた。
それはそれは、嬉しそうに。
「私にはね。お父さんが3人いるのよ。
産み。育て。で、最後に・・お母さんを任せた人」
そう言って、車に乗り込み、エンジンをかける。
照れくさかったから。
幸せでいて欲しい。一日でも長く。
お母さんはきっと、年齢的に大事な人に置いていかれるのだろうけど、
だからこそ、幸せでいて欲しい。一日でも長く。
結婚は許されないとしても、幸せでいて欲しい。
幾多の困難を越えている彼らだから。
どうか、幸せでいて欲しいと想う。