こんな真夜中。
銀朱様は必死に仕事をしている。
・・・本来、私達、SEの業務に、昼も夜もない。
私がこうして、鑑定を続けていられるのは、
激戦でないプロジェクトに銀朱様が私を送り込んだから。
激戦となっているプロジェクトには自分が身を置いて、
不可能と想われることも、可能にしている。
常人からみたら、それは奇跡。
でも、奇跡を起こし続けなければ、明日はない。そういう・・生活。
その肩に背負うのは「家」と「家族」。
その双肩に何人乗っかっちゃってるのよ・・と、苦笑するくらいの人数の生活を支えている。
・・・かつて、自分を虐待した人間すらも、その背に背負う。
「年老いてね、小さくなっていく姿を見て。
・・・俺は責めることは出来なかったんだよ」
少し昔、目を細めてそういった時、彼は少し、複雑な顔で笑った。
許すということは・・そういうことなんだろうか・・。
それでも、今日、ぽろりとメールで零した。
「スランプ、かもな」
珍しい一言に私は目を閉じる。
相当・・辛いのだろう。
少し時間を置いて、電話をかける。
サーバー室にいるだろうから、出ないのは知ってるけど、
それでも、メッセージは残しておいた。
「貴方が好調の時も、不調の時も。魂はいつもお傍におります。
心はいつも、貴方がご無事でご活躍できることを祈っています。
そして。体はここで、貴方のお帰りをお待ちしております
だから、いってらっしゃい」
背中は今、護れないから。
せめて、心が折れない様に、支えよう。
傍にいなくても、心は届けられる。
・・朝には、休みに来るらしい。
明日は私は休みだから、ゆるゆると一緒に寝よう。
彼が激戦に戻るまでのつかの間。
本心をいえば。その背中を護りたい。
傍で四六時中、全力を尽くしていたい。
でも、同じプロジェクトには入れない。
実力もさることながら、その時は私は朱華を辞めるときだから。
「それは俺が許さん。・・・俺は望まん。
クライアントがお前を必要とする限り、お前は朱華でいなければならん。
俺は朱華を奪うことはしたくない」
誰よりも、私が朱華でいることを望んでくれるのは。
多分、銀朱様なのかもしれない。
ふと気付く。
・・・・いつか、彼が私に望んだ「聖母のような人」は。
彼にとって帰る場所なんだろう。
近付いているだろうか、私は・・。