夜空。
いつも泊まるホテルのテラス。
東京から少しだけ離れて、空の近い場所まできた。
私は皆さんより、一足早く、
7日間のワークは終えていた。
私のワークの相手は、結婚した相手。
今はもう会うことがない人。どこかで引っかかっていた人。
「いっぱい、愛してもらっていたことに気付きましたよ。
忘れていたことを、たくさんたくさん、思い出しました。
私にもう一度立ち上がるチャンスをくれたのも、また、彼だったのです。
・・・彼もまた、私の中で特別だった、ということですね。
もう、会うことはないけれど、会ったらありがとうといえるでしょう」
「そのありがとうは、・・男にとっては最大の屈辱だな」
苦笑しながら、銀朱様は空を仰ぐ。
月はない。
「男ってさ、女より単純で。実は女々しいって言葉がぴったりで。
別れた女に「ありがとう」なんて言われた日には、空しくなるんだよな。
「貴方のせいで不幸になった」「貴方と別れて清々した」って言われたなら、
まだ、収まりがつくんだが。そのありがとうは男にとって最大の屈辱だよ」
「でも、ありがとうなんです。嘘は言えないから」
お前らしいよ、と彼は笑って。そっと目を閉じた。
思い出しているのは、多分、自分がかつて愛した人達なんだろう。
「バカが・・・」
節目がちにそう・・・二度ほど繰り返して口にした。
憎むより。恨むより。
愛し続けるほうが難しい。
憎しみに囚われるのも苦しいけれど、
過去の優しい想い出に囚われるのは、もっと苦しいのだと想う。
二度とないのだ。
訪れることは。
もう、彼女は生きてはいない。
女神様。聞こえてる?
・・・私達の女々しい人が泣いてる。
それは埋められない。
心に空いたその空洞には、
たくさんの想い出が詰まっているはずだから。
埋められるはずがない。
だから、そっと抱き締めた。
私が夫より学んだことは、
人は誰でも弱いということ。
弱さを受け入れあって、補い合って、癒しあって、初めてパートナーだということ。
その学びを無駄にしないように。
抱き締めながら、そう・・誓った。