ホテルの窓から幾多の光をその両目に映す彼の目は。
あのいつかの新宿の日の様に、
悲しそうな影はなかった気がした。
ここは両国。
女神様が生きていた頃、最後に暮らした東京の街。
銀朱様と女神様が、最後に会った場所。
東京すぴこん1日目が終わった夜。
常磐ちゃんと銀朱様と3人で打ち上げをした。
いつも大体、すぴこんの夜は銀朱様が合流して、
夕飯を食べさせてくれる。
ただ、その日は私はとても疲れていた。
そして、運悪く、鍋の出汁に海老が入っていたらしい。
鍋を食べてしばらくすると、体中にじんましんが出てきた。
このままだと、翌日の鑑定に支障が出るなと思い。
私だけ先にホテルの部屋に帰る。
部屋に入り、シャワーを浴びて薬をぬり、
ベッドに横たわる。
程なくして、クタクタに疲れていた私は眠りについた。
2時間ほど経って、電話が鳴る。
銀朱様からだった。
程なくして帰ってきた彼は、
横たわる私の頭を優しくなぜた。
「顔には、出ていないみたいだ。
あとは・・・少し収まったみたいだな」
首元に出たじんましんを撫ぜて、優しい目を細めた。
体を起こそうとすると、
そのままでいいと言ってくれたから、
ベッドに横たわったまま、話を聞いていた。
「たくさん、お前の話を聞いたよ。
俺、嬉しかった。
常磐さんがさ、お前を必要としてくれて。
俺、本当に嬉しかったんだ」
常磐ちゃんは。
私を含めて、私の周りの人をたくさん幸せにしてくれる。
あんなに、本当にうれしそうな顔をした彼を見たのは、・・・久しぶりだった。
銀朱様は、その両目で夜景をずっと見ていた。
その胸には、私を含めた色々な人が去来してるんだろう。
「お前を利用しようとした人間から、
使い倒そうとした人間から、俺はお前を拾って。
ここまで、一緒に来た。
俺が育み、
俺が愛した存在が、誰かに必要とされて。
誰かの助けになれる今を。
・・・俺は誇りに思う」
・・・・。
私は、閉じていた目を、開いた。
今。
なんて?
この3年半。言われた事がない言葉。
そして、これから先、
やっぱり、聞くことが殆どないであろう言葉。
それがそこには、確かにあった。
ぽろぽろと涙を零した私は。
小さく、ありがとうと告げた。
・・・・・・。
かつて。
彼が愛を告げた人は、もう生きてはいなくて。
かつて。
私に愛を告げてくれた人も、もう生きていなくて。
いつか、私もきっと、彼と離れる日が来るけど。
あんなにも、誇らしく。
あんなにも、幸せそうな顔で笑っていた彼の横顔を。
私は忘れないだろう。
常磐ちゃん・・・。
きっかけをくれて、ありがと。