「お前のそれは、たくさんのものを壊してしまうな。
俺が、きちんと飼いならしてやらなければ」
いつか、頬を掬われて、銀朱様にそういわれた。
それ、とは。
「恋愛において、相手を支配したいという欲求」だ。
相手を自分に引き寄せて、心を掴んで。
その過程を楽しんでいる。
・・あまり誉められたもんじゃない、そういう自分の一部分。
私が掴みきれない人でなければ、私と長くは一緒にいられない。
ふと3時間ほど時間が空いたので、
久しぶりに自分に対して、ヒプノセラピーを行った。
前々から会いたいと想っていたサブパーソナリティ(副人格)がいたからだ。
人には無数の人格、サブパーソナリティがある。
その1つ1つが自分自身、メインパーソナリティを作る。
自分を構成している、1つの要素、だ。
今回、私が会いに行ったのは「恋愛のサブパーソナリティ」。
ゆっくり鼻から息を吸って、ゆっくり口から吐いて。
自分に対して、予め設定してある、「後催眠」の語句を口にする。
何度も行っている私にとっては、後催眠の語句だけで、すぅ・・と催眠状態に入った。
目の前に広がるのは、草原。抜けるような・・緑と青。
一度イメージの中で目を閉じて、3つ数えると。
草原に階段ができた。
・・暗いそれを降りると、重くて黒いドアがあった。
嫌な感じだなと苦笑しつつ、ドアを開ける。
想ったよりも、その先は明るい場所だった。
天窓から光が降り注ぐ。
・・・白が支配した、そんな空間。
分析をはじめる自分を今は眠らせて、穏やかにイメージを展開させる。
部屋の奥にベッドがあって。そこに、女の子が腰をかけていた。
どこかで見たことがある子だった。
にこやかな笑みを浮かべる、白い、ふわふわのドレスをまとった女の子。
ベッドに腰掛けて、クマのぬいぐるみを右手に抱きしめている。
人懐っこそうなんだけど、「私」の奥で警鐘が鳴る。
・・・こいつ、子供の姿だけど、女だ。
昔みたいに、自分の一部がイヤでも、逃げたり、否定したりはしない。
だが、私にはろくな人格がいないのかもなと、自分の人格を見て、気を引き締める。
こいつに、誤魔化しや大人の理論なんて、通用しない。
純粋で汚い。・・・子供の純粋さと狡さの向こう側に、女の汚さが見える。
最も、私が嫌う女の汚さを、自分の奥で見るとは想わなかった。
軽くショックを受け、詰まった息を抜くようにため息をついて、仕切りなおす。
「会いに来た。貴方が・・私の恋愛のサブパーソナリティ?」
「そうよ、でも、別に呼んでないわ、私は」
可愛くない返答をする癖に、可愛い笑顔で笑う。
「いつぐらいから、私の中にいる?」
「・・ずっと前よ。ずっと。6歳くらい」
大き目の熊のぬいぐるみを背中の方から抱きしめて、
上目遣いでコチラを見やる。
「私、貴方のこと、好きじゃないわ。
貴方が私のこと、好きじゃないから」
子供だから、鋭い。
それでも、にこやかな笑みを崩さないあたりが、女だ。
「ねえ、私がいなかったら、銀朱様にも出会ってないわ。
愛されたかったから、彼の傍を選んだのでしょう。
あの人は変わらないし、あの人はずっとそばにいてくれるし。
あの人は育てなくていい位に、強いもの」
「・・・・そうだな」
当時のことを思い出し、あえて、否定はしなかった。
その通りだ。
彼に運命を感じたけれど、彼が弱ければ、ついてはいかなかっただろう。
弱い人と一緒には行けない。
!
・・・自分自身から、その言葉が出て、ハッとする。
それは、どうしてか?
「私は強い人と生きていくの。そう、決めているの。
弱かったら、護ってもらえないじゃない。
弱かったら、護らなきゃいけないじゃない。
弱かったら、いつか一人になっちゃうでしょ?役に立たないなら、いらない」
「何故、弱い人とは一緒にいられない?」
聞きたかった。それを。
自分の、本音を。
彼女は、目を逸らし、私に答えた・・・・。