2007-04-30
この部屋に誰かいる! 11
「井口清満という霊能者の先生を知っているんだ。」
坂下のその一言が、みんなの絶望的状況を、一瞬で明るくしてくれたのだった。
「坂下は何でそんな人を知っているんだ?」
加藤は興味を持って聞いて来た。
「前に、知り合いの人が霊現象に悩まされていた時に、その先生にその場を除霊してもらったんだ。
その時に連絡先を聞いたんだけど・・・ただ・・」
「ただどうしたの?教えてよ坂下君」
宮部典子は必死な形相で聞いて来た。
「うん。言い憎いんだけど・・・その人も仕事で除霊などをやってくれているんで、お金が必要なんだ・・・それだけが・・・」
「そうだろうな・・・人の厄介ごとに首を突っ込むんだから、タダでやってくれるヤツなんかいやしないだろう。」
加藤は当然のことのように納得した。
「そうだよね。誰にでも出来る訳じゃない能力を使うんだから・・・当然有料よね。」
裕子も仕方ないという感じで言った。
「でも・・・坂下君、その人は本物なの?ほら、私達には見えないし分からないじゃない・・・だから口から出任せで・・・と言う事はないのかな?」
宮部典子が我々の不安を代表して聞いた。
「そう思うよな。僕の知っている限りその知り合いの家は、それまで悩まされ続けた霊障が消えたまま、平穏に今に至ってるようだった。」
坂下の説明に一同は黙ってしまった。
「・・・・・・・」
続く
2007-04-30
この部屋に誰かいる! 11
窓にくっきりとついた手型・・・
おい・・・ここにこんな手型なんか付けてないよな?
「うん。綺麗なままの窓だったよ・・・どうして?やっぱり何か居るという事?」
宮部典子は、先ほどまでと違い、怒りを帯びた口調で言った。
「こうなったら、みんなで怒りをぶつけてやろう!
負けないぜ!!って気持ちが大切だと思うからさ」
加藤が威勢の良い言葉をみんなに投げた。
「そうね。怖くなんか無いわよね!」
裕子も追随して言った。
「俺さ・・・こういう時の専門の先生を知ってるんだけど・・・電話してみようかな?」
坂下は、おずおずと言ってみた。
「専門の先生って?」
宮部が聞いて来た。
「うん・・・専門て、霊能者の先生なんだ。」
坂下は簡単に説明した。
「そうだね・・・気を強くするだけじゃ駄目だもんね。そうしてみてよ。」
宮部がお願いしてきた。
「おい、その先生って名前なんていうの?」
普段 あまりこういう事を信じないタイプの男なのだが、今回ばかりは同じようにSOSを出したいらしい。
「その人の名前は、井口清満という人なんだよ。」
族く
2007-04-29
この部屋に誰かいる! 10
その時、ベッド下に立てかけてあったビール缶が音を立てて倒れたのだった。
カラーン・・・・コロコロ
みんなが凍りついた。
「何で倒れたんだ?風も無いし揺れもしなかったのに・・・」
加藤が自分で立てた缶だっただけに信じられないという顔になった。
「偶然か?それとも・・・やっぱりベッドの下に」
坂下はそう言いながら、一気にベッドの下を覗いた!
「どう?坂下君 何か居る?」
裕子は坂下の勇気に驚きながら聞いた。
「いや・・・何にも無いし、誰も居ない。」
みんな確認の為にベッドの下を覗いた。
「本当だ・・・誰も居ないな・・・」
その時だった。
一人だけ覗かなかった、宮部典子が叫んだ。
「キャーッ!」
その声に驚いた加藤が振り返り宮部に聞いた。
「どうした宮部?!」
宮部典子はカーテンを指差していた。
「あのカーテンの隙間から男が見ていたわ」
「カーテン?」
そう言って加藤はカーテンを勢い良く開いた。
「うっ・・・・・」
そこには明らかに人の手の跡が、くっきり残っていた。
少し成人男性より小さめだが・・・
続く
2007-04-28
この部屋に誰かいる! 9
宮部典子の一言が、みんなを冷静にさせた。
ごまかしてもそれは解決方法じゃない!
一人取り残されてしまう彼女の立場を考えた考え、結論、対処方法を考えてあげる事が友達だと思った。
「分かった・・・宮部、裕子・・・俺が見たものを言うよ。あのベッドとの隙間から、男が覗いていた、そして手を出していた。」
「手を出していたの?どんな感じに?」
裕子が聞いて来た。
「坂下・・・デジカメを見せてあげてくれ。」
加藤は坂下の、先ほどの写ったものを見せた方が、早いと思ったのだった。
「良くないよ・・・写真は」
「ううん、良いよ坂下君。気を使ってくれてありがとう。でも・・・見てみたい・・・自分の目で確認してみたいの。」
気丈な決意で宮部典子は答えた。
「・・・分かった。宮部さんの勇気には勝てないな・・・これだよ。さっき消去しようとしていたんだけど・・・」
そういって坂下は、3枚目の写真を見せた。
「・・・・・・・」
宮部典子が凝視しているその横から、裕子も覗いていた。
「本当だ・・・ここだよね?」そう言ってみんあで問題のベッドを見た。
加藤が今まで飲んでいたビールの空き缶を、そのベッドの隙間に置いてみた。
ちょうどビール缶ほどの隙間だった。
やはりこの高さでは、人が寝転がっても入れる隙間ではなかった。
その時だった!
続く
2007-04-27
この部屋に誰かいる! 8
坂下はとっさにデジカメを、2人の女の子の目から外そうとした・・・
この写真は、宮部さんが見る前に消去しなければ!
しかし・・・そんな苦労も裕子の一言でかき消された。
裕子は坂下の目線がベッドに行った事を見逃さなかったのだ。
「ねえ!あれ・・・なに?なんに見える?」
裕子はベッドを指差して叫んだ。
加藤と坂下は、坂下の手にまだデジカメが握られている事を確認した。
「坂下・・・消せ!」加藤は小さな声で坂下に指示をして、裕子と宮部典子から、坂下を隠すように立った。
「どうした?裕子・・・何が見えたんだ?お前気のせいだろう?冗談きついぜ?」
「う・・・ん。気のせいかも・・・でも。」
裕子はあいまいな答え方をした・・・今はこの答え方の方が良いに決まっていたのだ。
「違うよ・・・みんな。私のためを思って言ってくれているんだろうけど・・・でもそれは逆に良くないよ。だってあたしここに寝るんだよ?みんなが帰った後も・・・一人で。中途半端な状況は、解決方法じゃないよ?」
宮部がいう事は、至って当然の話である。
4万5千円のワンルーム。
2004年12月築・・・と新しい。(当時2006年)
このワンルームには何が・・・
2007-04-27
この部屋に誰かいる! 7
「とにかくデジカメで撮ってみようぜ?」
加藤は坂下からデジカメを奪い取るようにしてシャッターを押し始めた・・・
「カシャ!カシャ!カシャ!」
3枚目を撮り終えた所で加藤はモニター画面を確認した。
その加藤の顔がこわばった・・・
「どうした?加藤!おい加藤?」
デジカメのモニター画面をじっと見つめたままで止まってしまった加藤。
「どうしたのよ〜加藤くん。悪ふざけは今はやばいよ!見せなさいよ!」
「これ・・・コレ見せて良いのかな・・・」
そう言って加藤はデジカメを、坂下に手渡した。
「・・・・・」緊張しながらモニターを見る坂下
そこに写っているのは、宮部典子のベッドだった。
そしてその下・・・ベッドの下の隙間から、人間の目がくっきりと写り、そのベッドの下から、さらに人の手が出てきていた。
坂下はすぐにそのベッドを肉眼で見てみた。
隙間の高さは、10cmくらいしかない・・・
とても人が隠れられる高さではなかった・・・
続く
2007-04-26
この部屋に誰かいる! 6
坂下は極力冷静になろうと努めた。
本当は早くこの部屋から飛び出したい気持ちだったが、この部屋の持ち主の宮部典子の事を考えると、この不確かな自分の発言で、怖がらせたままにしたらいけないと思った。
「俺が今 影が動いたような気がしたと言ったけど、確信はないんだ・・・ごめん。もしかすると気のせいかも知れない・・・いやきっと気のせいだと思う。」
坂下はそう宮部に言った。
「そうよね・・・気のせいって事もあるよね?だってみんなが見た訳ではないしさ!」
裕子が励ますように言った。
「おい坂下・・・お前デジカメ持って来たよな?」
加藤が坂下に聞いて来た。
「ああ あるよ。撮ってみるのか?」
「うん。よく目では見えなくてもカメラには写るっていうからさ・・・デジカメならすぐ確かめられるし・・・何も写らなきゃそれで安心なわけだし。」
「そうだな。加藤の言うとおりにしてみよう。俺が変な事を言ったばっかりにさ・・・ごめん」
それまでうつむいたまま黙っていた典子が口を開いた。
「でも・・・確かに安いよね・・・はじめはラッキーと思っていたけど・・・おかしいよね?あの家賃は・・・」
「まあそう言うな。写真を撮ってみよう・・・ただの掘り出しものかもしれないぞ〜」
加藤は少々乱暴なタイプだが、こういう時には頼りになる男だった。
続く
2007-04-24
この部屋に誰かいる! 5
あの時 口にしなかった言葉・・・
「ねえ・・俺さっきから気になっているんだけど、宮部さんの影が、一つだけ妙に薄くないか?」
3人は突然の坂下発言に驚き、宮部典子の後ろを見て、そして自分の影を見た。
「なんか・・・本当だ。違うよな?裕子?」
「うん・・・ごめんね、典子。でも私もなんだかそう思うし、背中がゾクゾクするんだ。」
「えっ?ホント?うそだよ・・・」
典子は慌てて立ち上がりながらそう言った。
「それからその宮部さんの影から、もう一つの影が別れて動き出したんだ・・・すーっと」
坂下は、薄くなったと思われる理由を伝えた。
「影が分離したのか?おい!それって誰の影だよ?宮部は動いていないのに影が勝手に?意味わかんねえよ・・・」
加藤も立ち上がって、辺りを見回しながら言った。
「ねえ!みんあひどくない?人が住む家よ?」
宮部典子は半泣きになりながら言った。
「ご・ごめん・・・みんな一度冷静になろう。座れよ。加藤も裕子も・・・」
続く
2007-04-22
この部屋に誰かいる! 4
まだこの段階では、私は呼ばれていません。
この内容は、4人の依頼者による説明を基にしました。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
先ほどのトイレから戻った時、俺は確かに見た。
宮部典子が背にしている壁を、真っ黒い影が、壁を移動して行き消えた事を。
部屋のライトはぶら下がり式だが、かなり高めの位置だから、宮部典子の背中側の壁に、彼女自身の影が映るとしたらかなり無理がある。
それに彼女の影が彼女自身より大きく写る事自体無理だと思った。
それに、あれっと思わせる、嫌な感じがしたのも事実だった。
影が一人で勝手に動く・・・・
そしてその家賃の安さ・・・
坂下は言わないつもりだった言葉を口にした。
続く
2007-04-22
この部屋に誰かいる! 3
先ほどの話など忘れたかのように盛り上がる。
「ところでさ、この部屋って明るくて良い感じじゃない?これでお家賃いくらくらいなの?」
裕子がビールを口に当てながら聞いて来た。
「そうだな・・・ワンルームにしては結構広いし、ロフト付きじゃない、高そうだよな?」
加藤も同調して聞いて来た。
「うん、素敵でしょう?でもね・・・この部屋が結構安く借りられたんだ!私の運かな?えへへへ」
宮部典子は酔っぱらったせいか、少し口調が揺れながら答えた。
「へ〜・・・いくらだったの?お家賃?」
「お家賃は、4万5千円で、共益費なし!どうだ!!」
「・・・・・・・」
シーンと静まり返るみんな
「おい、そりゃ安過ぎないか?なあ坂下、お前もそう思うだろう?」
加藤に聞かれて坂下もうなずいた。そしてうなずくと同時に、さっきトイレから帰ってきた時に見たものを、急に思い出した。
続く
2007-04-21
この部屋に誰かいる! 2
トイレから帰った男の子(坂下君)は、そのワンルームの部屋の扉を開けた。
そこには、女の子2人と、男が一人・・・あとは自分だけの筈・・・
「????」
「どうした?坂下?そんなにびっくりした顔をして?」
もう一人の男友達 加藤君が聞いて来た。
「そうよ・・・変よ?もう早く座りなさいよ?」
女友達の裕子が笑いながら席を勧めてきた。
「あのさ・・・今 誰も動いて無いよな?」
「何言ってんのよ?みんな見たとおり座ってます!もう変すぎる!!」
そう言ってこの部屋の借主の、宮部典子が笑った。
坂下はそんな宮部典子の顔を見て、これ以上言うのは良くないなと考えて、いったん席に座った。
「勘違いだ・・・ごめんごめん。少し酔ったのかな?」
坂下は笑ってその場の空気を変えることにつとめた。
「さあ・・・飲みがたんねえんじゃねえか?」
そう言って加藤が新しい缶ビールを開けてよこした。
「そうよそうよ!今日はみんなで雑魚寝すれば良いんだし・・・気にしないで飲もうよ?」
宮部典子もだいぶアルコールが入ってきているようで、あまり先ほどの話は気にしていないようだった。
続く
2007-04-21
この部屋に誰かいる! 1
アパート・マンション・コーポ・テラスハウス・一戸建て・・・・
住まいはいろいろありますが、新築で自前の一戸建てや、新築の分譲マンションなどは、比較的土地に問題がなければ、あまり悩まされる事がないことかも知れません。
しかし、それが前にどんな人が住んでいたか分からない、または何があったか分からない賃貸物件。
そうは言っても、それはごく僅かな事だと思いますが、このお話はそのごく僅かなパターンにはまってしまった方のお話です・・・
このお部屋にお住まいの方は女性で、歳は24歳。
仕事は美容師をされている人でした。
引越しが無事に終わり、手伝ってくれた友達、男の子2人と女の子1人、合計4人でお疲れ会を部屋でしていたそうです。
ビールを飲みながら、出したばっかりのテーブルの上に、お菓子などを広げて談笑をしていたそうなのですが、一人の男の子がトイレに立って、戻ってきたときから、ある異変に気がついたそうです。
続く
2007-04-19
この部屋に誰かいる! プロローグ
このお話も、前ですが私が体験した実話です。
これは、読まれる皆さんの中にも、同じような経験をされた方が、いらっしゃるのではないかと思います。
そういう方は、自分と照らし合わせながらお読み下さい。
「この部屋に誰かいる!」
2007-04-19
ぶら下がりの骸(むくろ) 9
腐臭の消えた部屋・・・
「さて・・・ここを借りさせてもらうよ、橋本君」
私はその部屋を出て、隣の部屋をノックした。
ほどなく若い男性が顔を出した。
「あの・・・この隣の部屋を借りようと思って見に来たのですが、この部屋って何かありましたよね?」
私が余りに唐突な質問をしてきたので、その住人は戸惑っていた。
「何かって?何か変でしたか?」
「ええ・・今見てみたら、腐臭のような匂いがしました。あと、壁に染みのようなものがありました。」
「えっ?まだそんな物残っているのか?掃除された筈なのに・・・?はっ!!」
隣の住人は、思わずこちらの誘導尋問に引っかかってしまい、口走ってしまった。そして慌てて口を抑えた。
「やっぱりそうですか・・・気にしないで下さい。分かりますから。ありがとうございました。」
私は頭を下げて挨拶をした。
「魔って下さい!それでまさか貴方は借りませんよね?その部屋は・・・」
「いえ・・・借りようと思います。」
「だって・・・それを知っていても?」
「ええ・・・その代わり不動産屋さんに値引きしてもらいますが・・・」
「マジですか?すげ〜・・・そこの人は橋本さんと言う方が住んでいました。」
「分かってます。首吊りですよね?」
「知っていたんですか?さっきの染みって、本当にあるんですか?」
「染みは綺麗に掃除されています。貴方の言うとおりでした。」
「・・・・・・あは・・あははは・・・やられた」
「今度お隣同士になると思いますが、よろしく」
私はそう言ってその場を去った。
そしてその足で不動産屋に向かった。
そして・・・家賃の約3分の1の家賃で借りられたのであった。
しかしその時の不動産屋の叔父さんの驚いた顔は今でも忘れられない。
自殺があった事を、知っていて借りた人は聞いた事がないと・・・また値切ってきた人もいなかったと
完
2007-04-18
ぶら下がりの骸(むくろ) 8
本来ならば、除去してしまうはずの性悪な霊。
しかし話によって理解させられる霊には、強引な力を使う必要はない。
この場合の霊は、そんな一例であった。
「昇れる道を作るから・・・」
私はそう言って、ぶら下がりの男の前に座り込んだ。
この時には、私は無警戒状態になるので危険だが、
大丈夫との判断であった。
「○○○○ ○○○○」
時間にするとほんの20から30秒たらず・・・
私的な表現をすれば・・・
頭上よりカーテンコールのような光が降りてきて真っ暗な部屋が、明るいイメージに変わる。
まぶしい位の光・・・
「さあ・・・橋本。この光が見えるか?」
「ああ・・・見える・・・見えるとも・・・」
橋本は興奮ぎみに答えた。
「最後にもう一言だけ言いたかった・・・聞いてくれ。」
「なんだ?」
「俺は・・・俺は前の住人を怖がらせようと思ってやった訳じゃないんだ・・・気がついて欲しかっただけなんだ・・・でも結果的に俺は霊だった事を忘れていた。すまない事をしたと思っている。」
「ほうか・・・それは重要な気持ちと発言だ。橋本・・・君は悪い奴では無いんだな・・・ただ気弱な青年なんだ。東京の水に合わなかった・・・君は被害者なのかも知れないな?」
「悪霊じゃないのは分かってくれたんだね?ありがとう」
「さあ・・・もう何も考えずに・・・昇りなさい。またチャンスを失ってしまうから・・・」
私は手のひらを、天井の光の根元にあたる部分に徐々に上げていった。
それに比例して橋本の姿も小さくなっていった。
「上がったかな?」
私はヨイショッという感じで立ち上がって、部屋中を見回した。
「完了!」
空気に漂っていた、腐臭はすっかり消えていた。
続く
2007-04-18
ぶら下がりの骸(むくろ) 7
「話を聞いてあげる・・・話なよ」
「おれはさ・・・駄目な奴なんだ。仕事もどじで物覚えが悪くって、営業成績も上がらず・・・彼女にも愛想をつかされて、他の男と二股掛けられた上にさようならされて・・・田舎には帰れないし・・・
実は首を吊ったのも、衝動的な勢いだったんだ。本当はそんな勇気も無いくせに・・・こんな時に限って勇気が出ちゃったんだな・・・いや?やけでやっちゃったんだ。後悔している・・・本当に後悔している。死にたくなんかなかったんだと思う。なのに・・・」
「死にたくなかったのに、死ぬってどんな感じか・・・と試すみたいな気持ちでやってみたら・・・」
私が後を復唱するように話すと
「そうなんだ・・・台から足がずれて・・・そして台が倒れて・・・もう遅かった。苦しかった・・・涙が物凄くあふれてきた。顔中血管だらけになった感じがした。血が吹く出してくるんじゃないかと思うくらいに・・・」
「そうか・・・じゃあ、今は本当に後悔しているんだな?死に切れずにここに居た訳だな?」
「そうだ・・・早く親父とお袋・・・それに兄ちゃんの顔を見たい。そして謝りたい。」
「大人しくあの世に上がれるか?」
「うん・・・上がりたい。もうこの世に未練は無い。こんな姿を親に見せたくないし・・・また泣かせてしまうから・・・このままでも良い。」
「あの世からでも親には謝れるさ・・・チャンスもあるはずだから・・・」
「うん・・・・おねがいできるの・・・か」
続く
2007-04-17
ぶら下がりの骸(むくろ) 6
「見たところ、お前は首吊りのようだな?」
「そうだ・・・俺は嫌になったんだ。何もかも世の中に!」
「お前の名前は?歳は?」
「何故そんな事をお前に教えなきゃいけない?教える必要なんかないだろう」
もっともなまともな返事が返ってきた。
「そうだな?言うとおりだな?じゃあ俺は、問答無用でお前を除去するけど、それでいいな?」
「ちょっと!ちょっと待て!!」
霊は慌てて言ってきた。
「なんだ?なにか用か?俺はお前とは関係ない人間だ・・・でもここに住みたいからお前を消す・・・ただそれだけだ。」
「お前消すって・・・そんな力があるのか?」
「あるかないか、試してみようか?」
「まて!待ってくれ・・・消すだけしか出来ないのか?あの・・・成仏させてくれるとか・・・は出来ないのか?」
「俺はまだ未熟だからな・・・出来無い事はないが」
「・・・・・・」しばらく沈黙が続いた。
「俺の名前は 橋本光喜・・・歳は26歳・・・だった・・・」
「26歳で自殺?何があったんだ?成仏させてあげるには、死者が素直になり、自己的にも成仏を願わなければ、出来ないんでね。教えてくれ・・・」
「俺は山形から出てきて8年・・・真面目に働いてきた・・・つもりだった。それが急なリストラが。
確かに俺は仕事が出来るタイプではなかったのかもしれない。さからリストラ自体は怨んでいなかった。」
「それでは何が橋本を自殺までに追い込んだんだ?」
「話しても良いのか?こんな事を・・・聞いてくれるのか?俺の話を?」
「ああ・・・菊から話しなさい。」
実際ここまでの時間は、10分を経過していないくらいでした。
続く
2007-04-16
ぶら下がりの骸(むくろ) 5
一瞬顔がこわばった男・・・しかしその体勢で居る事自体霊・・・それも性悪な地縛霊・・・
「生意気な奴だな・・・お前は何なんだ?ここに住もうと思っている奴なのか?」
霊は強気に言ってきた。
「ああ・・・借りようと思っている。でも、前の住人とは少し違うぞ?」
その言葉にも反応があった。
「前の住人は、お前の事を見れたか?存在を知っていたか?最初からこうやって話しかけてきたりしたか?」
私は少し高飛車な口調で脅かした。
「どうせお前は、音を立てて脅かすか、スッと姿を少し見せて脅かす程度の事をしたんだろう?」
ズバリだったようだ・・・その霊体は、その首をつった状態から、畳に降り立った。
「ほう?立てるんだな・・・そうやって移動しながら脅かしていたのか?この部屋の中だけなら、地縛霊のお前でも、動けるわけか・・・」
続く
2007-04-15
ぶら下がりの骸(むくろ) 4
部屋に上がった私は、その腐臭の元に向かった。
「この部屋か・・・?なるほど」
私はそこに奇妙な風景を見かけた。
入り口を入ってすぐの、入り口上の角に、小さいお札が張ってある事を見逃さなかった。
「なるほど・・・これが張ってあるという事は、まだ新しいな・・・この腐臭の元は・・・」
もう一度私は部屋の中を見渡した。
今度はさらに神経を集中させてみた。
すると・・・
「ひひひっ〜」
笑い声とも苦痛の声ともとれる声がしてきた。
そこには一人の男がいた。
つま先が畳から15cmほど浮き上がり、手はブランとさせ、首を傾げた・・・横に?・・・
少し普通の人間より首が長く、横に曲がっていた。
「お前がここの前の住人か?」
私はその男に話しかけた。
「違う・・・俺は・・・俺は前の前の住人だ!」
「って事は、私がここに来る前に、もう一人誰かが住んでいたのか?」
「ああ・・・たったの3週間くらいだがな・・・ひっひっひっ・・・逃げやがったぜ!」
「おい!お前は脅かしたのか?」
「脅かしたわけじゃない・・・死に切れないから、俺の話し相手になってもらおうと思って、話しかけただけだ・・・」
「性質(たち)が悪いぜ?お前!死に切れない?死にたいのか?消えたいのか?」
初めて私の問いに、その中にぶら下がる男の顔が変わった。
続く
2007-04-15
ぶら下がりの骸(むくろ) 3
ドアをそっと開ける・・・
電気が通っていないので、真っ暗な状況でも仕方ない。
ここはキッチッンをはさんで2間の作りであった。
気のせいか、ゾクゾクする空気・・・寒い。
ひんやりと言う感覚の、上のレベルを想像してもらえれば良いだろう。
目を凝らして、気を集中する。
右の部屋・・・フローリングされていて、綺麗な部屋だ。
こちらは問題ない・・・・
では?
もう一つの部屋は?
そちらは畳張りだ・・・薄暗くて見えない・・・
しかし 私が嗅いだ、先ほどの腐臭の根源がそこにあるようだ。
さすがに靴を脱がなくてはいけないのが、嫌だと思いながら・・・・
私は部屋に上がった。
続く
2007-04-13
ぶら下がりの骸(むくろ) 2
何か戸惑う不動産屋の主人。
「早めに決めたいので、見せていただけませんか?」
私の押しに根負けしたのか、不動産屋の主人は
「私は今からは行けませんから、カギを預けますから、見てきて下さい。」
「えっ?一人でですか?カギを預かっちゃっても良いんですか?」
あまりにも簡単な申し出に、私も一瞬止まってしまいました。
それほどまでにして、この時間に行きたく無いという理由・・・
おそらくズバリなのだろう。
「分かりました、これからすぐに行って見てきますので・・・カギもすぐにお返ししますから。」
そう言って私はすぐその物件に向かった。
そこから歩いて2・3分の距離でした。
時間は8時半ごろであった。
薄暗いポストの横のホール
階段を上がってすぐの部屋だった。
2Fにはもう一部屋あった。
ガチャガチャ・・・
カギを開ける・・・この瞬間からだった
重苦しい空気と共に、何故か腐臭・・・
まさか遺体がある訳では無いだろうが、この腐臭は、まだこの部屋で人が死んでから、成仏しきれていない証だろう。
霊として存在している・・・地縛霊として・・・
これでは昼間でも嫌な感じとして、普通の人間でも感じるだろう。
ましてその原因を知っている人間にとって、この時間にここに来たいと思う人間はいないだろう。
しかし・・・このような部屋が、すぐに空室として貸し出されている事も事実であった。
続く
2007-04-12
ぶら下がりの骸(むくろ) 1
このお話は、ある時機私が、住まいを探すときに、自殺のあった部屋ばかりを探して借りていた頃がありまして、もちろん家賃交渉が目的でしたが・・・
そんな中で、少し怖かったお話をいたします。
1988年頃、私は当時まだ28歳と若く、まだお金も無い頃のお話です。
私は当時 早急に住む所を探さなければいけない状況になってしまい、部屋探しをしていました。
そうは言っても、はじめに掛かる金額が大きくて、出来るだけ安い家賃の所をと探していました。
そんなある日、私は某駅から5分以内のマンションの前を通りかかりました。
何か異様な雰囲気を突然頭上に感じて見上げました。
そこはタイル張りの少し古めですが、しっかりした作りのマンションが建っていました。
私が異様な気を感じたのは、そこのちょうど二階の部屋でした。
私は思わず歩く事を止めて、見上げていました。
「これは・・・何かあった部屋か・・・」
私は近くの不動産屋に行って、この物件の空きを聞いてみた。
「すみません・・・あの○○ビルは空いてませんか?」
「えっ?あ・空きですか?・・・ありますよ。ちょうど2階が・・・見てみますか?」
不動産屋のおじさんが、ちょっとぎこちない受け答えで答えてきた。
やはり・・・そうか。
「そうですか。見てみたいですね。今から」
私がそう言うとおじさんは慌てて
「今からですか?もう夜ですし、あそこは今 電気が通っていないので、真っ暗なんですよ。見えませんよ。明日にしませんか?」
おじさんは何とか明るい時にと伸ばそうとして来た。
続く
2007-04-11
実話 悲しきシェフの思い 27
「徳丸さん・・・目を閉じて下さい。そして心から願って下さい。自分の魂が、これ以上迷わずに浄化される事を・・・・そして家族が幸せに鳴る事を」
最後の私の言葉に、徳丸さんはニヤッと笑いながら・・・
「先生・・・キザなセリフを、よくそんなに簡単に言えるな?でも・・・今はそんなキザなセリフが・・・・凄く嬉しい・・・さあ 先生行きましょう!」
「うなずいて、私は奥さんの方を見て、ご主人が上られます」と伝えた。
「はい! 貴方・・・本当にご苦労様。ゆっくり休んでくださいね。最後まで私たちを思ってくれた気持ち・・・凄く嬉しかったよ・・・さようならって言わないよ。またね・・・貴方。」
そう言って奥さんは手を合わせて、深くお辞儀をした。
隣にいるご主人の友人の宮下さんも、泣きながら手を合わせお辞儀をした。
「俺もお前の家族を守っていくからさ・・・心配するな!徳丸!!」
そう叫んだ!
それからどれほどの時間が経過したのだろう・・・
ほんの数分?それとも十数分?
しかし そんな時間の経過も忘れるほど、それぞれの思いの深さであった。
「ご主人は無事に上られましたよ・・・」
私がそう言った瞬間に、棚の上に飾ってあったご主人も写った、家族の写真がタイミングよく、パタッと倒れたのであった。
さすがにこのタイミングには、私ですらぎょっとなってしまったが、奥さんの一言で、その場の空気は救われた。
「本当に成仏したんだわ・・・あの人らしい。最後の気使いです。」
「そうですね・・・律儀に挨拶をしていったようですね。」
「先生・・・本当にありがとうございました。これでみんなが救われました。本当にありがとうございました・・・・」
「うん・・・良かった。」
こうして悲しきシェフの怨念・執念は。間違った形ではなく、人間の心を取り戻して、成仏する事ができたのだった。
この世に残す未練は・・・計り知れない物があるものです。
それを忘れてはいけないのかも知れない・・・
完
2007-04-11
実話 悲しきシェフの思い 26
成仏・・・それは人間が肉体を失い、魂だけの存在になった時、その魂が仏様になる為に天上界に上がる事を言います。
徳丸シェフは、成仏の道を今 爽やかな気持ちで受け入れる気になってくれたのだった。
「井口さん・・・私はさっきまでは、自分の事だけしか考えられなかった。憎い悔しい恨めしい・・・
何で自分だけこんな形で死を迎えなきゃいけないんだと・・・しかし 私がここでこうしている間にも、沢山の死者の魂が、私の横をすり抜けて行くんですよ・・・私の顔を見ながら(あんた何してんだよ、こんな所)って・・・そうか・・・俺はこの世に残っていちゃいけない存在なんだと・・・分かっていた。でも、妻に一言、二人の為に残した物を、せめて伝えたかった、そして喜んでもらう顔を、直接見たかった。それで・・・」
「分かっていますよ・・・そんな事は気にしなくて良い。貴方じゃなくともみんなそう思うものです。」
「井口さんでもそう思いますか?」
「はい!私でも同じように思うでしょう。いや・・・私が貴方のような存在になったら、なまじ力がある為に、手が付けられないかもしれませんね?」
「そうかも知れませんね・・・怖い怖い・・・」
そう言って徳丸シェフは笑った。
初めて見せる見せるすがすがしい笑い顔だった。
「奥さん・・・ご主人が決断されました。送ってあげて良いですか?」
奥さんは小さくうなずいて
「貴方・・・子供は私がちゃんと育てます。だから心配しないで・・・旅行ありがとう。」
「では・・・これから徳丸さんをお送りします。」
続く
2007-04-10
実話 悲しきシェフの思い 25
奥さんには、ご主人の姿は見えず、声も聞こえずの状態にもかかわらず、まるで会話をしているように滑らかな感情伝達が行われていた。
「幸せだったと言ってくれるのか?こんな俺でも、こんな中途半端な死に方をした俺を許してくれるのか?」
私は同時通訳のようにその言葉を伝えた。
この場合には、出来るだけ間を開けずに伝える事が大切である。
まるで会話をしているようなタイミングで伝えなければ、話が途切れてしまうのである。
「当たり前じゃない!貴方は自分で死を選んだんでもなければ、私たちを残して家出をしたりした訳でもないのよ?望まない死に迎えられてしまっただけじゃない・・・貴方は今も私たちを思って、ここにこうしていてくれたじゃない!これで十分よ。」
「これで・・・これで許してもらえるのか?本当に?だらしの無い男だったのに・・・お前たちをもっと楽しませてあげたかった。守ってあげたかった。」
「今度は、貴方は自分の事を考えて良いのよ。もうゆっくり休んで下さい。ねっ!」
奥さんは思い切り無理した微笑を返した。
「うん・・・そうするよ。旅行だけは行ってくれよな?それだけが俺が最後に望む遺言だと思って・・・」
「はい!必ず・・・ハワイに行きますよ。」
「まさか・・・今頃になって遺言を残せるとは思わなかった・・・ありがとう。井口さん」
シェフは、深くお辞儀をして、礼の言葉を述べてきた。
「いえいえ・・・お役に立てて良かったです。」
私もにこやかに伝えた。
「じゃあ・・・井口さん。頼みついでに・・・私の行く道を示してくれませんか?」
成仏の道を歩む気に なってくれたらしい
続く
2007-04-08
実話 悲しきシェフの思い 24
「奥さん・・・ご主人も聞いています。ご主人に聞かせるつもりでお話下さい。」
私は奥さんに、ご主人が立っている位置を示しながらそう言った。
「貴方・・・なんでこんな状況になったまで同じことを言うの?ワンパターンだね。不器用で古臭い考え方で・・・頑固で・・・わからずやで・・・自分勝手で・・・それから・・・えーっと・・・もう無いね。そんな貴方だから好きだったの!いつもそう言ってたよね?」
「井口さん・・・でしたよね?伝えて下さい。お前は本当に優しい女だったよって・・・苦労掛けてしまう事が気がかりで死に切れなかった・・・と」
「分かりました。」
そう言い私は奥さんにそう伝えた。
「苦労なんか・・・貴方だって死にたくって死んだわけじゃないんだし、もしかしたら逆だってあったかも知れないんだし・・・苦労なんか・・・気にしないでよ・・・井口さんのお陰で、貴方の気持ちが十分 分かったから・・・幸せよ。本当に 笑」
奥さんから、笑みがはじめて漏れた。
続く
2007-04-07
実話 悲しきシェフの思い 23
「妻には幸せになってもらいたいのです。私はもう死んでしまい、妻の助けにもなれないし、小さい子供を育てながら生きていく事は、物凄く大変な事は知っています。だから・・・もし他の頼れる男が出てきても、俺を気にしなくていい・・・と伝えたかったんです。」
「それを奥さんに伝えても良いんですか?」
奥さんには私の声だけしか聞こえない。
「・・・・・・本当は嫌だ!でも・・・し・仕方ないじゃないか・・・クッ!」
「徳丸さん・・・分かりました。そうお伝えします。ただし、奥様の意思に任せましょう。その後のことは」
私は奥さんの方を見ずに、今ご主人が伝えて欲しいといった事を話した。
「奥さんの選択だし、今 その答えを出す必要はありませんから・・・」
とだけを付け足した。
すると・・・
「相変わらず馬鹿ね。フフッ・・・生前もよく言っていました。こんな俺みたいに家庭を顧みない男より、よっぽどお前を幸せにしてくれる男はいるはずだから・・・もし出来たら言えよな・・・とか良く言ってたんですよ。馬鹿なんだから。」
「確かに・・・俺の口癖か・・・でも今度ばかりは本当に・・・?」
私はご主人を手で制した。
「奥さんの答えに、貴方は従う義務があります。」
私はもう少し奥さんの言葉を聞かせたかったのである。
続く
2007-04-06
今までの私の書いた物を見るには
最近 ラップ音や本当に合った新潟編や今書いています、悲しきシェフの話をすべて見るにはと、問い合わせがありましたので、お知らせします。
カテゴリーの中の、霊関係の話 という所をクリックしてもらえれば、全て見れます。
まあ 他のカテゴリーもついでに見て下さい。
初期の頃の物が載っていますので・・・笑
よろしく
2007-04-06
実話 悲しきシェフの思い 22
シェフに向かう私の顔は、半分閉じたような眼差しであった。
「さあ・・・徳丸シェフ。お聞きになりましたね?全ての話を。」
「ああ・・・聞けた・・・話せた・・・伝えられた・・・あんたのお陰だ・・・さっきは済まなかった。」
一番初めに、私の胸を強く突いて、危うく転落死しそうになった行為の事をいっているのだ。
マンションやビルからの自殺以外の転落死は、もしかすると、今回のように、霊が絡んでいる事も、稀にあるのかもしれない。
「大丈夫です。気にしていません。」
「怖かったんだ・・・伝えられぬままに、俺を消そうとしているような、強い力を感じて・・・死ねないという言い方は編かもしれないが、魂までも・・・と思ったら、無意識に手が出てしまったんだ。許して欲しい。」
「・・・・・」
「もう思い残す事は無くなった。そのお金で、いい思い出を作ってきて欲しい。そして・・・妻には幸せになって欲しい・・・と伝えて下さい。」
続く
2007-04-06
実話 悲しきシェフの思い 21
思わず釣られてしまう悲しき涙・・・
グッとこらえて、私は向き直った。
「奥さん・・・ご主人の写真を一緒に持って、お子さんとハワイに行って来たらどうですか?」
「今年の夏休み・・・あたりに行きます。
「うん・・・そうだもう宮下さんを部屋に呼び戻していいですよね?」
先ほど部屋から出てもらった宮下さんの事を思い出した。
部屋に入ってきた宮下さんに、事情を一通り話し終えた。
「そうでしたか・・・徳丸さんから聞いた事がありました。俺・・・海外って行った事無いんだって・・・本当はフランスとか行って、修行をかねて、三ツ星を食べ歩いてみたいんだけどな・・・でも、今は女房と子供に、思いっきり楽しんでもらえるような海外旅行に行きたくなってな・・・って」
「それがハワイだと聞いた事はありましたか?」
「ありますよ。一緒に帰る時に、よく旅行センターのパンフを手にとっていましたからね」
「やっぱり・・・奥さん、決まりですね。」
私はさっぱりとした笑みを浮かべて言い切った。
「・・・・」
奥さんも無言でうなずいた。
「これで話はつきましたね。さあ、これからは私とご主人の会話です。お仕事お仕事!」
少しお茶らけながら、二人に背を向けた。
背を向ける途中に私の顔は、それようの顔に変わっていた。
続く
2007-04-05
悲しきシェフ 20の訂正
昨年亡くなったご主人が残したメモに、今年はハワイに行くぞとありましたが、来年は行くぞ の間違いでした。お許し下さい。
2007-04-05
実話 悲しきシェフの思い 20
金庫の中には一体何が・・・
「井口先生・・・こんな物が入っています。全部出して見ますね。」
そういって奥さんが取り出した物は・・・
「通帳ですね?コレは想像できましたが・・・奥さん見ていいですか?」
「はい!」
「金額的には・・・60万円。へそくりですか?」
「60万円・・・その額って・・・私が行きたいといっていたハワイの旅行金額では?」
「ハワイですか?そういう話は出ていたんですか?」
「はい・・・ずっと以前ですが・・・ただその時には、凄く掛かるねと言って、諦めたんです。
「それで・・・ご主人は黙って貯めていたんですかね?」
「先生・・・このパンフレットは・・・ハワイのです!」
そういった時、奥さんの手元から、パラパラッと落ちた物があった。
今年の夏休みに行く予定・・・驚くぞ!と書かれた行動予定や観光予定が、びっしり書き込まれていた。
「昨年の冬ですよね、亡くなったのは・・・」
「はい・・・そです。その時には主人はハワイ旅行の事を考えていたのですね?」
「そういう事になりますね。金額の事より、奥さんに伝えたかったのは、むしろこの驚かせられなくなった無念の方だったのかも知れませんね。」
私はそう言って、ご主人の方をみた。
ご主人は泣いていた・・・ボロボロと泣きながら、大きく何度もうなずいていた。
「あ・・・あなた。」
再び奥さんも泣き始めた。
こんな涙にあふれた霊視は珍しいのです。
悲しみが一杯の中で、私の表情は、こんな時どうしたらいいのだろうかと・・・頬を何かが伝わりながらも、考えてしまったのです。
続く
2007-04-03
実話 悲しきシェフの思い 19
「先生!カチッって言いました。ど・どうしたらいいんでしょう?」
徳丸さんの奥さんは、声が裏返ってしまうくらいに、動揺していた。
「じゃあ、今度はこのカギをそのかぎ穴に差し込んでください。もちろんそっと廻してください。」
「はい・・・やってみます」
今度は重い音で、がチャッと聞こえた。
「先生・・・開きました。何が入っているのか、怖いです。」
そういって逃げようとする。
「大丈夫ですよ・・・ご主人の入れていた物ですから、危害が加わるわけありませんよ」
トラやヘビが出てくるわけではないだろうと思いながらも、気持ちが分からない訳ではないな・・・と思った。
「さあ、奥さん・・・金庫の中を見て下さい。そうすればご主人が何を伝えたかったかが、はっきりしますから・・・」
「ええ・・・分かりました。」
ゴクッと喉がなるくらいの唾を飲み込んで、奥さんは金庫の前に向かった。
続く
2007-04-02
実話 悲しきシェフの思い 18
「どうですか?奥さん・・・金庫のような物はありましたか?」
「この中は主人の趣味の物ばかりなので、もともと私が触れなかった場所なんです。本とかアルバムとかが沢山ありますから・・・少し待って下さい」
かなりな重労働のようであった。
しばらくすると
「井口先生!こ・これは・・・・」と後ろに尻餅をついて、奥さんは言った。
私が覗いてみると、巧妙にカモフラージュされた形で、縦20cm×横30cmほどの小さな金庫のような物が見えた。
これは玩具ではなく、本格的な金庫であった。
「奥さん、ここから一旦出してみましょう。重いですから私が引っ張りだします。」
かなりの重さがあるが、ご主人もここにこれを収めたのだから、出来ない事はない。
ただ・・・これを家族の知らない所でやっていた作業と考えると、多少寒気がする。
押入れから金庫を引っ張り出し終えた私は、改めて先ほどの紙片を奥さんに渡した。
「このナンバーをまわしてみて下さい」
簡単にダイヤルの回し方を教えて、私は後ろへ下がった。
続く
2007-04-02
実話 悲しきシェフの思い 17
箱の中に入っていた紙片の番号は・・・
「それはそこの押入れの中の下に入っている、本物の金庫のナンバーだ・・・」
「本物の金庫?よくある自宅用などの金庫の事・・・ですか?」
「そうだ・・・でもそんなに大きくないけど」
「奥さん押入れの中を見て下さい?」
話が聞こえていない奥さんは、きょとんとしていたが、私がなにかしら聞いたのだと理解して、押入れの襖を開けた。
「下の段だ・・・」そう指を刺しながら徳丸さんは言った。
「奥さん下の段だと言っています。そこの本物の金庫があるそうです。探してみて下さい。荷物などで隠してあるかもしれませんが・・・」
奥さんは必死に前面に入れてある荷物を全て出し始めた。
続く
2007-04-02
実話 悲しきシェフの思い 15
ガチャ・・・
その中に入っていた物は、決して大きくも無い紙片であった。
その紙を奥さんが開くと、そこには文字が書かれていた。
○○○○
「この番号は何の番号ですか?」
奥さんは私に、ご主人に聞いてくれという意味で、聞いて来た。
「徳丸さん・・・今の奥さんのご質問は聞こえましたよね?この番号は何の番号ですか?」
「・・・・・・」
「?・・・あっ!そうですか・・・うかつでした」
私はそう言うと、友人の宮下さんに向かって言いました。
「宮下さん・・・少しこのお家に関わる事なので、少しだけ外に出て行ってもらえますか?」
宮下さんもこの言葉に
「は・はい!分かりました。」と言って、外に出て行ってくれました。
あっけに取られている奥さんに、私はご主人からのご希望でしたのでと答えた。
「徳丸さん・・・いやシェフ。宮下さんは出て行きました。これでお話できますよね?」
「シェフの霊は、穏やかな顔で笑い、私に深々とお辞儀をしてきた。
「さあ・・・教えて下さい。」
続く
2007-04-01
井口清満の個人的なお知らせ
この度、27年間勤めてきました、サラリーマン(表仕事)を、3月末日を持ちまして辞めました。
そろそろ体的にも年齢的にも、掛け持ちの厳しさが出てきたのと、沢山の対面希望の皆様に、こちらの都合で、なかなかご希望に添えなくなってきましたので・・・・
出版に対する本格的な作業もありますし、裏を表に変えることにしました。
対面鑑定ご希望の皆様・・・改めて開業します。笑
2007-04-01
実話 悲しきシェフの思い 14
箱から見つかった小さな鍵・・・
目の前にある小さなおもちゃのような金庫・・・
「奥さん、その鍵を差し込んでみて下さい。貴方にあけてもらいたいみたいですよ?」
「・・・・」私の言葉にハッとした徳丸さん。
「うん。徳丸さんジャストミートのようです」
私は少し笑いながら言った。
私の笑った顔と、言葉の意味に気がついたようであった。
「分かりました・・・貴方、開けますよ」
カチャカチャ!カチン・・・
「さあ・・・開けてみましょう?奥さん」
キーッ・・・軽い金属音を立てながら、金庫は開いた。
その中に、シェフの残した物、家族に残した物はいったいどういう形の物だったのだろうか?
シェフの希望が、今 家族に伝えられる・・・
続く