2007-05-31
お墓の復讐 2
土曜日になった。
遠藤(仮名)さんは時間通りに迎えに来てくれた。
「今日はありがとうございます。よろしくお願いします。あの・・・感じたままを素直にすべておっしゃってください。お願いします。」
「分かりました。そうしますね」
遠藤さんの物言いは、よほど心当たりが有るような口ぶりであった。
程なく遠藤の表札が掛かる一軒家が見えた。
そいて玄関前の駐車場に車を入れた。
先に下りた私は、遠藤さんの家を一望した。
「ふーん・・・正面は何も感じないか・・・」「さあ・・・こちらです。」 そう言って遠藤さんは玄関を開けた。
「このお線香の匂いは?」
「はい・・・2Fに上がりますとよく分かりますので・・・・」
2Fに案内された私は、そのお線香の香りの理由を思い知らされた。
「凄い眺めですね〜・・・絶景すぎて・・・」
2Fの窓から飛び込んできたのは、あたり一面の墓地だったのです。
「このお線香の香りは・・・本物だったんだね」
「先生・・・お話の前に、この窓から下もごらんになって下さい。」
遠藤さんに促されるままに、窓を開けて下を覗きこんだ。
「この家の塀・・・墓地との境になっているだけなんだ?凄いな・・・これは」
「昔は測量も曖昧で・・・・その上、このお寺の住職がルーズな人で、土地の切り売りが頻繁に行われていたようなんです。だから・・・この家との境界線も・・・・」
「お寺の土地の切り売り?お墓の土地もか?ひどすぎるな・・・・」
「それでは・・・先生こちらにお座り下さい。」
続く
2007-05-31
お墓の復讐 1
この話は東京の足立区に住む方の依頼で動いた時のお話です。
私に1本の電話が掛かってきた。
「井口先生ですか?」
依然私が見ていた方からのご紹介でお電話させていただきましたとの、ご丁寧な言葉使いだった。
「ああ・・・○○さんのご紹介ですか?それで、貴方のお名前は?」
「失礼いたしました、私の名前は遠藤 由里と申します。」
「遠藤さんですね?それで相談ごととは?」
この手のオンライン依頼は、占いサイトとは別次元で以前から私が、信用できる人だけから口コミで広げてきたネットワークなのです。
「実は・・・私の家の本当に隣・・・いえ、塀からの仕切り分だけで、隣は大きめの墓地なんです」
「ほう・・・それは少しヘビーですね。」
「はい・・・それで・・・少し変なんです。家の中が・・・それと・・・私の弟が10年前に死んだのですが、それと何か関係あるのかと・・・怖くなりまして。」
「それではご依頼内容は、訪問ですね?」
「はい!お願いできますか?」
「こちらも仕事ですから・・・今度の土曜日に・・・いかがでしょうか?」
「はい!分かりました。あの・・・先生のご住所はお近いので、お迎えに上がりたいのですが?駄目でしょうか?」
住所を聞いたら、本当に近かったので甘える事にした。
「それでは、土曜日の13時に・・・」
そう言って電話は切れた。
何かしらヘビーな内容に発展する予感を感じていた。
続く
2007-05-31
ちょっと小休止
今回のこの部屋に誰かいるは、思いのほか長編になってしまったと思います。
さて・・・次は・・・・皆さんはどういうタイプのお話を聞きたいですか?
それにぴったり適応するお話はなかなかないと思いますが、近いお話なら乗せられると思いますので、
ご希望をお寄せ下さい。
2007-05-30
この部屋に誰かいる! 50(最終回)
「さて・・・見えない目黒さん(旧姓・こう呼ばせてもらっています)に三上さんを感じさせる・・・そして見えるようにしてみる・・・結構大変だな」
井口は腕組みをしながら考えた。
「井口さん・・・俺は満足だよ・・・こうしてお嬢さんが無事に戦争を切り抜けて、生きていてくれた事が確認できた上に、こうやって会わせてもらっただけで十分だよ」
三上が申し訳なさそうに言ってきた。
「あははは・・・これは私の決めた事だから、三上さんは遠慮する事はない!・・・大丈夫さ」
井口は三上のいると言う位置に向かって、笑いながらそう言った。
隣にいた目黒貴子さんも、井口が話しかける方を見て、にっこり微笑んだ。
「三上さん・・・私も会いたい・・・です。」
「霊と人間の・・・ご対面を、意識的に行う方法・・・試した事はないが、この方法なら・・・」
井口はそう言うと、壁際の鏡を取ってきた。
テーブルに置けるようなサイズのスタンドタイプの鏡だ。
「宮部さん・・・この鏡を借りるよ。」
「はい!何でも使って下さい。」
「ありがとう・・・それじゃ、目黒さん・・・この鏡に貴方の右手をべったり付けてみて下さい。」
「べったり・・・ですか?」
「そう・・・手そのものを写すようなつもりで・・・」
「はい・・・こうかしら。」
目黒貴子は、そう言って右手を強めにくっつけた。
「そう・・・それでは今度はこの鏡のこの目黒さんの手形に・・・三上さん、貴方の手を重ねて下さい。」
「分かった・・・こうか?」
「そう・・・それでいいです。」
井口は見た目は目黒貴子の手形のみ写った鏡を自分の目の前に持ってきて、フローリングの床に座った。」
「恭空無光 真奇力存・・・・」
呪文のような物を唱え始めた・・・
「さあ・・・見ていてください。」そう言って井口は、目黒さんと三上さんのちょうど真ん中になる場所に、その鏡を置いた。
二人とも目を細めて・・・この鏡こしに少し上を見て下さい。
そう言われて、いつしか4人の若者も、自然と目を細めていたのは、多少笑えた。
「井口さん・・・なんか・・・ボーっと見えます・・・何かしら。私は今までこういう霊なんかは信じていなかったタイプでしたのに・・・あっ!」
目黒さんは最後の方は叫んでいた。
「見える!あの時のままの・・・あの人に・・・」
「お嬢さん・・・良くご無事で・・・幸せになられたんですね?良かった・・・・」
「三上さん・・・あなたはこの場所を、ずっと見張り続けてくれていたんですってね?ありがとう・・・ごめんなさい・・・」
「何にも知らないで、ボーっとここにいたのは自分です。貴方は謝る必要はありませんよ。でも・・・これで安心して消える事が出来ます。俺の終戦が今日やっと終わる・・・・」
「三上さん・・・私は幸せよ・・・孫も出来て・・・今はおばあさんだけど・・・私があの世に行ったら、先に行ってる私の父と二人で、私を出迎えてね?・・・クッ・・・・」
「お嬢さん・・・お父さんの事は任せて下さい!・・・お嬢さん・・・あの時の飯は・・・本当に旨かったです・・・ありがとう。」
「何も心配しないでくださいね?本当にありがとう」
「はい・・・それから井口さん・・・みんな・・・ありがとう・・・あんた事をした俺なのに、こんなに良くしてもらって・・・今が一番幸せだ・・・本当にありがとう。」
「いえ・・・貴方のお陰で、この4人の若者も、成長できたのですから・・・みんな良かったんですよ。」
「そうそう!何か心が・・・・こう、キューッと暖かい感じ・・・これ・・嬉しいかも・・・」
裕子が少しおどけて言った。
「さあ・・・私がこれを出来るのにも時間の制限があります。これ以上は無理ですので・・・三上さん、今 あの世の扉が開かれます。一度のチャンスですので、今度は逃さずに・・・」
「はい・・・それでは・・・お嬢さん・・・みんな・・・ありがとう・・・そしてさようなら・・」
沿い言い残して三上の姿が消えた。
「・・・・・・・・・・」
沈黙する全員の、気持ちを溶かした一言がある。
「これで・・・この部屋・・・超格安の物件になったんじゃない!?ラッキー・・・えへへ」
「そうだな・・・良いことをしたから、三上さんが与えてくれたんだよ・・・結果的に」
しばらくたたずむ、みんなの真ん中で、小さな鏡が輝いていた・・・・・
完
2007-05-29
この部屋に誰かいる! 49
それから3日目が来た。
「坂下です!やった!!やりましたよ。井口先生」
井口の元に坂下君から電話が掛かってきた。
電話の向こうでの顔が浮かぶような、そんな電話であった。
「井口先生の助言通りに追いかけていったら・・・見つかりました。」
「そうか・・・今からすぐに行くから!何処にいる?」
「宮部さんの家に集まっています。それからここに今 目黒 貴子さんにも来てもらっています。」
「へぇ〜・・・本当にか?凄いじゃないか!直ぐに行くから待っててくれ・・・」
井口は坂下たちの下へ大急ぎで向かった。
追跡のあらましをお伝えしておきましょう。
(区役所に行ってここに住んでいた目黒家を調べたそうだ。大きいお屋敷であったお陰で、意外に調べられたそうだ。
お屋敷はほとんど焼けてしまったらしいが、お父さんと貴子さんは生き延びたそうである。お父さんはその時のやけどが原因で、2年後に亡くなってしまったそうだが、貴子さんは千葉のお医者さんと結婚されて引っ越されたようであった。それを調べ上げた事自体凄い事であったと思うし、なおかつ本人をそこに連れて来れた事にも、彼らの情熱を感じた。
本来 私の仕事だと思っていた領域だからである)</b>
井口はタクシーで宮部典子に家にたどり着いた。
「ピンポーン}
「はーい!井口先生のご到着よ!みんな〜」
明るい宮部典子の声であった。
そこには私の知っている4人と、三上さん・・・それに三上さんの記憶の中で見かけた女性・・・面影を残しているようだ。
「初めまして・・・この度はこのようなばかげた話に対して、ご足労願いまして・・・」
井口は目黒貴子に、丁寧に挨拶をした。
みんなも座りなおして正座をした</i>。 「いえ・・・この若い人たちの真剣さと熱意を見て、嘘ではないと感じました・・・それに・・・私もあの時の男の人に・・・一言お詫びをしたかったから・・・」
「うん・・・そうですね。これでお互いに一生解決しない問題から開放されるかもしれませんから。信じていただき私からもお礼を言います。おっ!遅れましたが私の名前は・・・」
「井口清満さんでしょ!もう何度この人たちから聞いた事か・・・笑。なんでも井口さんが私の嫁いだ先は医者か病院だから、それを調べろ!とおっしゃったそうで・・・それでなかったら見つからなかったと・・・そう何度も興奮気味に・・・大したものですわ。」
「恐れ入ります・・・」
井口はそう言って、4人の満足そうな顔を見た。
4人はそれぞれ大きくうなずいた。
「良くやったぞ!みんな・・・あとは私の出番だからな・・・・」
井口の一言に、宮部典子は泣き始めた・・・
「こんなに真剣に、人の為にやった事なかったから・・・嬉しくて嬉しくて・・・自分の事以上に・・・幸せ・・・グスッ・・・」
「良い敬虔だな・・・これも。これからその良いことの仕上げだから、良く聞いていて・・・良く見ていて・・・」
そう言って井口はこれから あの三上さんを目黒貴子さんに、感じられるようにしてみるといった。
続く
次回 最終回
2007-05-29
この部屋に誰かいる! 48
「私の言う通りにしなさい!」
井口の強い口調に思わず霊である三上は「はい!」と答えてしまった。
「まず・・・三上さんはここから出てはいけません。その理由は、貴方はここで死にました。貴方の姿は変わった上に、すでに死んだ人ですから、他の場所でそのお嬢さんに会っても、貴方だとは相手も分からないからです。」
「・・・・・・・・・・俺のことがお嬢さんに分かる方法があるのか?」
「そう・・・せっかくお嬢さんを探しても、貴方から一目見たと言うだけでは・・・それでも満足かもしれませんが、お嬢さんを探す時の方便として、貴方の事を話題に出さなければなかなかここには呼べません。だから・・・」
「そんな・・・俺は・・・俺は死んでいるのだから、気持ち悪がれて来てはくれないのじゃないか?その方が怖いし 悲しい・・・」
「相手の歳も何歳だと思っている?今更若い子じゃあるまいし、むやみに怖がりはしないだろう・・・おそらく・・・」
井口の最後のフレーズは、少し自信が無い感じだった。
「それにまだ見つかると限ったわけでもあるまいし・・・とにかく三上さんはここにいなさい。3日以内に探しましょう。」
「そんなに早く?見つかるのか?」
「この4人が頑張ってくれます。」
「はい!」「おう!」「やるよ!私」「やってみましょう!3日仕事を休みますので。」
4人がそれぞれ答えた。
「宮部典子さんだってけ?三上さんを3日だけこの部屋に居候させてもらえないか?」
「良いですよ!ただし・・・お風呂やおトイレは覗いちゃダメですからね。あっ!着替えも!!」
宮部典子が笑いながらそう言った。
「おうおう!どうせならみんなでここに泊まって探さないか?一致団結って意味でさ!あれ?だめ?」
「加藤・・・ここは宮部さんの家だぞ?」
「私もそう思ってた・・・泊まって?ここの区の役所に行く事が必要だし・・・ねっ!」
「じゃ〜・・・私のも除いちゃダメだよ!」
裕子も宮部の真似をして言った。
続く
2007-05-28
この部屋に誰かいる! 47
同時通訳方式で行うとの井口の宣言・・・
それだけ緊迫した状況になってきたと言う事だろうと、4人は納得してうなずいた。
「ここを出て行くとはどういう意味ですか?」
「俺がここにいたばっかりに、前の住人の女の子も、そこの女の子も、物凄く怖い思いをさせてしまった・・・俺はなにをしていたんだ・・・今更こんな事を言っても信用してもらえないかもしれないけど・・・・オカシクナッテイタ・・・霊に・・・悪霊になりきっていた・・・人間を憎む・・・生者を憎む怨霊だ・・・まるで。」
三上は一気に話した。今までの自分を見つめて、パニックになっているようだ。
「それで?ここを出て何処え行く?まさか浮遊霊にでもなって彷徨うか?」
「彷徨ったら・・・彷徨ったらお嬢さんと会えるかな?」
「会えるわけがない・・・会えたとしても、お嬢さんをも怖がらせて終わりだろう・・・それでも良いのか?」
「い・・・いやだ・・・そんな終わり方はいやだ」
「だったら私の言う通りにしなさい・・・いいか?」
井口が強い口調で叱った。
「どうすれば良いのだ?俺は・・・」
続く
2007-05-27
この部屋に誰かいる! 46
静寂の時間・・・・
その中を、何ともいえない時間が過ぎていく・・・
「うん・・・視えたよ・・・表札だ。木で出来た引き戸式の入り口がある・・・大き目の引き戸だな・・・名前は・・・目黒 博康・・・めぐろ ひろやす・・・と読める。家族の名前ものっているな・・・芳江(よしえ)・貴子(たかこ)と視える・・・恐らく芳江さんはお母さんで、貴子さんが娘さんの名前だろう。一人娘という事だな・・・」
「目黒・・博康さん・・・貴子さん・・・か」
三上はつぶやいた・・・
「三上さん!俺達で調べてみるよ。ここに住んでいただろう目黒貴子さんの生存や行方を・・・」
坂下が浴室を見つめそう言った。
不思議な物だと誰もが思った。
4人には見えないはずなのに、何故か見えるような感じがするし、何処に向かって話せば良いのか・・・初めの頃より確実に分かるような気がするという事を・・・
「そうね・・・調べられる気がするわ。みんなで手分けして探しますから・・・三上さん、安心して下さい。」
宮部典子が約束をした。
「みなさん・・・俺・・・ここを出ます。」
突然の三上の申し出に、井口は驚いた・・・
「出て・・・行くという事か?」
井口が聞いた。
井口のその言葉に、今度は4人が驚いた。
「ここからは面倒だから、会話は同時通訳をするから、みんな聞き逃さずに。」
井口は強く言った。
続く
2007-05-27
この部屋に誰かいる! 45
「先生!そんな事が出来るんですか?」
宮部典子が井口の腕を掴みながら叫んだ。
「すごいっすよ!先生。」
加藤も同調して言った。
「本当に・・・出来ますか?いえ・・・してあげて下さい。私からもお願いします。」
裕子が言った。
「みんな・・・私は出来るとはいってないよ・・・というか、このパターンはやった事がないからね」
死者の頭の中・・・記憶を辿る事がどんなに難しいか・・・それが古い記憶であればあるほどに。
「でも安心したまえ・・・やってみるから!」
井口はそう言ってにっこりした。
そしてまた一度振る帰り、浴室に向かった。
「じゃあ三上さん・・・目をつぶって・・・そしてあの当時を・・・いやあの日あの時間を思い浮かべて・・・出来るだけリアルに・・・じゃなくって闡明にだ・・・こう言わなきゃ分からないよね?」
「プッ!」
4人の緊張しまた悲しげな顔が和んだ。
「そうです・・・そんな感じです。行きますよ・・・三上さんの記憶にダイビングします。いやもぐります・・・だっけ。行きますよ」
井口が強めに目を閉じたのが、4人にも分かった。
井口の眉間には、強めの皺が刻まれた。
そして聞こえる・・・井口の唱える言葉が・・・
2から3分の静寂・・・・
続く
2007-05-26
この部屋に誰かいる! 44
4人に説明を終えた・・・
「そうですか・・・この場所から離れられなかったんですね?」
「うん・・・何とか分からないかしら?そのお嬢さんの生存が。」
「難しいだろうな・・・井口さん、そのお屋敷の名前は分からないのですかね?この霊・・・いや三上
さんは。」
「名前か・・・聞いてみるか・・・」
井口はそう言って三上に向き直った。
「三上さん・・・貴方が開いたそのお嬢さんの名前は分かりますか?」
「いや・・・それが、あんな最中だった物で、表札も見なかったし、何にも分からないんだ・・・そうだよな・・・名前も知らないしな・・・」
「そうですか・・・名前が分からないのであれば、少し難しいですね。」
「俺はここで待ち続けても、無駄なのか?無駄なんだろうな・・・もういいかげん・・・」
「それはそうですが・・・一つだけチャンスをあげましょう。」
「チャンス?」
「そうです・・・出来るかどうかは分かりませんが、やってみたい事があります。サイコメトリーと言う能力の一種なんですが、通常は物に残った執着や想念を辿って追いかける能力なんですが・・・
三上さんの記憶の中を辿って、そのお屋敷を僕が見えるかどうかを試してみます・・・ダメな確率が・・99%くらいでしょうが・・・いかがです?」
「いかがも何もあるか!そのサイコ何とかを試してくれ・・・それしか方法がないことくらい、俺でもわかるから・・・なっ!頼む・・・」
三上は必死な顔をして哀願した。
その顔は、先ほどまでの怨霊の顔を消し飛ばしていた。
「やってみましょう。」
続く
2007-05-24
この部屋に誰かいる! 43
「俺の名前?・・・そんな事どうでも良い・・」
男は井口の質問に答えたくないと思うほど錯綜していた。
「ここがお前のいた、あのお屋敷ではない事が分かったかな?それでもここを守る必要があるのかな?それが聞きたい。」
「そうか・・・守る人も、守るお屋敷も無くなってしまったか・・・・俺は・・・どうしたらいい?教えてくれないか?」
「だから名前を教えろと言っているだろう?」
「名前を教えたら、教えてくれるのか?」
「ああ・・・教えてやる。」
「俺の名前は・・・三上雄三・・・という。」
「そうか・・三上さんか・・・これでやっと貴方を名前で呼ぶ事が出来る・・・三上さんがここで死んでから、62年も経つんですよ・・・長い年月ですよね?」
「62年も?そんなに・・・では、もしかするとあのお嬢さんも生きていたら・・・生きていたら当時17歳くらいだったから、今生きているとしたら・・・80歳弱か・・・決して不可能な歳ではないな・・・あの戦火で生きていれば・・・」
「三上さん・・・実は三上さんの死んだ年に、戦争は終わったんですよ。ですから病気にでもなってなければ、生きている事の可能性も出てきますよ。」
「えっ?・・・そうか。本当だな・・・生きていれば・・・会いたい・・・確かめたい。それを・・」
三上はうつむいてボソッと言った。
それと同時に浴室内に立ち込めていた熱風も、物凄かった臭気も消えていた。
「井口さん・・・教えて下さい。答えを?」
宮部典子が浴室の入り口まで来て言った。
他の3人も同時にうなずく。
「大体の井口先生の話で、内容は読めましたが、詳しくこの・・・そう三上さんの言っている事を知りたいのです。」
坂下も入り口付近まで来て言った。
「分かった・・・」
そう言って井口は三上の求めている事を、更に説明をした。
続く
2007-05-24
この部屋に誰かいる! 42
「熱いじゃねえかよ・・・もう逃げ場もなしか!
俺はよ・・・最後に良いことが出来たんだよ。それも盗みに入った俺に、飯まで食わせてくれたお嬢さん・・・せめて 助かって欲しいもんだ・・・」
この時男はフッと笑った気がした。
「俺は満足して死んだんだよ・・・」
「じゃあ何故、人を脅かす?ここは俺の家だと言って!」
「俺はまだ見張りをしていたんだ・・・あれ?可笑しいな?あれから随分経っちまっているんだよな?」
「そうだ・・・今は平成19年・・・と言っても年号が分からないか・・・もうそのお屋敷もお嬢さんもここにはいないんだよ。」
「そうか・・・そうか・・・そうだよな。俺は何も守ってきたんだ?何の番をしてきたんだ?教えてくれ・・・おい!」
「お前はおまえ自身の立てた約束に、とらわれてしまっていたんだ・・・呪縛のようにな・・・」
井口は迷う男を諭すように言った。
「俺が呪縛に?呪縛か・・・」
「お前の名前を教えてくれ・・・俺は井口と言う」
井口は名乗った。
続く
(今日は41もありますからね)
2007-05-24
この部屋に誰かいる! 41
耳を覆いたくなるようなサイレンの音・・・
男は耳に手を当てたまま、話を続けた・・・
「空襲警報が鳴った時、俺達は庭にいた・・・
それはあっという間だった。近所に一斉に火が点きはじめた・・・激しい爆弾の炸裂音と共に。
「二人とも逃げるんだ!」
俺はとっさに叫んでいた。
「逃げるって!どこに逃げたら良いの?」
俺はこの二人を助けたかった・・・俺に飯を食わせてくれていたために、逃げ遅れさせたなんてなってしまったら・・・そんな事は絶対にさせられなかった。
「ちょっと待って・・・」おれは身短に有った水の入った瓶から、水を汲み取り大急ぎで二人にかけた
・・・・
「びしょびしょだけど少し我慢してください!熱気で直ぐに乾いてしまうかもしれませんが、少しは火からも守れると思いますから!」
そう叫んだ時だった・・・庭の一部に焼夷弾が炸裂した。
激しい爆風と熱の照射、耐え難いものだった。
「次の一発の爆弾が、運悪くご主人の近くに落ちてきたんだ・・・ご主人はあっという間に火達磨になり、俺はあわてて水を取りに部屋に入った・・・
お嬢さんが無事な事が唯一の幸運だった。」
台所の水瓶に水を取りに言っている間に、不運にも3発目の焼夷弾が、家と庭の間に落ちてきた。
「お嬢さん!この水瓶を転がします・・・火の中を転がしても何とか無事でしょう!せめてお父さんを助けてあげて下さい!!」
そういって火事場のくそ力を振り絞って、重たい瓶を動かし転がした。
その水を頭から掛けたご主人は、大変なやけどながら、命は助かったようだ・・・
でも・・・俺の方は、唯一の水を外に転がしてしまったから・・・終わりだった・・・
「貴方はどうするの!早く出てきて!!」
炎の向こうから、お父さんを肩で支えながらお嬢さんが、半狂乱のように叫んできた。
「俺は・・・良いです。死ぬ前に思いっきり飯が食えたし・・・あの世で空腹にならずにすみます。」
「馬鹿なことを言わないで!生きていればまた食べられるのよ!!」
「この時代じゃ難しいですよ・・・お嬢さん」
「せめて!せめて私達の命の恩人の貴方の名前を教えて!!」
「俺の名前・・・俺の名前は 三上雄三と言います。」
「生まれはどこ?」
「お嬢さん早く逃げて下さい!焼け死にますよ!!」
「いいから教えて!そうしたら逃げますから」
「江東橋・・・江東区です・・・亀○です」
「三上さん・・・分かりました。本当に貴方の事は忘れません・・・それじゃ!」
お嬢さんはお父さんを引きずるように遠ざかった。
「すげえ・・・あついじゃねえか・・・くそっ」
続く
2007-05-23
この部屋に誰かいる! 40
「お前は間違えているぞ・・・」
男は井口の言葉に反論した。
「俺は・・・俺は確かにこの家に・・・?いや こんな小さな家ではない・・・もっと立派なお屋敷だった・・・俺は空襲から命からがら逃げてきた。でもどうしようもなく腹が減って腹が減って・・・
つい空襲で非難してしまって無人だと思って、このお屋敷の台所に入ったんだ、そうしたら運悪くここの主人が帰ってきて・・・俺はどうせ空襲で長くは生きられないと思っていたから、大人しく縄で結わかれたんだ・・・そうしたらここのお嬢さんが出てきて、(お父さん、この人も必死で生きているんだもん、可愛そうよ。どうせ私達だって長くは生きられないんでしょう?だったらこの人にご飯を食べさせてあげて?)とそう言い出したんだ・・・ここのご主人もその言葉で、急に優しい顔になってな・・・あの時代はみんなが鬼になってしまっていたんだ・・・生き抜くために・・・飯を食わせてもらった所で、俺は主人の男に言ったんだ。俺はどうせ死ぬのなら、何かお役に立って死にたいと・・]
井口はここまでの話を、小声で4人に伝えていた。
「ここに残って良いですかと?貴方たちが非難したした後、俺みたいなこそ泥が、火事場泥棒が来ないように見張って痛いんです。もちろん入り口に鍵を掛けて下さい。俺は庭にいますから・・・この椅子をお借りしますぜ・・・と言ってな・・・」
「二人はそんな・・・ここは危ないから、貴方も逃げなさい・・・今日の事も何かの縁ですから、生き延びて下さい・・・いえ・・お互いに・・・と言ってくれたんだが・・・・」
「それでは縄に結わかれたのは、初めの部分だったと言うわけか?」
井口が男に言った。
「ああ・・・結わかれたのは事実だ・・・でもあの二人は優しかった・・・」
「何か・・・この人可愛そう・・・」
裕子が悲しそうな顔で言った。
「うん・・・そんなに悪い人ではなかったのかもね」
宮部典子が言った。
「そのあと・・・二人と反している最中に空襲警報が鳴ったんだ!」
男はそう言って耳に手を当てて、かがみこんだ。
死してなお、恐怖を覚えるサイレンなのだろう。
続く
2007-05-22
この部屋に誰かいる! 39
「お前はここに何をしに来たんだ?ここは俺の場所だ・・・おれの居場所なんだ・・・」
「俺はお前の話を聞きに来た。なぜお前がここで悪さをするのかを・・・」
「お前は俺を知ってるのか?」
「いや・・・お前のことはよくは知らない。ただ・・・この場所で無残に焼け死んだという事だけは知っている。」
「無残に・・・どういう意味だ?」
「お前から感じられる怒気には、誰か個人的な憎しみが感じられる・・・お前は事故に見せかけられて、殺されたのだろう?」
「何を・・・根拠に・・・言う・・・・」
男の気に、焦げ臭いような匂いが増したようだ。
「恐ら縄でく結わかれていたかなにかしたんだろ?」
「お前・・・・どうして・・・知っている?」
「俺はお前の気を触り、お前の過去に昇ってみた。」
「俺の過去?死んだころと言う意味か?」
「そうだ・・・昭和20年ころだろう」
「・・・・・・・・・・・」
この時、4人の若者には男の姿は見えなかったが、後日談では、あきらかに浴室の中に男がいたように感じたとの事です。
あきらかに会話が成立していたように感じたとも言っていました。
男の言葉は聞こえないにも関わらず・・・
「お前は元々ここにあった家の者ではないな?」
「俺は・・・俺は・・・」
「昭和20年は終戦の年のはずだ・・・お前はその最中、この家に食べ物を求めて迷い込んだ・・・」
「グオーッ・・・グフグフ・・・思い出した・・俺も忘れかけていた・・・記憶だ・・・」
「お前はそこでそこの主人に見つかり、結わかれた。警察の連絡の最中に、運悪く焼夷弾がこの家に落ちた・・・その中でお前は結わかれていた為に、逃げる事も出来ずに、生きたまま焼け死んだ」
「俺は誰を怨めば良い?教えてくれ・・・教えてくれ・・・それが俺を苦しめる・・・・」
「お前はずっとその答えを求めて彷徨っているのだな?盗みに入ったのは自分だと・・・言う気持ちと・・・・縄をほどいてくれと言う要求に誰もこたえてくれなかった恨みと・・・」
続く
2007-05-21
この部屋に誰かいるクイズ!
今回の この部屋に誰かいる・・・は意外と長編になってしまいました。
でも・・・コレからが山場です。笑
ここまで読んだ皆さんにクイズ方式の質問をします。
さて・・・問題です
(A)
ここに登場する霊体(男)は、
1 首吊りで死んだ
2 ガス自殺で死んだ
3 焼死した
4 事故死した
の中のどの死に方をした霊でしたか?
(B)
私のとる手法はどんな方法でしょうか?
1 激しいバトルの末 除霊(除去する)
2 対話方式による 浄霊(清めてあげる)
(C)
(B)の答えの中で、私の除霊方式で、得意なのはどちらでしょうか?
(D)
私が霊を見る時のビジョンは、カラーでしょうか、モノクロでしょうか?
こんなレベルでは、みなさんに馬鹿にしてるのか?とお叱りを受けてしまうかもしれませんが、もじお時間がありましたら、コメントして下さい。
(コメント欄経由でね)
2007-05-21
この部屋に誰かいる! 38
お風呂場のガラス戸を一気に開けた。
「うわっ!なんだこの熱気は・・・まryで誰かが入浴してたみたいな熱気だ。」
「それに な〜に、この匂い・・・臭い!」
その匂いの強烈さといったらたとえようが無かった
浴室の、理由は良く分からないが、その異様な熱気でその匂いすら何倍にも倍加して感じられた。
その時だった・・・みんながその匂いに顔を背けていた隙を突くように、浴室横の洗濯機棚の上の、洗剤などが一斉に落ちてきた。
「うわ〜っ!なんだ!!どうしたんだ!!!これは?」
「なによこれ!ありえないよ〜」
洗剤や液体柔軟材などが落ちてきて、洗剤はみんなを均等に襲った。
「慌てるな!前をじっと見て・・・目を逸らすな」
同じように洗剤まみれになりながらも、井口は叱った。
「ひひひひ・・・ほほほほ・・・熱いだろう?
暑いだろう?俺はもっと熱かったんだぞ!!熱いだろう?辛いだろう?苦しいだろう?」
「・・・・・・・」
井口はじっと目線をすえたまま、何も言わなかった。
「おい・・・熱いだろ?何とか言えよ!!熱いと言って見ろよ!!」
男は無反応な井口に腹を立てていた・・・
「熱くは無い・・・お前が味わった熱さはこんな物ではなかったんだろ?」
井口の一言に、今度は男が沈黙した。
「・・・・・・・・・なに〜っ?!」
続く
2007-05-20
この部屋に誰かいる! 37
10秒くらいの沈黙・・・・
するとドアノブが静かに回った・・・・
「・・・・・・・・」
井口の後ろに回りこむ4人。
「さあ・・・入室を許可されたらしい・・・入るぞ」
井口は玄関の中に身を入れた。
「ねえ・・・宮部さん。申し訳ないけど靴のまま上がって良いかな?」
井口は後ろを振り返らずに言ってきた。
前方に全神経を張り巡らしているのだろう。
「は・はい!構いません。」
「うん・・・それじゃ・・・」
「あの・・・お・俺達は?」
ドアの外で加藤の声がした。
「みんな入ってきて良いよ。そして速やかにドアを閉めて。」
4人が大急ぎで靴のまま入ってきた。
「井口は窓に向かうとカーテンをしっかり閉めた。
昨夜は慌てていたので、カーテンが少し開いていたようだ。
電気も昨夜ここを飛び出した時のまま、点いていた。
ただ一つだけ違っていた事がある・・・
「なあ・・・なんか線香臭くないか?」
「うん・・・でも何かが腐った腐臭のようなものもする・・・なんだ!臭い・・・」
「するする!お線香の匂い・・・腐った匂いは・・・・・・・・・・ここじゃない?」
裕子が匂いを辿って指を指した場所は、風呂場の中だった。
「ここだな 確かに。みんな下がって・・・」
井口はみんなに指示を出すと、一気にお風呂場のドアを開けた。
続く
2007-05-20
この部屋に誰かいる! 36
宮部典子の住むアパート
「先生・・・?」
宮部典子が井口の腕を掴んだ。
助けて下さいと言う気持ちが伝わってくる。
自分の借りてしまった部屋の事で、みんなに迷惑を掛けてしまっている責任に押しつぶされそうになっているのだろう。
「大丈夫だよ・・・」
井口はそう言って、宮部の手を握った。
「さあ・・・鍵を貸してもらえるかな?」
「あっ!はい・・・これです。」
「うん。坂下君と加藤君・・・行くぞ!」
「はい!」2人同時に答えた。
ガチャ ガチャ・・・・・カチッ!
カギがあいた音がした。
「?・・・・ノブが回らない・・・開かないな」
井口が不思議そうに言う。
「先生!俺がやってみます」
そう言って加藤が挑戦してみた。しかし力でも開かないようだ。
「どうしてだ・・・こんな事ねえよな!」
「先生・・・まさかアイツが中から?」
「それしかないようだね。守りに入っているのかな?仕方ない。」
そういって井口はドアノブに、人差し指と中指の2本を自分の額に当て、その指をドアノブに当てた。
それから10秒位した時だった。
続く
2007-05-19
この部屋に誰かいる! 35
「そういう事になるな・・・君の部屋の位置があの男の死に場所・・・それも相当思いを残した男のようだ。」
井口は残留している気を感じ取りそう言った。
それから数時間は、井口が来てくれたとの安堵感からか、あっという間に過ぎた。
そして朝を迎えた・・・・
「さあ・・・行くとするか。」
5人は宮部典子と裕子が作ってくれた、簡単な朝食を食べ終えて、コーヒーを飲み終わったところだった。
「何か自分の家なのに、すごく遠い、他人の家に行くみたいな気分・・・」
宮部が心境を正直に言った。
「大丈夫さ・・・今夜からはまた君の部屋さ。」
井口のこの言葉が、4人の若者にとっては、何よりも心強い言葉であった。
5人は電車で3つ隣の宮部典子の家の駅についた。
「ここか・・・」
いくらか夜よりは明るい分、怖さは少ないが
、重い印象がする建物であった。
続く
2007-05-19
この部屋に誰かいる! 34
宮部典子の質問は、みんなが聞きたかった事であった。
「みんなはその男の顔を見たかな?特徴を教えてくれないか?」
「はい・・・髪はちじれて・・・目が異様に大きく見開かれていて・・・肌は・・・そう黒ずんでケロイドのようになっていました。」
坂下が説明をした。
「そうです。俺も焼死した男じゃないかと思ったんですよ。」
加藤が同意してきた。
「うん・・・焼死か・・・そうなるとあのアパートに住んでいた住人ではないな・・・おそらくあのアパートのルーツ・・・元の土地に関係する霊魂だろう。」
「元の土地?あのアパートが建つ前の土地の事ですか?」
宮部典子が驚いたように言ってきた。
「そうだね・・・昔の土地には、よくお屋敷が建っていたりして、それを売る時大きいままの土地では売れないので、切り売りして手放してったんだよ。だから現在では、まったく別の人の持ち物が何件か建っているという感じになるんだよ。」
「それじゃ・・・あの周りの家にも、私達みたいな現象がおきているんですか?」
「いや・・・そのお屋敷であの男が死んだとしたら、その部屋の位置が関係して来るんだ。」
「という事は・・・私の部屋がその男が死んだ部屋と?」
宮部典子が自分の両肩を抱くようにして震えた。
続く
2007-05-18
この部屋に誰かいる! 33
「裕子さん・・・これはなに?」
井口が手に取った物は、何枚かの写真たてと一緒に飾られていた小さな石だった。
青い半透明な石・・・
「それはパワーストーンと言うものです。」
「パワーストーンか・・・何処で買ったのかな?」
それは渋谷で外人から買いました・・・それが何か変なんですか?」
「いや・・・変とか言うんじゃないんだけど・・・なんだろう?この不思議な気は・・・」
井口は青いその石を右手のひらに乗せ、意識をシンクロした・・・
「ほーっ・・・この部屋に霊が入れなかったのは、その粗塩だけのお陰じゃないみたいだね。」
「じゃあ その石が守りになったと?」
坂下が横から聞いて来た。
「うん。そうみたいだ・・・この石には何か入っている感じがする。この手のパワーストーンに、すべて何かこういう力があるという訳ではないのだろうけど・・・このパワーストーンは使えるみたいだよ。」
「本当ですか?安かったんですよ、その石・・・でも何かその色に引かれて・・・買っちゃったんです。」
「この石を持っていて?宮部さんのうちに行く明日も持っていくと良い。」
そう言って井口は、その青い石を裕子に渡した。
裕子は今まで以上にその石を大事に思ったことだろう。
「こちらにはこの石と言う見方も出来た事だし・・・寝ないとね・・・少しでも。と言った所で誰も寝ないか・・・」
「井口先生・・・私は宮部典子と言います。あの部屋にいるのは何者なんでしょうか?」
宮部はストレートに聞いて来た。
続く
2007-05-17
この部屋に誰かいる! 32
部屋の真ん中に座り込んだ井口から、4人は自然と離れた・・・
何かに押されたような感覚を、それぞれが受けたらしい。
「・・・・・・・・・・・・・」
井口が何かを唱え終えてから、目を開いた。
「これでよし・・・この部屋には封印をしましたから、さらに入り込めないでしょう。」
「でも・・・私が出入りする時に、外で・・・という事はないんですか?」
裕子は心配そうに聞いて来た。
帰宅時に、鍵を開けていたりした時に、襲われはしないかという事が心配な様だ。
「その心配は無いよ。明日はその男自体を消す事になるから・・・ねっ?」
井口はきっぱりした口調で言い切った。
「さあ・・・女の子二人は寝て下さい。男組は僕と一緒に見張り役ね・・・・いいかな?}
「はい!俺達は起きてます。なあ坂下?」
「うん・・・先生が来てくれなくても起きていようと思っていました・・・先生が来てくれたんで、ホッとしていますが。」
坂下は涙を少しためて言った。
「そうか・・・さすが男だな?二人とも。」
井口は気丈に振舞う2人に好感を持った。
「井口先生!」
宮部と裕子がうなずきながら話しかけてきた。
「私達も起きています。私達だけ寝ているなんて出来ません!どうせあと数時間で朝ですから・・・いけませんか?」
「・・・・・・・・」
井口は少し考えた後に
「うん!そうしよう・・・みんなで戦おうか?」
にっこりしながら答えた井口の顔をみて、安堵したのか、裕子は泣きはじめた。
「こ・・・怖かった・・・どうなるか・・・このまま死ぬんじゃないかと・・・ビデオとかテレビで見た事あったような事が、まさか自分に起こるなんて・・・本当に怖かったんです・・・ウッ・・・」
「裕子・・・それは私も同じよ・・・私があんなアパート借りちゃったから・・・みんな私が原因を作っちゃったから・・・なのよ。ごめんね 裕子・・・加藤君、坂下君も・・・ごめんね。」
「はいはい・・・湿った雰囲気はお終いにしましょう!明るく明るく・・・ねっ!」
井口はそういうと立ち上がり、部屋全体を見回した。
「ねえ・・・裕子さん・・・だっけ?ちょっと聞きたいんだけど・・・」
井口は突然あるものに興味を持ち、聞いて来た。
続く
2007-05-16
この部屋に誰かいる! 31
「そんなはずは・・・あっ!確かにあれほどガチャガチャ回していたドアノブも、井口先生が携帯に電話をくれるほんの前に、ピタッとしずかになったな」
「そうね・・・本当に何事も無かったように」
裕子がドアノブの方を見ながら言った。
「そうか・・・そのタイミングで・・・僕が来た事を察知したか・・・・」
井口はそう言って窓の方に向かった。
先ほどの男が覗いた状態のままだったので、カーテンが開いた状態のままだった。
「この窓か・・・でも、手形も指紋残っていないよ?幻覚か・・・4人一緒に。」
井口はポツリと言った。
それを聞いていた宮部典子が強い口調で言った。
「幻覚なんかではありません!!4人とも見たんです・・・そして聞いたんです、あの声を・・・」
「分かっているよ・・・君達が嘘を言っていないのも知っているし、幻覚というのも、普通に言う幻覚とは違うんだ・・・それも分かっている。」
井口は出来る限り優しく言った。
「信じてくれますか?僕達を?」
「ああ・・・だからこんな時間でも来たんだろ?この時間は割増料金だぞ?あははは」
井口の笑い声に引きつっていた4人は、自然とこわばらせた顔を崩した。
「さて・・・この部屋の主は・・・君か?」
井口は裕子を指して言った。
「はい!河野裕子と言います。21歳です・・・」
緊張したのか歳まで自己紹介した。
「歳は良いのに・・・21歳か、若いな〜」
井口は少しおどけていった。
「さてさて・・・では河野裕子君の部屋に、アイツが二度と来れない様にしておかなければな・・」
そう言って井口は部屋の真ん中に胡坐をかいて座った。
続く
2007-05-15
この部屋に誰かいる! 30
ガチャ・・・・
4人は恐る恐るドアを開けた・・・
「うん!合格だな・・・その開け方は」
そう言ってドアの外に立つ男は笑った。
「井口先生!」
坂下は肩の力が抜けるのを感じた。
「こんばんは・・・間に合ったかな?」
「はい!ギリギリです・・・それより早く入って下さい。ドアを開けておく事の不安があるもので」
「そうだね・・・とりあえず中に入ろう・・・」
「坂下君・・・この方が井口先生で間違いないのね?」
宮部が坂下に確認した。
「見た目は普通の人だけど・・・本当に井口先生だよ。」
坂下は後ろ手でドアの鍵を掛けながら答えた。
「もっとすごい格好をしている霊能者が来ると思ったでしょう?メディアの影響力で、みんなそう思ってしまっているんですよ・・・私も普通のサラリーマンをやってますから・・・」
宮部の疑問を打ち消すように井口は答えた。
「はい・・・すみません・・・その通りです。白い髭をはやした仙人みたいな人を・・・もっと怖い人を想像していました。」
「あははは・・・正直でよろしい!!ところで今はその霊の気は感じられないけど・・・逃げたか?」
井口は部屋の中を見回しながらそう言った。
続く
2007-05-14
この部屋に誰かいる! 29
突然掻き消えたドアノブをまわす音・・・
「・・・・・」
息を呑む4人。
「静かになったぞ?」
「今度はどこからだ?
「お塩をみんな手で持って!」
宮部典子が指示をした。
その時だった・・・
坂下の携帯電話がなった。
恐る恐る電話を耳にあてた。
「もしもし・・・井口です。今 アパートの前に着いたんだけど・・・大丈夫か?」
「先生!!良かった・・・大変なんです。やっぱり憑いて来てようなんです。今もドアノブを・・・」
「今私の目から、そのドアノブが見えるけど、今は何も居ないようだよ。」
「本当ですか?先生が電話をくれる、ほんの瞬間までガチャガチャと・・・とにかく早く来て下さい」
「分かった・・・念のために今から10数えるあとにチャイムを鳴らすから・・・」
そう言って電話は切れた。
「本当に井口さんなの?その先生なの?もしかしてアイツが井口先生の名前を語って・・・って事はないよね?私・・・怖い・・・」
裕子は心配なのだ・・・もし井口のふりをしてきたのだとすると、その男をわざわざ部屋に招きいれることになってしまうからだった。
「その心配はないよ・・・裕子。あいつは井口と言う名前は知らない筈よ。坂下君の電話に、井口ですって先に答えたんでしょう?」
「そうだよ・・・井口ですって・・・この言い方はあの人の口癖みたいな物らしいから、間違いないよ。」
「そうだな・・・ここは信用しようぜ!そろそろ10になるだろ?」
「ピンポーン・・・・・」
4人は共にうなずき合い、しかし手に持った塩を強く握り締めてドアに向かった。
続く
2007-05-13
この部屋に誰かいる! 28
窓から姿を消した男
その顔をはっきりと見た・・・
干からびて少し黒ずんだ肌・・・
目が異様に大きく、血色していた・・・
髪の毛はちじれて・・・
?????
待てよ?今の男の状況を考えたら・・・
あの男は?焼死した?
加藤が同じ事を考えていたようで、こちらをじっと見つめていた。
その時であった!
「玄関の方でドアノブを回す音が・・・」
ガチャガチャ ガチャガチャ・・・
「あの男が今度は玄関から堂々と入ろうとしているんだ!」
「そんな・・・あいつは霊でしょう?こんな実体化して来る訳?」
裕子が大事な事に気がついた・・・
「実体化した霊・・・物理的に危害が加えられる霊坤・・・悪霊・・・それを井口先生が心配していて急がせたんだ・・・きっと・・・」
「チョーヤバイじゃない!!物理的危害?なにそれ・・・漫画じゃない!!やだやだ・・・何とかしてよ、加藤君」
裕子が気が狂いそうに、髪を掻き毟りながら叫んだ。
「なぜ・・・部屋に入ってこれないんだ?霊なら部屋に入ってくるくらい、簡単なんじゃないか?」
「そうよね・・・私もそれを不思議に思っていたの・・・あいつ焦っていた感じだし・・・」
宮部典子は、意外と冷静な顔をしてそう言った。
「塩だ・・・あの粗塩のお陰なんだ・・・だから入ってこないんだ」
坂下はみんなに言い聞かせるように言った。
「あいつは神経的にマイラセルために・・・そうだ・・・」
その時急にドアノブを回す音が掻き消えた。
続く
2007-05-12
この部屋に誰かいる! 27
「井口先生が来るまで耐えるんだ!!」
坂下が励ますように言った。
「ひひひ・・・早く帰ろうよ・・・・あの・・・あの部屋へ・・・ご招待するよ・・・お前達を」
男が窓に張り付いたまま不気味な声で話している。
「気にするな!あいつの言葉に耳を貸すな。」
加藤も坂下に習って叫んだ。
「おいおい・・・無駄だよ?こんな所へ隠れていたって・・・俺の・・・俺の部屋に入ってきたヤツは許さない・・・今までも何人かのお譲ちゃんが・・・ひひひ・・・恐怖に引きつり・・・可愛い顔が・・・それはそれは醜い顔になって・・・すぐに出て行っちゃうんだな・・・ひひひ・・・」
「あんたはあのアパートに住んでいた人なの?」
裕子が突然突っかかるように叫んだ!
「俺はあそこに昔建っていた、平屋のお屋敷に住んでいた門倉ってもんだ・・・ひひひ」
「お屋敷?・・・お屋敷って言うって事は、お前の家ではないんだな?」
今度は坂下が受け継いで問い詰めた。
「俺の部屋だ・・・俺の部屋だ・・・俺の家じゃなくったって俺の部屋だ!!」
突然狂ったように叫んだと思ったら、男の姿は窓から消えていた。
「・・・・・・居なくなった?」
続く
2007-05-11
この部屋に誰かいる! 26
「・・・・・・」
「ここにまで?」
「窓から離れろ!加藤。」
慌てて加藤は飛びのいた。
「塩の効果は?清めの効果はあるのか?」
誰もが思う点であった。
「大丈夫の筈だ!」
「でも・・・あの塩って買っただけの物だよね?」
「確かに井口先生がパワーを入れてくれたお塩じゃないし・・・本当に大丈夫なのかな?」
宮部典子がみんなの気持ちを代表した疑問を口にした。
「・・・・・信じよう。あの塩を」
「ひひひーっ・・・あの部屋は俺の部屋だ・・・黙って入ってきやがって。」
「あの部屋の事を言ってやがるぜ?」
加藤が手に持った塩を強く握り締め言った。
その時だった・・・坂下の携帯電話が鳴ったのは
「もしもし・・井口です。間に合ったか?」
「塩で清め終わりましたが、今ピンチです!」
「ではもうそちらに現れたという事か?」
「はい!!いま女の子の家に居ますが、窓に・・」
「その場所はどこだ?住所を教えてくれないか?」
「目黒の○○ 3-24-7 コーポサザン103 です」
「分かった。今広尾に居るから、タクシーで飛んでいくから、動くなよ!」
「ハイ!ありがとうございます。」
坂下はみんなの顔を見ながら
「今から先生がここに来てくれると・・・」
「本当に!!どれくらいかかるの?」
「いま広尾らしいから、タクシーで15分くらいで来ると思う。それまで粘ろう!!」
井口が来てくれると言う事が、4人に希望を与えた。
早く来て下さい!これが4人の願いだった・・・
続く
2007-05-10
この部屋に誰かいる! 25
さっきの叫び声の原因は、一体何だったのだろう?
「お風呂場で私が典子の肩や背中にお塩を掛けていたら、急にシャワーが止まったの・・・」
裕子が説明した。
それを聞いて宮部も
「うん・・・私も驚いたの」
「それで止まったと思ったら、私が持っていたお塩が入ったお皿を狙い撃ちするようにシャワーが急に出て、ホースがはずれ暴走したのよ・・・」
「まるで誰かがシャワーを持って、お塩を駄目にしようとしているように思えたくらい!」
宮部典子は、恐怖で肩を抱いたまま言った。
「粗塩を・・・か。とにかく二人とも、風邪を引くから早く着替えて」
「うん、分かった。いつでも逃げ出せるような洋服に着替えるね。典子にも貸そうか?」
「ううん・・・私はこれでいい。ジーパンだし。」
「塩を邪魔とする・・・という事は、やはり宮部の部屋のあれか・・・?」
「井口先生が電話で教えてくれなければ・・・間に合わなかったかも知れないな・・・」
「坂下・・・ドアの結界は?」
「大丈夫だ・・・それより加藤、その窓の下にも塩をまいた方が良いんじゃないか?」
「「裕子?良いか塩まいて・・・」
加藤が申し訳なさそうに言った。
「いいよ、どうせ掃除機掛ければいいわけだし。それより早くまこうよ!」
「ああ・・・分かった。」
加藤は窓に近寄り、窓の桟に塩がまきやすいように、勢い良くカーテンを開けた。
「・・・・・???!ウワーッ!!!なんだこいつ」
加藤が一気に飛びのけたその窓に、あの少し小さい男が張り付いて中を覗き込んでいた。
「ひひひ・・・」
「み〜つけた〜・・・ひひひ」
不気味な声が響いた。
その声は耳に聞こえてくるというより、頭の中に直接入り込んでくるような声に聞こえた。
続く
2007-05-10
この部屋に誰かいる! 24
部屋に戻った二人を待ち構えていたのが、お風呂場から叫ぶ裕子の声だった。
「キャーッ!」
慌ててお風呂場のドアに向かって駆け寄ろうとして、かろうじて踏みとどまり
「二人とも!出て来い!!服の事は気にしている場合じゃないぞ!」
加藤が大きな声で言った。
「わ・わかった・・・今出るから!!」
「俺達は後ろを向いているから・・・早く!」
「ガチャッ」
お風呂場のドアが開き、二人が出てきてタオルを巻いた。
「何があったんだ?」
「今は説明はあとにして、加藤君達は早く上着を脱いで、部屋でお塩を振りかけて!」
裕子の提案に、そうかという表情で加藤はうなずくと
「坂下!早くしようぜ!」
そう言いながら上半身裸になった。
坂下も急いで上半身裸になる。
「良い?二人とも背中を向けて!!急いでお塩をかけて清めなきゃ!」
そう言って加藤には裕子が、坂下には宮部典子が塩を掛けた。
「フーッ・・・これでよし・・・と」
「さっきの叫びは・・・何があったんだ?」
続く
2007-05-09
この部屋に誰かいる! 23
角部屋で、隣に部屋が無いほうの壁をたたく音・・
「何だよ・・・これ?」
さすがに慌てたように言う加藤
「まさか・・・ここまでついて来たのか?そんな事があるのか?」
坂下も先ほどの井口の言葉を思い浮かべながら慌てた・・・
「地縛霊じゃなかったのか?あの部屋に居て、動けないんじゃなかったのか?」
「自縛霊か?いや浮遊霊だったのか?!」
「まだ音だけだ!中には簡単に入れないだろう。今のうちに2人に伝えなきゃ!!」
「そうだ、頼むぞ加藤!俺は玄関のドアにこの塩をまいてくる!!」
「坂下!!」
「何だ?加藤・・・」
「少し多めにまけよ・・・」
「ああ・・・そうするさ!!」
2人は戦う気持ちになってきていた。
「宮部、裕子・・・早く出て来い!大変なんだ!!」
加藤の慌てた口調と、お風呂場の外での会話が聞こえていたので、すぐに反応があった。
「うん!分かった。そこどいていて。」
「うん・・・ごめん。坂下・・・終わったか?終わったら、2人が出てくるから向こうに行くぞ」
2人は部屋の中に入った。
続く
2007-05-08
この部屋に誰かいる! 22
井口の言葉で、その緊急性を感じ取った4人は、男2人、女2人で急いで背中に塩を掛け合うように話した。
「まず女の子達が入れよ!でも・・・出来る限り急いでくれよな?」
加藤が少し情けない声でそう言った。
「うん!体を洗うより、清める事が目的って感じで入るからさ!待っててね、加藤君坂下君!」
「頼むな2人とも・・・急いでくれよな。」
「うん。典子入ろう!」
「加藤・・・俺達はこっちの部屋で見張ろう。」
坂下がそう言って立ち上がった。
「そうだ・・・その粗塩を、少し分けてくれないか?俺と加藤がガードの為に見張るつもりだけど・・・武器が少しでも欲しいんだ・・・」
「そうね!コレ持って・・・お皿に分けるね?」
裕子が少し大きめのお皿に分けて、2人に渡した。
そして2人の女の子はお風呂場に消えた。
「ワンルームだからな・・・俺はカーテンの方を見張る。坂下は部屋の入り口から部屋の中を見張ってくれ。」
「分かった・・・神経を張り巡らせないとな。」
坂下がそう言った時だった!
2人のちょうど間あたりの壁が鳴った。
「ドン!ドン!ドン!」
「・・・・・・気のせいか?」坂下が小声で言った。
「ドンドドン・・・ドン!ドドン!」
今度は不定期な音の鳴り方がした。
「やっぱり気のせいじゃないか・・・あれ?坂下・・・この壁側って・・・この部屋は角部屋だろ?こちら側には部屋なんかねえよな?」
続く
2007-05-07
この部屋に誰かいる! 21
裕子の部屋に落ち着いた4人は、明日の事を相談し始めた。
明日井口先生には、誰が説明する?」
坂下が考えていた不安を口にした。
「そうだな・・・坂下がその人を知っているんだから、坂下から説明しろよ。」
「「うん・・・坂下君から説明して・・・私の部屋の事・・・」
宮部典子も同意した。
その時であった。坂下の携帯が突然鳴り出した。
携帯の表示画面を確認した坂下が、驚きみんなを見た。
「井口先生からだ!」
「おい!出てみろよ。」
加藤が乗り出して言った。
「分かった・・・どうしたんだろう?」
坂下はそう言いながら会話ボタンを押した。
「君たち無事だったか?良かった・・・」
電話の向こうから、一気に井口が話しかけてきた」
「どうしたんですか?井口先生。」
「いや・・・あの後嫌な予感がしてね。物凄く心配になったんだ。」
「先生の言うとおり僕らは逃げました。」
「簡単に出れたのか?」
「いえ・・・入り口に立ち塞がれました。」
「その中を強行突破か?」
「はい!そうしました・・・みんなで心を強くして」
「そうか・・・ところでもう塩での清めは済んでいるよね?それを済まさなければ落ち着いちゃ駄目だよ?分かっているよね?」
「えっ!ま・・・だ・・・ですが・・・」
「着いたばっかり・・・という事かな?」
「いえ・・・30分くらい前に着きましたが・・」
「・・・まずいな・・・霊は場所も時間も関係なく移動できるんだよ・・・地縛霊だとは思うけど、もし移動できるとなると、粗塩でその痕跡を遮断しておかなければいけないんだよ・・・」
「・・・・・・・」
「今からでも急げ!!」
「はい!分かりました」
続く
2007-05-06
この部屋に誰かいる! 20
裕子の家もワンルームであった。
タクシーを降りた4人は、大急ぎで近くのコンビニに行き粗塩を多めに買った。
食料になる物や、念のために懐中電灯と電池も買った。
コンビニの明るい照明と、人影になぜかホッとしてしまった4人だった。
「ねえ・・・蛍光灯の電球は買わなくても良いかな?「
裕子が心配そうにそう言った。
「そこまでは大丈夫だろう?今度は裕子の家なんだからさ。」
加藤がそう答えた。心配する裕子の気持ちは分からないではなかったが・・・
「さあ・・・裕子の家に行こう。そして明日の朝まで持久戦だ。」
4人は買い込んだ物を持って、裕子の家に着いた。
なぜか4人とも、裕子の家の鍵を開ける時に、息を殺してしまったのは、先ほどの経験が、恐怖として残っていたからだろう・・・
「なあ・・・ここは大丈夫だろう?」
加藤は一番ホッとした顔でそう言った。
「ごめんね〜みんな!まさか今日ここにみんなが来るようになるなんて思わなかったからさ・・・散らかってるでしょう?」
「あははは・・・それでもここがこんなにオアシスに見えるんだからな〜。この現実的な生活観が、何故かホッとするぜ!」
裕子以外の3人が笑った。
続く
2007-05-06
この部屋に誰かいる! 19
タクシーの乗り込み安心した4人は、物凄く疲れている事に気がついた。
「おい、坂下、井口先生に今晩これからはどうしたら良いかを、再確認してもらえないかな?やっぱりあのままでは不安だからよ。」
「俺もそう思って居た所なんだ・・・掛けてみる」
そう言って坂下は携帯を取り出してリダイヤルボタンを押してみた。
今度は2回目の呼び出し音ででた。
「はい 井口です。」
「夜分遅くに失礼します。先ほどの坂下と申しますが・・・」
「本来なら相談はお受けできない時間ですが・・・
まあまあいいでしょう。」
「申し訳ありません。」
「上手く逃げられたようですね?」
「これから別の人の家に泊まるために移動していますが、そこに着いたら、何かしなきゃいけ無い事はないのだろうか・・・と不安に思いまして電話しました。」
「うん・・・良いところに気がついたね?大事なことがある。まず帰りにコンビニに行き粗塩を買って、お風呂場で一人ずつの肩から背中へたたきつけるように塩をまいて下さい。
「粗塩じゃなきゃ駄目ですか?」
「間違っても食塩は駄目ですからね。」
ここで急に電波の受信が悪くなり、携帯は切れてしまった。
嫌だなと思う気持ちもあったが、もう裕子の家の近くまで来ているので、携帯をしまった。
続く
2007-05-05
この部屋に誰かいる! 18
「よし、ドアが開いたぞ!急いで出ろ!!」
4人は転がるように外にでた。
このマンションは、4戸のみ入居の小さなマンションであった。
いや・・・正確に言うと、マンションと言うより、コーポと呼ぶ方が正しいかも知れない。
「宮部さん!早く鍵を出せ!!俺が閉める。」
坂下は宮部典子から鍵を受け取り、急いで鍵を閉めた。
はたして鍵にどの程度の意味があるかは分からないが・・・いや・・・泥棒除けというくらいの物だろうが・・・
「みんな!急いでここを離れよう?そう言ってマンションを振り返った時、ベランダ面が見えた。
他の部屋には明かりが点いていない。
この時間なのに?
しかしそんな事も直ぐに気にならなくなった。
何故なら・・・坂下と加藤は見てしまったのだ。
宮部典子の部屋の、明かりが点いたベランダから、カーテンを少しよけて、人影が立ってじっとこちらを見ているのを・・・
「ねえ、今日は私のうちに泊まって?私も一人になるのは怖いし、ここからは一番近いから・・・ネッ!そうして?」
裕子はお願いしますという感じで言ってきた。
裕子の気持ちも分かる。
俺達だって・・・同じ思いだ。
明日を無事に迎えられるのか・・・そう思ったら、少しでもかたまって朝を迎えた方が良いと思った。
「裕子の家にお世話になろう!なっ 加藤?」
「そうしようぜ。タクシーで行けば15分くらいだろうし・・・早くこの場を離れたいぜ。」
一同の意見は一致した。
そしてタクシーに乗り込んだ4人は、裕子の住むマンションに向かったのだった。
続く
2007-05-04
この部屋に誰かいる! 17
もう直ぐでドアに手が掛かるというその時であった。
後ろで部屋との境のドアが、不気味な軋み音と共に開いたのであった。
ギーッ!カチャ カチャ・・・
「誰も振り向くな!」
坂下がみんなにそう言った。
「早くしろ!早くドアを開けろ」
一番後ろの坂下は大丈夫なのだろうか?
みんながそう心配した。
しかしその坂下が大きな声でみんなに叫んだ事により、怖さよりも勢いが出た。
その時・・・今度はドアの前で声がした。
「お前達は・・・何者だ?どうしてここに入ってくる・・・」
不気味な男の、しわがれた声がした。
「ここから出しはしない・・・人の家に勝手に入って来たのだから、罰を与えなければ・・ヒヒヒッ」
「くそっ!」
加藤は目をつぶったままドアの取っ手を掴んだ。
「・・・・・・・・」
「どうした加藤?早く!早く開けろよ!」
一番後ろで坂下が叫んだ!
「開かないんだよ!カギ外したのによ・・・」
「ちょっと代わって」
宮部典子が先頭に出た。
「本当だ・・・開かない。 ちょっと!あんた何者よ?何でこんな事するの?私達が貴方に何かした?」
宮部はドアの方を見ながら叫んだ。
「お前達は・・・みんなそうだった・・・みんな・・・俺を馬鹿にして・・・なんでだよ。俺が何かしたか?何にもしてないのによ・・・」
「・・・・・・」
4人は顔を見合わせた。男の影がボソボソと言い出した・・・しかし その意味が分からない。
危険が増す恐れがあるので、早くここを出ることが優先だった。
「4人で一斉に開け!と強く言うんだ。分かったな?一斉の・・・せ!!」
坂下の掛け声と共に4人の気合が重なった。
「あ・開いたぞ!今のうちに出るんだ!!」
続く
2007-05-04
この部屋に誰かいる! 16
「よし!まず先頭は俺だ。」
そう言って加藤は一歩前に出て
「宮部が次に・・・裕子をが3番目、坂下・・・お前が一番後ろを・・・頼むな!」
「分かった・・・任せておけ。それからみんな、井口先生の言った通りにする事を忘れないように」
「分かったわ!フッ!フッ!でしょう!こうなれば必死だからね」
宮部と裕子が意気込んで言った。
「さあ・・・行くぞ!今の時間・・・10時50分か」
「外に出ればまだ人が歩いている時間だから、大丈夫よ。」
「無事に出れれば・・・このドア一枚だけの差か」
「この部屋で一体何があったんだ!クソッ!!」
「今は考えるな、加藤。心を無にして行くんだ!」
「よし!坂下の言うとおりだな・・・行くぞ!」
4人は一列になって、仕切りのドアを開けた。
先ほど男が覗いていたドアだったが、誰もいない
みんなで勢い良く息を吐きながら進んだ。
外へ出るドアの前に来た。
さっきまであんなに狭いと思っていたワンルームが、こんなに広く感じるとは、誰一人思わなかった。
その時だった!
続く
2007-05-03
この部屋に誰かいる! 15
誰かが覗いていた。
「マジかよ・・・やばいよ!」
裕子が泣きそうな声で叫んだ。
その時だった・・・
「あったぞ!!名刺はなかったけど、携帯に番号を入れてあった。」
「おい!今からすぐに電話しろよ!」
「分かった!今掛ける」
トゥルルル〜
「はい・・・井口です。」
「井口先生ですか?私は先月先生に助けていただいた、○○ ○○子の甥なんですが、今現在 恐ろしい目にあっているんです!どうしたら良いか助けて下さい!!」
「ああ・・・○○さんの時に、一緒に居た人ですね?」
「はい!坂下です。」
「覚えてますよ・・・落ち着いて手短に教えて下さい。」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜
手短に用件を伝えた。
「分かりました。ただ、その場所までは今は行けませんから、今から伝えるとおりに、みんなでそこを出て下さい。そして誰かの家に、みんな待ち待っていて下さい。その方が一番安心できるでしょうから。
私は明日午前中に行きますから・・・分かりましたね?」
「はい!そうします。」坂下は興奮気味に言った。
「まず、部屋の出口に、4人で固まってって下さい。そしてお参りのように手を合わせて、口から気合のように、{フッ!フッ!}と強く息を吐きながら出来る限り固まった集団状態で、部屋を出て下さい。分かりましたね?」
「それ・・・だけで大丈夫なのですか?本当に」
「大丈夫ですよ。さあ・・・」
「はい!分かりました。」
「あっ!それから部屋の電気は点けたままでも一晩くらいなら良いでしょう。部屋の鍵は忘れずに」
「はい・・・がんばります。」
「出来る限り女の子を守るような気持ちで行動して下さいね。明日そちらの駅に9時には行きますから、その時に・・・・」
ガチャ ツーツーツー
坂下は今 井口から教えてもらった方法を、みんなに小声で伝えた。
「それだけか?・・・いや・・・今はそれを信じるしかないか」
「うん!急ぎましょう!」
宮部が気丈な態度で率先して動こうとした。
続く
2007-05-01
この部屋に誰かいる! 14
坂下が聞いていた、井口への依頼料の金額を聞いて、宮部もみんなも安心した。
そして決心もついたのだった。
「坂下君お願い・・・連絡は取れる?」
「確か・・・名刺を貰っていた筈だから・・・」
そう言って財布を取り出した。
「あれ?名刺が無い!どうしたんだ、こんな時に」
「おいねえのか?良く探せよ?」
「うん!分かってるよ!冷静になれ・・・俺!」
その時だった!
ワンルームの部屋と廊下を仕切ったドアが不意に
「キィーッ・・・・・」
とひとりでに開いたのだった。
「キャーッ!!」
裕子がそれを見て叫んだ。
「おい!ちゃんと閉めとけよな!」
加藤は出来るだけ気丈に振る舞い、ドアを閉めに行った。
「ウオッ!」
加藤はドアを閉めた瞬間に、ガラス部分から覗く、男の顔を見た。
「どうした!加藤?」
「大丈夫?加藤君!」
「何がいたの?」
3人が駆け寄ってきた。
「ベッドの下に居たやつが・・・覗いてた」
尻餅を無様についた状態で、後ずさりながら言った。
「まじか・・・ヤバイな?」
続く
2007-05-01
この部屋に誰かいる! 13
「ねえ・・・その人有名なの?有名だったら凄くお金取られちゃうんじゃない?不安だな・・・」
宮部典子は不安を口にした。当然の心配だった。
「宮部・・・もし俺達でも何とかなる金額だったら、俺カンパするからさ。」
加藤は男らしくそう言った。
「そうだよ・・・典子。私も何とかするよ。」
裕子も同調して言った。
「もちろん僕もだよ。でもちょっと待ってくれ・・・確か知り合いの家も言ってたけど、こんな内容なのに、本当にこんな金額で良いのだろうかって・・・除霊もちゃんとしてもらえたのかって心配していたくらいだから、心配ないと思う。」
坂下の一言で、多少心配事が消えた。
続く