2007-11-30
きつね憑き 29
「・・・・・・」
私は少し考え事をしていた。
なぜなら・・・おそらく神社からは、必ず連絡があるだろうからであった。
ここのお嬢さんに憑いていた狐の力を考えたら、必ずいい仕事をするだろうから・・
その時、自分はどう対処すればいいのか。
2匹の妖孤を相手に、勝ち目があるのか。
そして私が懸念するのは、場所がお稲荷神社になる事だった。
相手の土俵で相撲をとることになる。
「悪かったの・・・井口さん。」
しおらしく阿黒さんが頭を下げてきた。
「いえ・・・阿黒先生が悪いんじゃないんですよ。話を聞いたら、他に2人も狙われているとの話・・・・自分の所の子供だけ助かったじゃ・・・こんな職業の人間ですが、子供の親として同じ心配をさせる訳にはいかないもので・・・私の考えに、阿黒先生が答えてくれただけです。すみません・・・でも井口先生・・・そん時ゃ自分たちで何とかします。先生を危険な目に合わせたりしませんよ」
ここの社長(おやっさん)が申し訳なさそうに言った。
「・・・・・・・・」
それでも私はまだ答えなかった。
「井口さん・・・おやっさんの言う通りです。俺らで何とかしますから、この場は楽しんでください。お願いします。これじゃ時間を引き延ばすために宴席を作ったみたいになっちまいますが・・・そんな作為はありませんでした。それだけは信じてください。」
河野さんがおやっさんを見ながらそう言った。
私は目の前のビールを一気に飲み干した。
それを見て河野さんはじめ、おやっさんも若い人達も、がっくり頭を下げた。
きっと私の行動が、一気飲みしてさあ帰ろうと言うポーズに見えたのだろう。
「井口さん・・・帰るの?」
龍門が私の顔を覗き込みながらそう言った。
私は大きな声で・・・焼酎が飲みたいな。それも芋焼酎を!」
そう言って空のコップを差し出した。
呆気に取られているみんな。
「おいおい・・・いいのか?井口さん?」
阿黒さんがびっくりして聞いてきた。
「もう少し飲みたい気分なんですよ。それじゃなきゃ・・・怖くて・・・ね。」
最後の ね の部分はにっこして言っていたと思う。
最大の強がりだっただろう。
「はい!芋ですね?おい!家にあるか?なきゃすぐに買って来い!!酒屋が閉まっていたら、飲み屋に掛けあってすぐに買ってこい!!」
おやっさんの一声に、2人の若者がすっ飛んで行った。
続く
2007-11-28
きつね憑き 28
「兄は井口さんを、今でも相当意識しているようです・・・よく井口さんの話を聞かされます。でも今回は兄から急に電話があり・・・ちょうど阿黒さんから電話をもらった後だったんで・・・相当やばいのかなと・・・兄がよろしくと言っておりました。井口さんの前に再び顔を出せる自信をつけた時には・・・と言っておりました」
「そうか・・・龍門が僕を助けろと・・・あいつらしいな・・・・」
驚きとともに、何だか嬉しくなった。
「そうだよ・・・井口さん。あんたには不思議と同業者が引かれるんだな・・・俺達はもともとつるむのは嫌う人種であり、仕事なんだ・・・それなのに・・・な。不思議だよ。」
阿黒さんが神妙な顔でそう言った。
確かに私もそう思っている・・・・しかし
心強い援軍がいた・・・
河野さんが何か言いたそうな顔でこちらを見つめていた。
「河野さんたちは、私より腕力が強く、度胸も満点だから、怖くはなかったんじゃないですか?」
私は笑いながら言った。すると・・・・
「俺達は、刃物やチャカが通じる相手には強いかも知れませんが・・・あの手の相手には・・・・全くでした。しかしあの腕力・・・お嬢さんの筋力を超えた力でした・・・驚きです。」
私はその答えに対して、改めて血の気が引いて行くのを感じた。 恐ろしい・・・・
確かにみんなの腕や手には、噛み傷や引っ掻き傷、それに打撲痣が無い者は皆無だった。
「この度は本当にありがとうございました。何とお礼を申し上げていいのか・・・しかし実のところ、私は信じていませんでした・・・今日までは・・・これを目にするまでは・・・それ自体もお詫び申し上げます。」
お爺さんが改めて頭を深々と下げてきた。
隣で、着物姿の奥さんも同じように頭を下げてきた。
その時ドアを激しくスイングさせて厳つい男が入ってきた。
「おやっさん!!」
どうやらここの社長らしい・・・
「井口先生!阿黒の親父・・・お嬢さん(龍門さん)・・・ありがとうございました。本当に・・・・」
怖い・・・感じだ。威圧感がタップリ。
「いま例の神社の方に若い者を数人置いてきました。何かあれば連絡が入るように言い聞かせてきました。」
「ああ・・・お嬢さんのお友達たちの事ですね?」
「はあ・・・さすがに友達も同じようになっているとしたらやばいと思いまして。」
私は依頼外の事なので興味無かったのだが・・・確かにあの稲荷の言っていた、みなをこの神社に連れてきた詫びさせると言っていた事を思い出した・・・
「わしが手配してもらったんじゃ・・・」
阿黒さんが申し訳なさそうに頭を掻きながら言った。
続く
2007-11-27
きつね憑き 27
長い宴会が始まった・・・
私は周りを見回した。
落ち着いて良く見ると、周りには意外と屈強な感じの男たちがたくさん席についていた。
そして半そでから覗くたくましい腕には・・・見事な絵が描いてあった。
「・・・・・・・・・・・・・・・」
これが私の気持ちだった。
目をギョロつかせて黙っている私に、河野さんが話しかけてきた。
「井口先生・・・今日は本当に失礼なお迎えをしてしました・・・許してやってください。」
そう頭を下げながらビールを注いで来る。
「いや・・・僕だけの力ではありませんよ・・・阿黒さんと龍門さんが居たから出来た仕事です。」
私は力なくそう答えた。
河野さんは私の話を聞いてから、龍門さんに向きを変えた。
「そう言えば貴方には初めてお会いしました・・・失礼ですが自己紹介していただけませんでしょうか?」
確かにこの質問は的を得ていた。
私もなぜ 彼女がこの家に駆け込んで来たのかは、不思議だった。
あの時はそれを考えている余裕がなかったから仕方ないが。
「あっ!はい・・・」
そう言って龍門小百合は座りなおし
「私の名前は 龍門小百合と言います。歳は21歳。巫女をやっていましたが、今はこの拍子木を使って、拝み屋をやっています。」
そう言って2本の拍子木を取り出した。
1本が少し斜めに切れて短くなっていた。
おそらくカマイタチのせいで切れたのだろう。改めてその威力を感じた。
「ここには阿黒さんから連絡もらって駆けつけました。それと・・・大阪に居る兄からも電話があり・・・急いで井口さんの助力をしろと言われましたので・・・・」
龍門さんは私をチラ見しながら言った。
「え・・・龍門が?そう言ったのか?」
意外な人物の話が出たのでびっくりした。
続く
2007-11-26
きつね憑き 26
「えっ?お嬢さんはもう大丈夫ですから・・・帰っちゃ駄目ですか?」
嫌な予感がした・・・
私は早く帰りたかった・・・
この家の雰囲気は、私は苦手だった・・・
ある意味霊の方が良いくらいに・・・
「そうおっしゃらずに・・・ここまでして下さったのに、このまま帰しするわけにはいきません。宴席を用意させて頂いていますので・・・どうぞどうぞ・・・阿黒さんからも・・・」
一番はじめに私を迎えにきた 河野さんがしつこいくらいに喰い下がってきた。
「井口さん・・・仕方なかろう・・・送ってもらわねば帰れんだろう?」
阿黒さんがクスクス笑いながら言った。
「阿黒さん・・・ここはどこら辺りなんですか?」
「そうかそうか・・・拉致られて来たんじゃったな・・・・あははは」
阿黒さんは今度は豪快に笑った。
「私も御馳走になってもいいんですか?」
龍門小百合が、とんでもない事を言ってきた。KYだ・・・空気が読めていない・・・
さすが龍門の妹だけある・・・なと思った。
「もちろんです・・・龍門さんですよね?貴方の働きも感謝しています。どうぞどうぞ!」
龍門小百合ははしゃいでいた・・・
まだ経験が足りないな・・・泣
「分りました・・・少しですよ?す・こ・し!」
私は観念した・・・少しだけ御馳走になって逃げ出すつもりでいた。
しかし・・・・
「さあ・・・こちらです。」
河野さんに通されたのは、30畳程の広さの和室だった。
そこに置かれた長いテーブルには、所狭しと料理が並んでいた。
端っこに座ろうとした私を、両脇から2人の若い衆に抱えられた。
「井口先生はこちらこちら」
あの少女の祖父である、貫禄のあるお爺さんに手招きされた。
私も軽い方ではない・・・それがいとも簡単に抱えあげられ、お爺さんの横の席に下された。
「井口さん・・・お子ちゃまみたい」
龍門さんが笑いながら手を叩いて笑っていた。
かたなしである・・・・
いわゆる上座であろう・・・これでは抜け出せない・・・参った・・・
程無くビールを注がれて乾杯になった。
ここからが長い長い・・・私にとって苦痛の時間になろうとは思ってもみなかった。
続く
2007-11-24
きつね憑き 24
時間にしてみれば5分程度だった。
「ふーこちらか完了しました。これで変な後遺症は残らずにすむでしょう。それに記憶も・・・・みなさんは?」
「こちらも大丈夫だと思います。」
龍門さんが額に汗をにじませながら顔を上げてそう言った。
「足の裏からどんどん抜けて行ったぞ。足の裏は、気を吸いこむ場所であると同時に、吐きだす場所でもあるんだ。これでOKじゃろう。」
3人の浄化作業は終わった。
「それではお嬢さんを何でもなかったように、部屋に寝かせてあげてください。」
「普通に寝かせて大丈夫でしょうか?」
お母さんが聞いてきた。
「ええ・・・もう先程までのお嬢さんではありませんから・・・ですから皆さんも奇異な目で見ないようにしてあげてくださいね。」
「よ・・・良かった。本当に良かった。」
あ母さんはお嬢さんの横にしゃがみ込み泣きだした・・・
あまりに衝撃的な状況に、精神的に相当消耗していたのであろう。
それはここにいる全員が同じ気持ちだっただろう。
「井口先生・・・阿黒先生、それから・・・龍門さんでしたっけ?どうぞお腹がすいたでしょう?少しお食事をして行っていただきたいのですが・・・・」
続く
2007-11-24
きつね憑き 24
時間にしてみれば5分程度だった。
「ふーこちらか完了しました。これで変な後遺症は残らずにすむでしょう。それに記憶も・・・・みなさんは?」
「こちらも大丈夫だと思います。」
龍門さんが額に汗をにじませながら顔を上げてそう言った。
「足の裏からどんどん抜けて行ったぞ。足の裏は、気を吸いこむ場所であると同時に、吐きだす場所でもあるんだ。これでOKじゃろう。」
3人の浄化作業は終わった。
「それではお嬢さんを何でもなかったように、部屋に寝かせてあげてください。」
「普通に寝かせて大丈夫でしょうか?」
お母さんが聞いてきた。
「ええ・・・もう先程までのお嬢さんではありませんから・・・ですから皆さんも奇異な目で見ないようにしてあげてくださいね。」
「よ・・・良かった。本当に良かった。」
あ母さんはお嬢さんの横にしゃがみ込み泣きだした・・・
あまりに衝撃的な状況に、精神的に相当消耗していたのであろう。
それはここにいる全員が同じ気持ちだっただろう。
「井口先生・・・阿黒先生、それから・・・龍門さんでしたっけ?どうぞお腹がすいたでしょう?少しお食事をして言っていただきたいのですが・・・・」
続く
2007-11-23
きつね憑き 23
下の階の騒動が、この部屋には何もない。
確かに下の状況を心配する気持ち一杯の、緊張した顔ばかりでしたが・・・
それにしても多い・・・こんなにたくさんの人が、上で待っていたとは驚いた。
「井口先生!阿黒先生!」
お爺さんが駆け寄ってきた。
「まずはお嬢さんから、きっちり稲荷の気を抜かなければ・・・時間を急ぎます。」
「おお・・・そうだな。龍門さんも手伝ってくれんか?」
3人の中では、龍門小百合さんが一番ボロボロになっていた。
着物の背中の部分がパックリ裂けていて、ブラジャーもなくなってしまっているらしく、胸の前を腕で覆っている。
「はい!私にもできる事がありますか?」
ボロボロになっている自分の姿が恥ずかしいらしく弱々しい声だった。
おそらく下での惨敗が、恰好が悪くて辛いのだろう。
「ええ・・・ありますよ。龍門さんの出来る事が・・・」
私は笑いながらこちらに来るように伝えた。
元気な顔になって走り寄ってきた。
「体を3等分して浄化しましょう。私は頭を、阿黒さんは足を・・・龍門さんは胸からお腹を担当してください。できますよね?」
「はい!」 龍門さん
「おう!出来るとも」 阿黒さん
3人は他の人を無視するように淡々ととりかかった・・・・
静寂の中、時間が過ぎて行く。
これほどの人数が居るのに、静かな空間だった。
たまに ごくっ と言う唾を飲み込む音が、異様に大きく聞こえるほどに・・・
続く
2007-11-22
きつね憑き 22
「さあ・・・こんな漫画みたいな非現実的な時間を終わりにしましょう。二人とも静かに見ていてください。」
「お前も一緒に社に連れて行ってやる・・・。」
私は稲荷の言葉を無視して印を結び始めた。
「天上の光 我に充ち溢れん・・・神の卷属たりとも、この世にやり過ぎは認める訳にはいかない。静かに時の狭間に引き下がられよ!」
ふーっ ふーっ・・・・
私は口を尖らせて大きく息を吐きだした。
それを自分の右手の甲に吹きかけ、その手の平を 額の輝きとともに稲荷に強く押し出した。
「クッ・・・クッ・・・力が入らん!体がぼやけてくる・・・な・何をした・・・俺を何所にやる・・・そんな事が許されるのか?俺は・・・俺は 稲荷ぞ・・・クッ・・・お・おのれ・・・・・・・」
稲荷の体がぼやけて、足元からぶれ始めた・・・そして静かに消えて行った。
唐突に静寂が訪れた・・・
ガクッと膝から崩れさる私を、阿黒さんと龍門さんが、両脇から支えた。
「井口!その額。やけどをしたように皮が剝けているぞ・・・」
「本当だ・・・凄い・・・あの光った場所だ・・・早く冷さなきゃ!」
「うん・・・力が入らないから、上に上がりたいけど、2人の力を貸して下さい。」
3人はもつれるように上のリビングに上がった。
リビングには、胸をカマイタチで切り裂かれた若者が、治療を受けていた。
そして もう一人お嬢さんが気を失ったままソファーに横たわっていた。
続く
2007-11-22
きつね憑き 21
「お・おまえ!何だ!この圧力は・・・」
今度は稲荷が後ろへ飛びのいた。
私は稲荷の問いかけを無視して
「阿黒さん!このお嬢さんを早くそちらへ」
私の足もとに横たわる、ぐったりしたお嬢さんを指差し言った。
「おう そうじゃったそうじゃった!」
阿黒さんも歳とは言え、体が大きい人だったから、一人でも小柄な女の子を軽々と持ち上げて階段の入り口まで連れて行きそっと下した。
「さあ・・・どうします?お稲荷さん。大人しく帰ってください。あの子たちには私からよく言っておきますので・・・ここは何とかお引きください。」
「なんと・・・この私に引けと?大そうな自信だな・・・」
「いえ・・・自信などありません。ただ貴方が相手だから必死なだけです。」
「お前の自信はその額の輝きか?」
「確かに力が漲っています。でも・・・過去に1回だけ経験がありますが、後がぐったりして大変なんですよ。生身の人間ですからね・・・」
「ふふふ・・・余裕のある奴だな。」
「悪いのはこちらです。お稲荷様は被害者です。しかしここから先・・・貴方は敵になります。」
「脅しか?そんな虚仮(こけ)脅しなど・・・」
「貴方は優しくないお稲荷様みたいですね」
「井口さん!私も加勢するわ。」
突然 龍門小百合が苛立ち私の前に出た。
「駄目だ・・・龍門さん!」
龍門の妹だけある・・・興味を持ったら抑えられないようだった。
長い拍子木をクロスに持ち、彼女のありったけの気合いの籠った気を吐いた。
部屋の中にその声の分だけビリビリとした震動が伝わってきた。
しかし・・・稲荷は低く構えて尾を振ってそれに答えた。
「ビシッ!」
弾けた音とともに、龍門さんは後ろへ飛ばされた。
「おっとっと!危ないとこじゃったな」
後ろに控えていた阿黒さんがキャッチしてくれたので、それ以上飛ばされずに済んだようだ。
「なんなの・・・このパワーは・・・」
「大人しく見ているんじゃ・・・井口に任せてな。」
阿黒は龍門を支えながらそう言った。
龍門小百合は、こんな時兄さんなら力になれたかしらと、ふっと考えた。
続く
2007-11-20
きつね憑き 20
眉間のチャクラが輝く・・・・
これを読んだ人は、ほとんどの人がアニメじゃんとか、あり得ない・・・と思うと思います。
私も確かにそう思います。
漫画の世界だと・・・・
それは当然ですよね。
私もいつでも光るものではありませんし、本当に緊急の時の本能的な時にしか ならないものだと思っています。(今でも)
ただ、お釈迦様や仏像関係・・・それからキリストさまなどの像や絵などに
仏像系なら必ず後ろが板状な物をしょっている感じに表現されていますし、キリストさまの場合なども、天使の輪や後光などのようにあらわされています。
ただし、これらは述べたように、頭頂のチャクラが輝いているのですが・・・
私のレベルとは遙かに違います。
最後のチャクラが頭です。
まあ・・・・信じてもらえない事も分かっていますが、お読みくだされば幸いだと思います。笑
ちなみにその色は・・・・白です。真っ白なストロボ状態をイメージしてください。
続く
2007-11-19
きつね憑き 19
「やり方を変えるだと?そんな気で何ができる・・・・」
稲荷は全く意に介さないようだった。
「一番最初に失礼な事をしたのは・・・この子たちだ。しかし もう良いだろう?とり憑いて、ここまでしたので十分じゃないのか?」
「十分じゃない・・・まだまだ足りん!無礼を働いた3人を、我らが社に呼び寄せ、償いをさせるまでは・・・」
「償い?どんな償いがあるのか?」
ここは気迫の勝負だった。
吹き付ける見えない風圧を感じつつ・・・
「ええい!面倒な人間よ。なぜ貴様にそこまで説明をしなければいけない!下がれ下がれ!!」
この時私はズボンのポケットに入れてきた、小さな・・・本当に小さなどこにでも売っているような数珠を出した。
それを右手に握りしめた。
稲荷の気が先ほどと同じように膨れ上がってきた。
2本の尾もまた・・・・
足元にはまだお嬢さんが横たわり、危険な状況は変わりない・・・
私は一気に稲荷との距離を詰めた。
真正面に出たのがかえって意表をついたのであろう・・・
稲荷の気が乱れた。
「お前は神ではない・・・ましてや神の卷属などでもない!ただの白狐だ!」
「なにお?きさま・・・・」
この時私も感じた・・・自分の額が熱いのを・・・・眉間の真ん中だ。
下腹を通り、みぞおちを通り、喉元を通り、いま眉間にエネルギーが流れ込むのを感じた。
これがチャクラだろう・・・
生涯で、2度目のチャクラの稼働だったであろう。
頭頂のチャクラが最高だとして、私の力はそのまだ一歩手前だったであろう。
しかし・・・これで十分だ。
眉間の輝くをみて稲荷は・・・・
「お・おまえ・・・」
そう唸った。
続く
2007-11-18
きつね憑き 18
目に鋭い怒気を滲ませていく・・・
「やばいぞ!!龍門さん!そっち何とかならないか!」
ドアの一番近くに居る龍門さんに叫んだ。
「井口さんが一番やばくない?!その場所は」
「うん・・・やばいと思う。でも・・・とにかく頼む!」
確かに稲荷に右手を突き出した状態で身動き取れない私が一番やばいのは事実だった。
その時だった・・・
「人間とは愚かな生き物よな・・・好奇心が災いする・・・・」
稲荷の先程まで真っ白だった体が、さらに輝くほどの輝きを増した。
その時になり私も初めて後ろに飛び離れた。
「気をつけろ!みんな。」
私は後ろに跳び、身を伏せた。
膨れ上がり2本の尾・・・・が振られた。
空気が・・・鳴る?そんな感じが一瞬した。
「ぐおっ!」
3人の若者たちの一番前に居た男がのけぞった。
カマイタチ・・・・本当にこのような現象があるものなのか・・・・
それも目の前で見た・・・そして感じた。
空気が鳴る音とともに・・・
のけぞった若者の胸の部分が、シャツとともにきれいに裂けていたのだった。
まさにパックリという表現が一番合っているような切れ口だった。
そして・・・驚いた事に、その出血量はわずかな事が不思議だった。
まるで切れた事に、傷口自体が気が付いていないのじゃないかと思うくらいに。
「い・・・いてえ・・・・冷たい痛さだ・・・いてえ・・・」
その若者は、やっと痛さを感じたのだった。
「阿黒さん!龍門さん!無事か?」
「何とかの・・・しかし・・・まあ驚いたぞ。」
「私も無事・・・ぎりぎりね。着物の背中だけは切れたみたいだけど・・・それだけ。心配ないわ。」
「止めろ!これ以上は。」
私は稲荷の前に立ちふさがった。
「俺もやり方を変える・・・」
そう言ったと同時に私は念気を右手から肩口に集中させ始めた。
「おう・・・井口の気が変わったぞ・・・・」
「本当・・・全く違う・・・なんて攻撃的な気なの?井口さんもこんな攻撃的な気があるんだ・・・・」
2人が驚くほどに、私の質が変わって行くのを、自分自身も感じていた。
攻撃的な念気に・・・
続く
2007-11-16
きつね憑き 17
真っ白な2本のしっぽを揺らしたお狐様・・・
「うーん・・・何か気押されるな・・・」
私は思わず呟いてしまった。
「本当・・・綺麗だわ・・・」
龍門小百合さんも呟いた。
「おい!そんな事を言っている場合じゃないぞ!!しっかりせんか 2人とも!!!」
阿黒さんだけはまともだった。
「お前たち・・・この愚かなる失敬な者たちの見方をするか?」
驚くほどしっかりした、重い口調で語りかけてくる。
「確かにこの人間たちは失礼な事をしてしまったと思います・・・お怒りはごもっともです。しかし・・・ここまで貴方ほどのお稲荷様がしてはどうかと思います。」
私も静かにそれに答えた。
「私に意見をするか?」
かすかに2本の尾が膨れたように見えた。
「いあや・・・これは意見ではありません・・お願いです。許してあげていただく方法をお聞きしたい・・・」
「許すとな?・・・許す・・・とな?」
じっと私の目を見つめてくる・・・真っ白な眼差し。
その時だった!
3人の能力者が、全神経をお稲荷様に向けていて気がつかなかったが・・・
「す・・・すげえ・・・・・」
この場所には不釣り合いな声が聞こえた。
「本当だ・・・初めて見たぞ・・・俺にも見える・・・」
「いるんだ・・・本当にいるんだ・・」
私たち3人は同時に慌てて声の方に顔を向けた。
ドアの入り口に立つ3人の若者・・・
「クッ・・・何をしているんだ!」
私はこの予想外の乱入者に、集中力を解いてしまった。
それは阿黒さんと龍門小百合さんも同じだった・・・・・
結界が破れた・・・それだけだった・・・しかし、その意味は2度目が難しい事を知っている者たちにとって、絶望的な意味を持っていた。
「下がれ!!馬鹿者ども!!」
阿黒さんの怒号にも近い叫びが飛んだ。
このくらいのお稲荷様なれば、普通の人間にも見えてしまっていた事が災いした。
迂闊だった・・・・
我に帰る3人の若者たち・・・
それを見据える追うなり様の眼が、一瞬で真っ赤に変わるのを私は見た。
続く
2007-11-14
きつね憑き 16
きつねのすぐ横に立つ・・・
何故か物凄い熱気を感じる・・・
有り余るパワーが、少女の体に異常を来さないうちに、何とかしなければと、私は焦った。
通常・・・いろいろな動物憑きはある。
しかし、こっくりさんで言われる動物・・・たとえば狐の場合でも、そのレベルの低級霊であれば、これほど苦戦はしないのです。
それらの低級動物霊の場合は、ほとんど言葉だけの恐怖を与えて、喜ぶ程度なのです。
「殺すぞ」とか「死ぬぞ」とか「呪う」などの言葉を並べるだけで、実際に何かをすると言う事はほとんどありません。
また今回のように憑依したとしても、力自体はそれほど強くないので、苦戦はしません。
しかし・・・今回のようにお稲荷さんに住みつくきつねの場合は、それなりの力が備わっているのと、むげに扱えない難しさがあるのです。
すべてのきつね憑きが今回のような戦いになると言う事ではありませんので、ご安心ください。
ちょうどコメカミのあたりに手を添える。
右手のひらを開き、それを左手で支えるような形で・・・
「龍門さん!もう一音色拍子木を打ってください!!」
「はい!強く打ちます!!」
ガコーン・・・・・・・・・・・・・・・
一瞬お嬢さんの体がブレを起こした。
「出でよ!写し身の魂よ。この子の体から・・・ 汝の体は汝のもの・・・強く願いし本来の魂よ・・・取り戻せ本来の姿を・・・・破っ!」
「おお・・・ぶれが大きくなっていくぞ!」
「ここから出してからが大事ですよ!気を抜かないで。」
私は2人に緊張の持続を促した。
「さあ・・・出て来い!本来の姿を我々に見せてください。」
その瞬間だった!カクンとお嬢さんの体が崩れ落ちたのだ。
まるで中身が入っていないぬいぐるみのような感じで、クシャッとなった感じだ。
そして・・・・その横に身を構える白いおきつね様・・・
尻尾は2本・・・だった。
続く
2007-11-13
きつね憑き 14
きつねとの会話にこぎつけた・・・
「貴方はこの子に何をしたい?何を望む?」
「何がし・・・たいか・・・この女・・は止め・・・なかったと言う・・うだけで、それほ・・ど怒り・・を覚えて・・・いない」
「じゃあ何故暴れる?」
「お・・前たちが敵・・対的な気をぶつ・・けてく・・るから・・・だ」
「私はあなたとは戦えない・・・戦いたくもない。退いてくれないか?この子の体から。」
「俺はこれか・・らこの女を、大島・・稲荷に連れて行く・・・そしてそこを掃除させるつもりだ・・・・間違ってはいまい」
「言っている意味は十分わかる・・・しかしこのまま行かせる訳にはいかない。ここで解放してもらう。」
「俺を倒すと言うのか?」
「ああ・・・そうだ。そのつもりだ。」
「・・・・・・・・・」
きつねは考え始めた。
「お前は強いか?」
「お前は他の二人も心配なのか?」
「いや・・・依頼されていいないので関係ないと思っている。」
「割り切った男だ・・・ボロボロにされる危険があるぞ!」
「自業自得だから仕方ない・・・」
「きさまは人を助けているのじゃないのか?」
「私は依頼者を・・・自分を信頼してくれる人だけを助ける。」
「それじゃあ・・・速やかに抜けてもらおうか・・・名は何と言う。」
「俺の名は・・・孤地(コチ)と申す。お主に名は・・・」
「私の名前は井口・・・貴方の動きを止めているのが阿黒・・・そして貴方の体を、その子の体から少しずつずらしているのが龍門小百合だ・・・」
「見事なコンビネーションだ・・・現代の人間が恐ろしくなってきたは・・」
「時間がない!急がねば・・・・井口先生」
龍門小百合が大きな声で伝えてきた。
限界が来たようだ。
「それじゃあ・・・私の技を見せます。抜けてください・・・」
「いやじゃ!」
「それじゃあ行きます!!」
ちょうど動けぬきつねの横に立った。
私は両手のひらを強く何度もこすりつけた。
熱を帯びてきた・・・
私の構えは月師の構えだ・・・・
「井口それは・・・中国の技だ・・・お稲荷様の故郷のね・・・行くぞ!」
続く
2007-11-13
2007年を感謝してパーティーを開きたいと思っています。
2007年も皆様に大変お世話になりました。
本当に皆さんに支えられているんだなと感じた一年でした。
そこで、まだ場所の選定はしていないのですが、2007 さよならパーティーを地味に送りたいと思うのです。
形式は私に何でも質問ありのサービス付きで、飲みましょう!食べましょう!宴会です。サイン付き・・・
会費制になると思います。
ところで・・・こう言うのを考えたのは初めてなんです・・・・
はたして参加希望者がいるのかどうか自体不明です。
12月の14(金)か15(土)のどちらかを考えておりますが、変更可能ですので・・・
参加希望の方がいましたら、希望日も添えてメールを返送ください。
ここのコメントに載せてください。
親睦会のようなパーティーにしたいと言う気持ちです。
よろしく!
とりあえず締切は今月末ですのでお願いします。
2007-11-11
きつね憑き 14
先程までより、何倍にも怒気を膨らませてきているきつね憑き・・・
不思議なものだ、見た目はまだ幼い顔立ちの高校生なのに、叩きつけて来るこの怒気は、完全に獣のものだ・・・
しかし・・・この子の本当の姿は、この見たままの姿なのだ・・・
辛いだろう・・・何故こんな目に合わなければいけないのか・・・
そう思うと、早く何とかして解放してあげなければと思った。
「行くよ!阿黒さん。龍門さん。」
「準備はOKよ!急ぎましょう。井口さん」
「そうだな!こっちもOKだぞ!井口さん」
「まず阿黒さん・・・もう一度狐の動きを止めてください!止まったら龍門さんの音叉だ!分ったね。さあ!」
一気に気合いを高めていく阿黒さん・・・
周りに居る私でさえ気押される程の強い気だった。
目に見えない鎖が飛び、きつねに絡みつく。
すると今度はそれを見計らったタイミングで、龍門さんの拍子木が鳴った。
カキーン!カキーン!!カキーン!!!
これが木の出せる音なのかと思うほどの響きだった。
確かに普通の人が鳴らせる音ではなかった。
その拍子木に、特殊な気を織り交ぜて鳴らして、内部を揺さぶる・・・
先程までの怒気を爆発させていたきつねの動きが完全に止まった。
ガリッ・・・ガリッ・・・
苦し紛れに床を搔き毟る爪の音だった。
「神の卷属たる汝が、何故にこの娘にとり憑いたのか・・・その訳を知りたい。」
「がが・・・っ・・・こいつら3人は・・・我々稲荷の祠に・・・た・・・ばこのすい・・がらを・・・入れ・・・た・・・おそ・・なえものを・・・乗せる・・・皿の・・・上にだ・・・許せぬ・・・そんな・・や・・つらは・・・ながね・・・ん・・あそこで人々の・・・安全を見守ってきた・・・・われ・・われにとっても・・・初めての暴挙だ・・・許せん・・・」
「それは・・・・う・・・ん。良くないな・・・それじゃあ この子の他にも2人が?」
「ああ・・・・そいつらにも・・・だ」
「一つ確認がしたい・・・この子はそのタバコを吸ったのか?」
「いや・・・この子は吸っていないし、捨てていない・・・だが一緒に居た仲間だから・・・だ。」
続く
2007-11-11
きつね憑き 13
木枠がお嬢さんの足もとに激突したように見えたが、我々の想像を超えたスピードを持っていたようで、当たらなかったのだ。
「危ない!阿黒さん!!」
まっしぐらに阿黒さんに向かうきつね憑き。
「何のこれしき! 剛毅散開 仏法剛鎖 身仏の力を借りた鎖により、汝の体を縛りあげたまえ!破・・・・・・っ!」
止まった・・・少しだけ・・・
その時だった、ドアの外で言い争う声が聞こえた。
「駄目です!危険ですから!」
大かた今の凄い物音を聞いて、上から河野さんか、和服姿のお母さんか、もしくはあの眼光の鋭いお爺さんが、心配して降りてきたんだろうと思った。
「井口先生!阿黒先生!小百合です!!入れてください。」
「小百合殿だと?なぜここに・・・」
阿黒さんもキョトンとしている。
「その人を通して下さい。大丈夫ですから」
私の一言で3人はすんなり通してくれたらしい。
「お久しぶりです。井口先生。」
「君は・・・確か」
「はい!龍門小百合です。兄がお世話になりました。その後にもお助けいただきました。」
この龍門とは、以前私がクラブで霊障害を徐霊した時(足首を握りしめる手シリーズ)に、私のライバルとして登場した龍門氏の妹だった。
兄はキリスト教徒で、妹は巫女・・・
まったく変わった兄妹だ・・・
「私は兄より使えますよ。」
そう言ってにっこり笑った。そして
「この狐は神道系です。ですから阿黒さんの能力では一時的に動きを止める事は出来ても、抜き去る事は不可能です。私と井口さんのタイプ向きのはずです。」
「そのようだな・・・勉強してきたな?じゃあ、準備はいいかな?」
「はい!」
そう言って龍門小百合は後ろ手に回した手に、拍子木の長いものを2本取り出して、顔の前で交差させた。
「こえが私の道具です。」
「よし・・・それじゃあ 阿黒さんは真中で一歩下がった位置に・・・私は右側に・・・小百合さんは左側に・・・」
V字のような体形になった。
そうこうしている間に、もう一人現れた異質の能力に、きつね憑きの興奮が更にましたようだ・・・
続く
2007-11-11
きつね憑き 12
3人の若者は、言ったとおりにドアを開けたと同時に両脇に速やかにどいた。
そのドアから部屋の中に入った私と阿黒さんが見たものは・・・
とても人間とは思えないほど釣り上った目と、異様なほど隆起し盛り上がった背中だった。
大きく右手を振っただけで、そこにあったであろう木枠が砕けた。
その部屋は使用用途の都合上、木枠の簡易な牢屋のような作りになっていたようだ。
しかし今の一撃で、その使用用途は用をたさなくなってしまったであろう。
砕け散る太めの木枠・・・
ガコーン!!音とともに大きな振動だった。
「大丈夫ですか!!」
ドアの外からあの3人が叫ぶ声がした。
「痛っ・・・・」
避けたつもりが、腕に木枠の一部の破片ががぶら下がっていた・・・
「大丈夫か?井口さん・・・ここはわしが!」
「いや・・・大丈夫です・・・痛いのは事実ですが・・・これくらいなら・・・痛っ!」
破片を取り払いながら言った。
「深くはなかったので大丈夫みたいです」
その頃お嬢さんの様変わりした姿のものは、木枠の外れた所から、外に出てくるところだった。
「面倒だな・・・外に出たら。」
私は阿黒さんに、お嬢さんの気を引いていてもらう事を依頼した。
「よし・・・分った。」
阿黒さんはそう言って一歩前に出た。
それに反応するようにお嬢さんが小黒さんに向きなおった。
阿黒さんも並の霊能者ではないので、お嬢さんも気を引きつけられた。
私はその時飛んで来て落ちていた木枠を拾っていた。
ごつい数珠を両手に、その両手を突き出して気を送っていた。
お嬢さんがその阿黒さんに向かって、苦悩の表情を浮かべながら、まさしく跳躍をしようとした瞬間だった。
私はその拾った木枠を、両手に持ってお嬢さんに投げつけた!
跳躍しようとしていた瞬間、その両足部分に木枠が激突した。
それと同時に私は一気に念気を集中して右手の手の平から送った!!
続く
2007-11-10
きつね憑き 11
私の前を3人の若者は階段を降りた・・・
彼らも何度かは降りた事がある地下への階段だろうが、今日ばかりは勝手が違うのだろう・・・やけに慎重だ。
念のために上の部屋へのドアは閉めてもらったので、今は薄暗い電球だけが頼りの明るさだった。
「着きました・・・すぐに開けていいでしょうか?」
大幹という若者が震えた声で聞いてきた。
彼らにしても極度の緊張状態なのであろう。
仕方のない事だった。ここのお嬢さんが相手であるし、そのお嬢さんが恐ろしい力の主に変貌を遂げてしまっているのは、実際に見ているから・・・
その証拠に、3人ともどこかしらに包帯や絆創膏を貼っている。
私は3人を手で制止て、阿黒さんを見た。
「阿黒さん・・・準備はいいですか?」
阿黒が和服の袖から、ごっつい数珠を取り出しながら頷いた。
この人の癖は、無口になる事だった。
「さあ・・・開けてください。そして開けたら念のために貴方達は下がってください。危険かも知れないので・・・」
私は真っすぐドアを見つめながら静かに言った。
「き・危険なら下がれませんよ・・・俺達・・・怒られます!」
命令は絶対服従らしい・・・
「いや・・・私たちからの命令です。邪魔になるから・・・ねっ!阿黒さん?」
「そうだ・・・邪魔になる・・・心配するな。」
阿黒は3人にそう言って笑顔でうなずいた。
実際はホッとしたように顔を見合わせた3人だった。そして頷いて・・・
「それじゃあ・・・開けますから・・・」
ガチャ!ギギーッ・・・・・
ドアが開けられた。
続く
2007-11-09
きつね憑き10
しばらく進むと洋間のような所に辿りついた。
20畳程の広いリビングだった。
そこには2つの扉があった。
「井口先生・・・この扉の向こうです。」
「この先の部屋は?」
私は和服姿の女性に聞いた。
「はい・・・このドアの向こうは地下室に降りる階段になっています。」
その時河野さんが割り込んできた。
「井口先生・・・地下室には窓が無いので・・・・それで一番安心かと思いまして。」
「確かに窓があると危険ですからね・・・でも都合よく地下室があって良かったですね・・・」
私はその地下室がどのような使われ方をしているかを少し考えた・・・
「まあ・・・仕事がら・・・いろいろ便利な部屋なもので・・・厳しい質問は止めましょう。」
私はそれを無視して言った。
「さあ・・・行きましょうか。阿黒さんついて来てくれますか?」
「行きましょう・・・ただし地下の部屋のドアを開けるところまで、若い人に頼みましょう。井口先生の変わりはいないので、極力危険は避けましょう。」
「そうですね・・・」
その時 それまで黙って様子を見ていたお爺さんが言ってきた。
「井口先生・・・道具などの準備はしなくてもいいのですか?粗塩や十字架や数珠・・・ロウソクやお線香・・・などでも」
軽装でこの家に到着したままの手ぶらの姿を見て、多少不安になったのだろう。仕方のない事かも知れない・・・そう言うものだと思っている人がほとんどだと思っている。その方が重みがあるのは確かだからだ・・・しかし私には必要ないし、なにも持っていない・・・この両手しか・・・
「ご心配無用ですぞ・・・おじじ殿・・・井口先生の場合は、わしとはちと違うのでな・・・」
阿黒さんが代わりに答えてくれた。
この手の説明は苦手で、面倒だから助かった。
「河野さん・・・3人程人を貸して下さい。」
「はい・・・任せてください。近藤と大幹と関口・・・お前たちが前を歩いてお守りしろ!分ったな。それから・・・下で見た事は忘れろ・・・それだけだ、行け!」
「はい!分りました。」
続く
2007-11-08
きつね憑き 9
きつね憑きでも二通りある・・・
ただの浮遊動物霊の場合は、低級霊として徐霊は容易だ。
こっくりさんなども、得てしてこの低級霊が絡む場合が多い。
それはきつねに関わらず・・・
しかしお稲荷さんの狐などは、神の卷属として、その力は相当なものであると同時に、徐霊したりしていいものではないのである。
そして重要な事は、そのお稲荷様が憑いたのであれば、相応の理由が有る筈だからである。
「これは話し合いの世界ですね・・・力技の世界ではありませんね。」
「何をおっしゃいますか・・・井口さんの最も得意とする分野ではありませんか・・・そこが私と違うところだ。私は力に頼ってしまい、最後の詰めが弱い・・・まあ だからしてこう言う世界の、有無を言わせない世界の仕事専門なのかもしれませんがね・・・私が先生を呼ぶことを望んだ意味が分りましたか?」
「はい・・・十分わかりました。」
そう言って二人は笑った。
「あの・・・すみませんが・・・娘を・・・助けてあげてください。この通りです。」
先ほどの和服姿の女性が、深く腰を折ってお辞儀をしてきた。
おそらく業を煮やしたのだろう・・・
確かにこの状況で、この笑顔は不安を煽ったのであろう。
「失礼しました。急がねばならない所を・・・でも、きっかけが掴めそうです。任せてとまで大見えは切れませんが、やってみます。案内してください。」
そこにはざっと25・26人程いただろう。
私とともに一斉に移動する状況は異様であった。
私は案内される間、みなの腕を見た・・・
みんな腕に奇麗な絵が描かれていた。
改めて失敗できないなとのプレッシャーを感じた。
や・ば・い・・・と 汗
続く
2007-11-07
きつね憑き 8
そこに立っていた河野さんが、稲荷神社の事を知っているらしい。
「あそこは○○稲荷と言いまして、伏見稲荷じゃありません。かなり古くからある稲荷です。何でも昔この近くにあった川が、良く氾濫をして多数の死者を何度も出したので、村人がそれを鎮めるために建てたそうです。」
「河野さん詳しいな・・・そうですか・・・これは私の知識不足でした・・・伏見稲荷様に申し訳なかったです。でも何故そこまで河野さんは詳しかったんですか?」
「私もよくお参りに行くんですよ・・・それで書かれている看板などを読んだりしまして・・・お恥ずかしい・・・こんな仕事の人間が手を合わせたりして・・・」
「ちょっと待てよ・・・お嬢さんを閉じ込めてあるところは?」
私は突然危機感を感じ叫んだ!
「さっきまで風呂場に・・・あっ!川の氾濫での死者・・・水・・・これはやばいですね!場所が悪い!」
河野さんも私の言っている意味が分ったらしく慌てた。
「だから荒れたんだ・・・水の場で。今は?」
「はい!奥さんが部屋に・・・相当大変だったようですが・・・でも確かに風呂場から出したら静かになったようです。グッタリと・・・」
「お稲荷様・水・雨・・・ここにつながるのか・・・どういう意味かまでは分からないけど・・・すべて水に関係するな・・・ちゃんとお嬢さんを見張っていてください。」
数人が慌てて走って行った。
叫ぶ私の肩を後ろからそっと叩きながら
「井口さんの考えがあっているようだな・・・さすがだ・・・」
「ありがとう 阿黒さん。でも分っただけでまだ解決はしていませんから・・・これからです。」
「そうだな・・・でも知っていると居ないでは、鎮めるためには大きな違いだ。俺達の仕事は、力だけでは通用しないからな」
阿黒さんも、私と同じような場面に巡り合っているから、腕力の無力さを知っているのだった。
続く
2007-11-06
きつね憑き 7
受け取った名刺に視線を落とした。
そこに書かれていた名前は・・・・・そしてもう一度その年配の顔を見た。
「どうりでどこかで見た方だと思いました。政治家の先生でしたか。」
「あはは・・・ここは私の息子ので・・・不肖の息子の表向きは土建業ですら・・・お間違いのないように・・・お願いします。」
これ以上詮索はするなと言う眼光であった。
「私は気にしませんよ・・・貴方はかわいいお孫さんを助けたい、孫思いのお爺さんですよね?」
「孫思いの・・・お爺さん・・・これはやられましたな・・・確かにお爺ちゃんだもんな・・・あはは。阿黒先生・・・なかなかですな?この先生は。」
「そうでしょう!肝も据わっていますよ。じゃなきゃ、この場に来ていませんし、霊なんかと戦えませんよ。なあ 井口さん」
「いや・・・怖いですよ。実は・・・私は事務所と聞いていたのに、来てみたらこんなに大きなお屋敷じゃあ・・・逃げられないから開き直っただけですよ。」
「井口さんらしい言い方だ。すぐに行きますか?」
「そのまえに・・・阿黒さん・・・貴方ほどの人が・・・どんな感じですか?」
「あれは・・・重度レベルじゃ相当高い憑依じゃな・・・」
「そうですか・・・この辺には稲荷神社はありますか?」
「稲荷か・・・」
「雨の日に帰って来てから・・・と聞いたもので、その帰り道に何かに触れたのかと思いまして。」
「稲荷・・・・ある!あるぞ!!伏見稲荷じゃ・・・」
阿黒さんは手を叩いて言った。
「やはり・・・伏見か。そこのお稲荷様か・・・強いとしたら、ただの動物霊とは思えないから・・・そう思って聞いてみました。」
「井口さん・・・わしも助勢しますよ。」
「そう願います。心強いですよ。」
「本当にそう思ってくれるか?嬉しいがの・・・」
「もちろん・・・今回は腕力はいりませんから・・・必要なものは純粋な念気です」
「そう・・・その我々の気とは種類の違う念気が必要なんじゃな・・・」
私は頷いた。
「じゃあ行きますか・・・河野さん 案内してください。」
廊下にいつの間にか人だかりができていた。そこに立つ河野さんを見つけ声をかけた。
続く
2007-11-04
きつね憑き 6
広めの庭に私の乗ったベンツが止められた。
すでにその庭には2台に車が止まっていた。
どちらも高級外車で、このような場にはいかにも・・・という感じがして、背筋が違う意味でピンとしてしまった。
どうも気持ちが弱いな・・・自分は と改めて思った。
「さあ・・・井口先生こちらです。」
夜だと言うのに、ライトの明るさでナイター球場のようだった。
「先客が?」
「はい!阿黒先生が、井口先生がお受けして下さったと伝えたら、吹っ飛んで来たようです。あともう一方は親父さんの父上です。」
「お爺さんですか?この家のお爺さんと言う事は?」
「いえいえ・・・まったく違う職業ですからご安心を・・・」笑
この場合の全く違う仕事と聞いても、安心できるほど私も馬鹿ではない。
この高級外車を見ただけでも、とても私の知っている普通の人ではないと思うからである。
しかし考えても仕方のない事だったから、家に入るしかなかった。
「井口先生がお見えになりました!!」
玄関で大きな声で河野さんは言った。
「あの・・・あまり大きな声で私の名前を言わないでください。影の存在ですから・・・」
私は少し困り気味に釘をさした。
「これは失礼しました・・・確かにあの声では外まで聞こえてしまいますね・・・あははは・・・」
この男は豪快な性格なのだろう・・・
どこか憎めない・・・しかしその眼は、物凄く鋭く、抜け目ない眼をしている。
すぐに奥の方から複数の足音がした。
若い男数人と、和服姿の女性が現れた。
「こちらが井口先生です。」
河野さんが和服の女性に紹介した。
「これはこれは・・・ご無理を申しあげてしまいまして・・・お待ちしておりました。」
丁重な挨拶をしてくるあたり、お母さんかと思った。
「さあ・・・こちらです。」
そう案内されたのは、長い廊下の先の和室の部屋であった。
そこには2人の恰幅のいい男の人が座っていた。
一人は着物を着た男で、私の顔みしりの 阿黒臣従 霊能者先生
もう一人はさっき説明を受けた、この家のお爺さんだろう・・・
黒のスーツを着た、75・6歳くらいの白髪目立つ男性だった。
「井口先生!お久しぶりです・・・」
そう言ってすぐに立ち上がったのは阿黒先生だった。
「驚くパターンのお出迎えでしたが、観念して拉致されました。」
私はそう言って笑いながら答えた。
もう一人の男性が立ち上がりながら名刺を差し出してきた。
「この度は失礼を承知のご無礼を、申し訳ございません。私の孫の事で・・・私はこう言うものです・・・」
名刺を受取り、その名刺に目を落とした私は驚いた・・・
続く
2007-11-03
きつね憑き 5
「阿黒先生が来てくれたのなら解決したんじゃないですか?人格的には好きではありませんが、こと 霊能力者としてはかなり力がある事は認めていますからね。」
「それが・・・阿黒先生も一目見て腕組みをして悩んでしまったんですよ。」
「阿黒さんが悩んだ?まだ何もせずの段階で?ですよね・・・・」
「はい・・阿黒先生が到着するまで、浴室に閉じ込めておいたのですが、阿黒さんが到着して浴室のドアを開けたら、お嬢さんは素っ裸で四つ這いになっているんですよ・・・さすがに親父さんのお嬢さんだから、若い者にも見せる訳にもいかず・・・
かといってその浴室に阿黒先生が入って行って・・・と言うのも、阿黒先生も危害を心配してはいる事を躊躇されてしまいました。」
「・・・それは確かに・・・でもそれなら私が行っても同じことではないですか?」
「いえ・・・話には続きがありまして・・・阿黒臣従先生も、切りがないと言い、若いもんを外に待機させて、私と2人きりで浴室に入って行ったんです。そして阿黒先生独特のやり方で経を唱え始めたんです。そしたら・・・」
「そしたら・・・・?経が全く効かなかった・・・と言う事では?」
「??何で分るんですか?怖いですね・・・井口さんは。」
「お経が何にでも聞くとは思っていません。まして動物霊ですから・・・」
「まさしく・・・そう言う有様で・・・こちらを挑発するように、両足を広げたり・・・陰部を曝け出したりと・・・姿形はお嬢さんですから、痛々しい感じがして・・・それ以上阿黒さんもストップしてしまいまして・・・」
「それは酷い・・・」
「阿黒先生はそこで考えた末に、井口さんなら・・・・と言いまして。井口さんなら全く違う方法でやるので・・・経じゃ駄目だからと言っていました。」
「違う方法・・・確かに私は経は読めませんから、私なりのやり方になりますからね。しかし・・・荷が重いな・・・阿黒さんは力がある人だから・・・その人が困るような事だとすると・・・きつい。」
「きついとは思います。しかし・・・一番きついのはお嬢さん自体のはずです。阿黒さんが言うには、時間を掛けると、正気に戻った時にショックのあまり自殺でもされかねないと言いました。だから・・・」
「僕のやり方だと一気に?そして大急ぎで浴衣でも着せれば、自分の醜態も分からないと・・・それはベストですが・・・そうか・・・阿黒さんは以前私がやった除霊の時に同席した事があったから、それで・・・」
「はい!お聞きしました。その徐霊をしていただいたお人が一晩意識を失っていて、翌朝何事もなく目覚め、まったく覚えていなかった・・・と。その方法が一番良いとおっしゃっていました。」
「あの時は力を入れすぎて、セーブしていなかったから・・・気を失ってしまったんですよ。そうか・・・普通にやると、すぐ意識が戻り、自分の醜態に気がつくからと言う事ですか・・・」
「そうじゃなくとも、お嬢さんの全身も切り傷や擦り傷・・・打撲痕の山ですから・・・」
その時運転手の若者が言った。
「そろそろ着きますが・・」
「先生・・・お願いします。何とか助けてやってください・・・お願いします。」
「・・・・・分りました。やりましょう」
車は大きな門をくぐり、広めの庭の中に入って行き停車した。
続く
2007-11-02
きつね憑き 4
河野と言うその男の人が、ルームミラー越しに、私の眼を見ながら説明をはじめた。
その眼は、眼力がある・・・
なかなか普通の人には出せない眼力だろう。
「実はこれらご案内するところは、○○区にあるとある事務所なんですが・・・はっきりと言わない方が良いかなと・・・ご理解ください。」
「私にはそんな事は興味無いし、この車のスモークじゃ、外もほとんど見えないから、どこをどう走っているのかさえ分からないから安心していいです。終わったらちゃんと送り返してくれればそれで良い」
「それはお約束します。いろいろと体裁があるもので・・・申し訳ない。今回見ていただきたいのは、俺らの親父さんの娘さんで、高校2年生の方なんですが・・・先々週の月曜日くらいまでは全く普通だったらしいのですが、その翌日の火曜日に、雨に濡れて帰られたそうなんです。それもいつもより遅く、19時を回った頃に」
「いつもより遅くって、いつもは何時ころ帰るんですか?」
「はい・・・大概 18時前には家に居るそうなんです。クラブっちゅうものにも入っている訳ではないらしく・・・だいたい同じ時間には帰宅していたらしいんです」
「でもその日を境にオカシクナッテきた・・・と言う訳なんですか・・・」
「夕食を奥様や弟さんと食べ終わって、お風呂の準備ができたと、奥さまが部屋を覗いたら・・・背中を向けたまま返事をせず、{ケコ・ケコ}としゃっくりのようなものを繰り返しているので、心配になり奥さまが肩に手を当てたら、なんとお嬢さんは鰺を一匹のまま口に咥えていたそうなんです。口の周りを血だらけにして・・」
ルームミラーの中の河野と言う男の眼が、この時にはじめて逸らされた。この商売をしている河野さんたちにとっても、相当おぞましかったんだろう・・・思いだすのも嫌だと言う感じだ。
「それだけですか?魚だけで貴方達はそんなに驚かないはずだ・・・」
「ええ・・・奥さまの悲鳴で、俺やこの武田が部屋に駆け付けたんです。そしたら・・・お嬢さんは魚を咥えたまま・・・なんと160cmほどの高さの箪笥の上に、四つん這いのまま飛び乗ったんです。まるでアニメか特撮を見ているようでした。」
「でもそれだけではきつね・・・に結びつけないはずですね・・・そこで阿黒さんに連絡をしたと言う事ですか?」
「いえ・・・その前に知り合いの医者に連絡したんですよ・・・そしたらその医者が霊の専門家の先生と言う方を連れてきたんです。」
「その人でどうだったんですか?」
「医者は腕を噛まれ、振りたくられ、壁に激突して腕を骨折してしまい、その霊の先生が何やら気功のようなものをぶつけたららしいのですが・・・体当たりして吹っ飛ばされてしまいました。」
「で・・・その霊能者がきつねと?」
「はい・・・あの腕力は動物の憑依だと・・・はじめは魚を咥えていたので猫かなと・・・あっ!すみません・・・こんな安易な事を考えてしまいまして」
「確かに猫ですね・・・私もそう思ってしまうかも・・・・」そう言って私は少し笑った。
「それからが事務所の中は大捕り物でした・・・若いのが3人がかりでも飛ばされる始末で・・・私でさえこの有様です・・・」
そう言って河野さんは腕をめくりクッキリと歯形が残る傷を見せた。
「完全なる動物憑依か・・・それもそこまでの力が出せるとなると・・・かなり深いな・・・・」
「はい・・・これはやばいと思い、阿黒さんに連絡を取りました。」
続く
2007-11-01
きつね憑き 3
「私は普段は仕事は選ばないようにしていますが、貴方方のような裏の社会の方たちと関わる仕事は・・・選ばせて頂きたい」
「分ります・・・阿黒先生もそう言うだろうとそうおっしゃっていました。しかしこの案件に対してやはり井口先生の名前を何度もおっしゃられていました。ですから調べさせて頂きました。先生の事を・・」
「まさかそこに止まっている車でお出迎えですか?」
そこのは黒の大きめのベンツが止まっていた。明らかにスモークが張り巡らされて、堅気の人ではない人か、芸能人しか乗らないような車が止まっていた。
「う・・・ん。今から降りていきます。」
「無理行ってすみません・・・・」
「ええ・・・無理を言ってますよ、十分に」
マンションの下に降りて行った私を、3人の若い人が出迎えた。私よりも頭一つ大きな男たちだった。
あまりここの周りをうろちょろしないでください・・・住みにくくなる。」
私は無愛想に言った。しかしその言葉は全く無視されてしまったようだ。
「こちらです・・・さあ」
そういって例のベンツの後部座席に乗せられてしまった。それも私の両脇に男が挟むように座る。
「これでは拉致に見えますね・・・なんか嫌だな。」
「そうおっしゃらずに・・・煙草でもいかがですか?おい!先生にお勧めしろ!!」
前座席の助手席に先ほどの男が座り、振り返りながら若い男に言った。
どうやら一番偉いようだ。
私はこの段階で腹を決めた。
早く終わらせて、早く解放してもらおうと考えた。
「自分のタバコがありますから・・・」
そう言って私は自分のタバコを吸った。1mgの軽い奴だ。
「さあ・・・到着するまでの間、詳しく状況を話してください。」
「はい・・・分りました。」
続く
2007-11-01
きつね憑き 2
その頃私はまだサラリーマンをしながらこの仕事をしていました。
その日も仕事から帰った私は、部屋で着替えをし、ソファーに腰を下しました。
それから一呼吸をついたかどうかの時に、家の電話が鳴ったのです?
時間は9時ころでした・・・
「はい・・・井口ですが?」
何気なく私は電話に出ました。すると・・
後で考えれば多少ドスの効いた声だったのですが、その時はただ低めの押し殺した声だなと思っただけでした。
「井口先生ですか?」
「はい・・・どちら様ですか?」
「先生はきつね憑きなども・・相談に乗っていただけるのでしょうか?」
「ええ・・・でも、名前を名乗ってもらえない人に、それ以上はお答えできませんね・・・」
私は少しむっとして、この失礼な電話の主に冷たく言い放った。
「これはこれは失礼いたしました・・・私の名前は河野と申します。」
「河野さん・・・ですか。」
「無礼な私にお怒りですか?申し訳ございません。お許しください。」
「いえ・・・機嫌は多少治りました。」
「やはりなかなか太い方だ・・・おっと失礼しました。」
「ところできつね憑きについてでしたね?」
「はい・・・実は私の知り合いの方が、どうも・・・そのきつね憑きと言うものになってしまいまして・・・手に負えなくなってしまった・・・のです。」
「きつね憑きになったとは、どなたが判断したのですか?」
「あはは・・・実はですね・・・先生で3人目なんですよ・・・霊の先生は。」
「その先生たちの判断ですか・・・ではその先生たちが手に負えなかったのでは、私の出る幕はありませんね。そこまで私は優秀ではありませんから・・・」
「そう言われると思いましたし、お聞きしていました・・・先生の性格を。」
「確かに私に電話をしてきたと言う事は、私をどなたかに聞いた訳ですよね・・・誰ですか?」
「・・・・・・」
「そうですか・・・では失礼します。これから食事ですから・・・」
「ちょっと待ってください!気が短いですね・・・本当に・・・」
「少し空腹なもので・・・」
「分りました・・・言います。阿黒臣従(アグロシンジュウ)先生と言う方です・・・」
「阿黒?・・・ああ・・知っています。阿黒さんが私を?でも阿黒さんは確か・・・普通の人は見ていないはずでは・・・」
「はい・・・ですから私はその普通の仕事の人種ではないのです。」
「と言いますと・・・そうですか・・じゃあ 明日でもお話を聞きましょう。」
私は一旦話を切り上げようとした。すると
「いえ・・・そうおっしゃると思いましたから、もうお迎えに来てしまいました。」
「えっ?来た・・・ここに?」
「はい・・・窓から下を見てください。私が手を振っていますから・・・」
私は慌てて窓を勢いよく開けて
そこには上を見上げながら携帯を片手にしている男が立っていた。
「なるほど・・・だから私の帰宅に合わせて電話が鳴ったわけだ・・・」
「申し訳ございません・・・」
「と言う事は・・・今から?ですか」
「はい!そのつもりでこんなご無礼をしてしまいました・・・お許しください。」 続く