「もう許してくれ・・・わしを覚えてるかな?まだあの頃はわしも子供じゃった。そうそうあの頃書生の兄ちゃんと言って、良く石拾いに、河原へ連れて行ってくれた・・・優しい源四郎兄ちゃんだった。
その兄ちゃんに爺ちゃんたちは、とても恐ろしい事をした・・・わしはあの時の光景を、夜中におしっこに起きた時に目撃してしまったんじゃ・・・だが怖くてなにも言えんかった。翌日 この石の近くに行って、爺さんにこっぴどく叱られてしもうた。
源四郎兄さんを助けてあげる事も出来なかった。」
清兵衛老人は、涙を流しながら語った。
「嘘だ!お前はその後にこの家の当主になった筈なのに、この岩を取り除き、供養の一つもしてくれなかったじゃないか?出来た筈なのに。」
心の底から叫ぶような気がぶつけられて来た。
風圧として・・・これにはさすがに霊能力のない親子にも、禍々しい怒りの気として感じられたように、顔を背けた。
焦げ臭く・・・熱い気の塊。
「確かに源四郎兄ちゃんの言う通りじゃ・・・
やらなかったのか、やれなかったのか・・・わしにも分からん。何故なんじゃと。わしが屁たれなんじゃろう・・・結局自分が大人になった時にはそのような風習は無くなって、その段階でこの岩を取り除いた時に、白骨が庭の中から現れたら・・・そう思ってしまったのかも知れない。わしが悪いのじゃな。」
「・・・・」
「可愛そう・・・」その時にボソッとお嬢さんがつぶやいた。その目から大粒の涙を流しながら。
「何を泣く!泣いたとてわが憎しみは衰えぬぞ!」
「違うの・・・可愛そうと言ったのは、貴方のこんな長い苦しみを、まだ誰にも復讐として、遂げられてないみたいだったから・・・貴方は優しい人だったのね?その優しい人だから、ずっと石の下で、脅かすだけしかして来なかったんじゃないかと・・・
そんな優しさが分かったから・・・私の命で足りるの?」お嬢さんは唐突な提案をした。
「俺が優しい・・・俺が優しい・・・」石の下の男は、自分の両手を見つめながら繰り返した。
「その通りじゃ!源四郎兄ちゃんはとっても優しい兄ちゃんだった!」老人がまるで子供の頃に帰った様に叫んだ。
「・・・・・・」男はなおも自分の両手を見つめていた。
「やれやれ・・・私の出る幕はないのかな?」
続く