「この子の父親の命では、不満ですか?」
私の唐突な答えに、一同は静まり返った・・・
「おぬし・・・何を言っておる?この子の父親の命だぞ?それをその子供の前で・・・」
清兵衛老人が慌てて言った。
「ですが、この家代々の当主でなければいけないのですよね?源四郎さん?」
「当主・・・俺は分からなくなってきた・・・今まで何を願って恨みを抱き続けて来たのかさえ・・・本当に命だったのか?命を取ればそれで私が成仏できるのか?本当にそうなのか?違うように思える。
俺は何が望みなんだ・・・今日この日まで、熱くたぎるような憎しみの炎は、何だったと言うのか?」
男は壊れ始めていた・・・憎しみの意味を見失いかけていた。
「憎しみは何も生まない。貴方が成仏するための方法と、その後の貴方に対してのお詫びの気持ちを含めた供養・・・貴方に対して、生きている人間たちに出来うる、最大の償いではありませんか?」
「しかし・・・それでは俺の今までの気持ちが。」
「ですからここの父親の命をお連れ下さいと言っているのです。ただ・・・今すぐには止めていただきたいのです。」
最後の言葉にまた一同は私を見つめた。
「今すぐにではなく、もう少し・・・そうです。悲しいかな貴方も分かるとおり、今の当主は、まったくと言っていいほど、信仰心がありません。そんな現当主でも、この子には成長するためには必要なのです。経済力として・・・だからこの子がもう少し大きくなって、貴方の供養をしっかりと、お金を掛けてでも出来るようになる頃まで、待ってあげて欲しいのです。それは私が見張ります。虫が良い話かも知れませんが、今のこの親子では、満足な供養は出来ないと思うのです。この子がりっぱなこの家の次の当主になる時に、その全ての心を掛けた供養をさせて頂きましょう。そういう意味です。」
「何故私が今の当主を連れて行かなかったのかと言うと、価値がないんだ・・・信仰心が無ければ、償いの気持ちも薄い・・・その点この子供には、純な信仰心が宿っている。宗教とかではなく、単純に今の貴方のよな人の導きに対しての信仰心だ。分かるんだ・・・私にも。分かった・・・待とう。信じよう。お前たちを・・・お前たちの気持ちを信じて」
「ありがとう。源四郎さん・・・必ず。そして今出来うる限りの償いの形も忘れずに作ります。ねえ○○さん・・・」
私は振り返り、お母さんに説明をした。
「はい・・・分かりました。私が必ず!」お母さんは力強く約束をしてくれました。
続く