この家には確かに古い立派な蔵がある・・・祠の横に。
この中に何があるのだろう?
「清兵衛老人、この蔵の中にこの家に悪さをする奴らの秘密があるのですか・」
「そうじゃ・・・この源四郎兄ちゃんたちは、この家にそんな細かい悪さをする為にいたんじゃないからの。むしろ彼らが居たおかげで、蔵の中におる者たちも、あまり好き勝手には悪さは出来なかったのかも知れぬ。」
「そうですか・・・源四郎さんの狙いはタダ一つ、この家の衰退・・・でしたものね。分かりました。
これ以上源四郎さんたちを、この世の毒気に当てたくはありませんから、早めに浄化させて頂きます。
天空に、あの世との入り口である亜空間を作り上げますから、そこから速やかにお昇り下さい。そして再誕の時を願って・・・」
「うん・・・ありがとう。私の亡骸がまだあの岩ノ下に眠っているだろうから、何かの折にはその亡骸の始末はよろしく頼むよ。」書生は初めてにっこりと笑った。
「始末などという言い方は適切ではありませんね。丁重に供養させて頂きます・・・です。」私も笑って返しました。
その時です。後ろで私が笑っている姿を見て、この家の幼い次期当主であるお嬢さんが
「先生・・・源四郎さんは今ここにいるのですか?
この辺かな?」と言って私の横に来ました。手には可愛い花が握られていました。
「今はこれしか出来ませんが、許してください。井口先生の言うとおり、必ずお母さんと約束は守りますから、安心して下さい。そして・・・ありがとうございます。」そう言うと、手に持っていた花を、そっと地面に置き、深々とお辞儀をしてから、お母さんの所へ戻った。
「エヘへ・・・良かったんだな、これで。井口先生とやら・・・ありがとうな。やっと人間らしい心で死ねる・・・そんな感じがする。本当にありがとう。」
「良かったね。僕も嬉しくなるよ・・」気がつくと地面にあった花が消えていた。
「浄化される前に一つだけ教えておく事がある。僕はここに長くいたから知っている、この家の災いの根源が、さっき僕が言った、この家の代々の当主達の、信仰心のなさなんだ・・・そんな奴らがむやみに祠を作り、井戸を粗末に使い・・・災いの元は、神なんだ。蔵の中の者たちも、その気に押し出されるようにして、出て来ているのを感じていた。
井口先生・・・まず祠と井戸だ!そこを何とかしてからだ・・・それを教えたかった。」
「ありがとう。大事な事ですね。神か・・・そこを何とかしてからでなければ、静まる気配は無しか・・・助かりました。」
「さあ 送ってくれ・・・さようなら。」源四郎は自由になった手を、胸の前で組、目を閉じた。
「○○○○ ○○○○」・・・・
この時、親子はフラッシュのような光が、小さくパッと光ったのが見えたそうです。
それが点々と・・・上空のある一点に吸い込まれていくような感じがしたそうです。
続く