その重々しい声の方の方向には、逆行の光を背中に背負った、猛々しい男の人のが立っていた。
顔は光の加減ではっきりとは見えない・・・
「貴方の怒りに踏み込んだのは私です・・・お許し下さい」
「・・・・・・(無言)」
「私はこの家の主に代わってお詫びに参りました。」
「この家の主?それは違うだろう・・・たわけが!この家の主がそんな男ではないから私は怒っておるのだ・・・お前が頼まれてきたのは、その主の奥方と娘だろ?嘘をつかなくとも分かっておる」
「はい・・・その通りでした。申し訳ございません」
「しかし・・・奥方と娘が何度謝って許しを請うても、私の怒りはその主によって向かっておる」
「やはり駄目ですか?」
「お前は何が言いたい?」
私はここで、神様にお詫びの条件を出した。
「まずこの祠を早急に立て直します。それから井戸もきっちり作り直し、水を絶やさぬように致します。
それから・・・それらが終わり、ここの娘さんが大学まで入ったら・・・」
「入ったら?」神は強く復唱してきた・・・
「この罰当たりなここの今の主の、死をもって償わせます」
「なに?お前は何を言っているのか分かっておるのか?」
「はい・・・分かってます。しかしここの主の命は、誠に申し訳ございませんが、神である貴方様に与えると言う形ではありません。ただ・・・結果的に命で償わせます」
「先客に譲れとな?」
「はい・・・先客がいます。この家に昔、人柱として生き埋めにされ成仏できぬままに今日まで苦しんできた男がいます。源四郎さんといいます。その人は貴方と同じように、いえむしろそれ以上にこの家を呪ってきました。しかし先ほど潔く成仏の道につかれました。その男に私は、ここの主の命を差し出す約束をしました。ですから・・・先客です」
「私以上だと・・・」
少しやばいかなと思ったが、後の祭りであった。
「うわはっはっはっ・・・聞いておったぞ・・・私を誰だと思っている?あの男の事は、私も知っていた。不憫な奴とな・・・そうか・・・あの憎悪に満ちていた男が上がったか・・・うーん」
「あの源四郎さんと言う人も、ここの今の主である男には、価値がないと言っていましたが、この奥方と娘さんに賭けてくれました。そして何もせずに上がってくれました。ですから約束を守りたいのです」
「ここの奥方と娘は納得したのか?」
「はい!納得済みです。しかし大学までのあと数年間だけはお待ち下さい・・・今の彼女たちでは、まだこの家は守りきれません。これは私からもお願いします。」
急に空気に静寂が起こった。もう神の荒ぶれた気は掻き消えていた。
「ご老人、老婆、それに君も怖がらずに出ておいで、もう僕のボディスーツは必要ないようですから」
スッと・・・私の周りにあった霧が晴れた。
「お前たちも良くやるな・・・」神様が少し笑った声を出した。
「失礼しました・・・私はここの家の第6代当主だった、清兵衛と申します。この血筋の出来が良くない事は、十分分かっています。私にも責任があります」
老人が突然そう言うと、地べたに額を擦り付けるように土下座した。
続く