ガチャ・・・・
先ほどの事があるので、私も踏ん張りながらドアを開けた。
「シーン・・・」
今度は静まり返っていた。
「二度目はありませんか?そうでしょうね・・・普通はあの一回で十分追い返し効果はありますから」
「先生?主人は居なくなったのですか?」
徳丸さんは不安げな声で後ろから聞いて来た。
この時の不安は、ご主人への恐怖なのか、悲しさからなのかは、私には分からない。
「いえ・・・確かにこの中に居ます・・・気はまだ感じますから・・・ただご主人は、先ほど廊下で話していた内容をお聞きになっていましたから、もう乱暴は止めたのでしょう。」
私は部屋の中から目を離さずに、レーダーを張った状態で受け答えをしていた。
さすがに先ほどのような目には、私も合いたくなかったので・・・
「徳丸さんのご主人・・・逃げないで下さいね。私は貴方と話がしたいのです。奥様もそれをお望みですから・・・いかがですか?」
私は出来る限り、相手を落ち着かせるように気を配りながら、話をした。
「奥さん・・・上がらせていただきますよ」
「靴は脱がなくても良いですから、そのままお上がり下さい」
奥さんは先ほどの手形を覚えているので、何時でも私が逃げられるようにとの配慮でそう言ってくれたようです。
「そんな失礼な事は出来ませんよ・・・それこそご主人に叱られてしまいますからね・・・」
誰に答えたのかは分からない・・・おそらく奥に居る徳丸さんのご主人・・・悲しきシェフに答えたのだと思う。
「さあ・・・行きますか」
そう言うと、私は靴を脱いで上がった。
続く