シェフが大切にしていた箱
今その箱を、シェフの前に開いて置いた。
見えないはずの奥さんと宮下さんも、思わず息をのんでしまいそうな、重苦しい空気。
皆が見つめる箱・・・そこだけを見つめて目を離せない・・・
もしかするともう一度・・・ご主人を見ることが出来るのではないかとの期待する目・・・
友人を、なんとか助けてあげたい、伝えさせてあげたいと思う、友人の宮下さんの気持ち
「さあ・・・この箱の中に、貴方が伝えたい何が入っているのですか?」
「この・・・この箱の中に・・・妻に・・・・」
言葉を発する事に慣れていないようで・・・
途切れ途切れの言葉になってしまうもどかしさを
、本人が一番感じている筈である。
その時シェフはしゃがんで箱の中に手を入れた。
「ガタッ」
箱の中に手を入れた時に音がした・・・それをシェフの奥さんが聞いていた。
「今 音がしました・・・聞こえました。主人が音を出すような事をしたんですか?」
「はい・・・今そこの箱の中に手を入れたのです。それでふたがずれて音が鳴ったのです。」
私は状況を説明した。
「そうなんですか・・・やっぱり聞こえたんですか・・・私にも」
再び泣き出した奥さん
それを見つめる・・・・シェフ
あきらかに先ほどまでの顔と違ってきている。
目が・・・優しさを取り戻しているのだった。
続く