「徳丸さん・・・目を閉じて下さい。そして心から願って下さい。自分の魂が、これ以上迷わずに浄化される事を・・・・そして家族が幸せに鳴る事を」
最後の私の言葉に、徳丸さんはニヤッと笑いながら・・・
「先生・・・キザなセリフを、よくそんなに簡単に言えるな?でも・・・今はそんなキザなセリフが・・・・凄く嬉しい・・・さあ 先生行きましょう!」
「うなずいて、私は奥さんの方を見て、ご主人が上られます」と伝えた。
「はい! 貴方・・・本当にご苦労様。ゆっくり休んでくださいね。最後まで私たちを思ってくれた気持ち・・・凄く嬉しかったよ・・・さようならって言わないよ。またね・・・貴方。」
そう言って奥さんは手を合わせて、深くお辞儀をした。
隣にいるご主人の友人の宮下さんも、泣きながら手を合わせお辞儀をした。
「俺もお前の家族を守っていくからさ・・・心配するな!徳丸!!」
そう叫んだ!
それからどれほどの時間が経過したのだろう・・・
ほんの数分?それとも十数分?
しかし そんな時間の経過も忘れるほど、それぞれの思いの深さであった。
「ご主人は無事に上られましたよ・・・」
私がそう言った瞬間に、棚の上に飾ってあったご主人も写った、家族の写真がタイミングよく、パタッと倒れたのであった。
さすがにこのタイミングには、私ですらぎょっとなってしまったが、奥さんの一言で、その場の空気は救われた。
「本当に成仏したんだわ・・・あの人らしい。最後の気使いです。」
「そうですね・・・律儀に挨拶をしていったようですね。」
「先生・・・本当にありがとうございました。これでみんなが救われました。本当にありがとうございました・・・・」
「うん・・・良かった。」
こうして悲しきシェフの怨念・執念は。間違った形ではなく、人間の心を取り戻して、成仏する事ができたのだった。
この世に残す未練は・・・計り知れない物があるものです。
それを忘れてはいけないのかも知れない・・・
完