「お前は間違えているぞ・・・」
男は井口の言葉に反論した。
「俺は・・・俺は確かにこの家に・・・?いや こんな小さな家ではない・・・もっと立派なお屋敷だった・・・俺は空襲から命からがら逃げてきた。でもどうしようもなく腹が減って腹が減って・・・
つい空襲で非難してしまって無人だと思って、このお屋敷の台所に入ったんだ、そうしたら運悪くここの主人が帰ってきて・・・俺はどうせ空襲で長くは生きられないと思っていたから、大人しく縄で結わかれたんだ・・・そうしたらここのお嬢さんが出てきて、(お父さん、この人も必死で生きているんだもん、可愛そうよ。どうせ私達だって長くは生きられないんでしょう?だったらこの人にご飯を食べさせてあげて?)とそう言い出したんだ・・・ここのご主人もその言葉で、急に優しい顔になってな・・・あの時代はみんなが鬼になってしまっていたんだ・・・生き抜くために・・・飯を食わせてもらった所で、俺は主人の男に言ったんだ。俺はどうせ死ぬのなら、何かお役に立って死にたいと・・]
井口はここまでの話を、小声で4人に伝えていた。
「ここに残って良いですかと?貴方たちが非難したした後、俺みたいなこそ泥が、火事場泥棒が来ないように見張って痛いんです。もちろん入り口に鍵を掛けて下さい。俺は庭にいますから・・・この椅子をお借りしますぜ・・・と言ってな・・・」
「二人はそんな・・・ここは危ないから、貴方も逃げなさい・・・今日の事も何かの縁ですから、生き延びて下さい・・・いえ・・お互いに・・・と言ってくれたんだが・・・・」
「それでは縄に結わかれたのは、初めの部分だったと言うわけか?」
井口が男に言った。
「ああ・・・結わかれたのは事実だ・・・でもあの二人は優しかった・・・」
「何か・・・この人可愛そう・・・」
裕子が悲しそうな顔で言った。
「うん・・・そんなに悪い人ではなかったのかもね」
宮部典子が言った。
「そのあと・・・二人と反している最中に空襲警報が鳴ったんだ!」
男はそう言って耳に手を当てて、かがみこんだ。
死してなお、恐怖を覚えるサイレンなのだろう。
続く