「俺の名前?・・・そんな事どうでも良い・・」
男は井口の質問に答えたくないと思うほど錯綜していた。
「ここがお前のいた、あのお屋敷ではない事が分かったかな?それでもここを守る必要があるのかな?それが聞きたい。」
「そうか・・・守る人も、守るお屋敷も無くなってしまったか・・・・俺は・・・どうしたらいい?教えてくれないか?」
「だから名前を教えろと言っているだろう?」
「名前を教えたら、教えてくれるのか?」
「ああ・・・教えてやる。」
「俺の名前は・・・三上雄三・・・という。」
「そうか・・三上さんか・・・これでやっと貴方を名前で呼ぶ事が出来る・・・三上さんがここで死んでから、62年も経つんですよ・・・長い年月ですよね?」
「62年も?そんなに・・・では、もしかするとあのお嬢さんも生きていたら・・・生きていたら当時17歳くらいだったから、今生きているとしたら・・・80歳弱か・・・決して不可能な歳ではないな・・・あの戦火で生きていれば・・・」
「三上さん・・・実は三上さんの死んだ年に、戦争は終わったんですよ。ですから病気にでもなってなければ、生きている事の可能性も出てきますよ。」
「えっ?・・・そうか。本当だな・・・生きていれば・・・会いたい・・・確かめたい。それを・・」
三上はうつむいてボソッと言った。
それと同時に浴室内に立ち込めていた熱風も、物凄かった臭気も消えていた。
「井口さん・・・教えて下さい。答えを?」
宮部典子が浴室の入り口まで来て言った。
他の3人も同時にうなずく。
「大体の井口先生の話で、内容は読めましたが、詳しくこの・・・そう三上さんの言っている事を知りたいのです。」
坂下も入り口付近まで来て言った。
「分かった・・・」
そう言って井口は三上の求めている事を、更に説明をした。
続く