両足で、嬉しそうに歩く幹夫くんの姿を見て、私は最後の仕上げに入った。
「幹夫くん いいかな?」
「はい・・・もう・・・もう痛くないんですね?右足・・・両足で歩く事・・・出来ると思っていませんでした。ありがとう・・・」
「幹夫くん・・・お姉さんのお陰だよ。随分頑張ってくれたんだよ。」
「はい・・・見てましたから知ってます。姉さんにもお礼を言いたい。」
「そうだな・・・それじゃ、この写真たてを動かせるかな?君の手で・・・」
「やってみます・・・・出来そうです。少しなら」
「それじゃ、君の手で、その写真をお姉さんの方に向けてくれるかな?」
「はい・・・・・」
「遠藤さん!今の話を聞いていたと思いますが、幹夫くんは、貴方のお礼を言いたいと言って、今 必死に写真たてを、貴方の方へ向ける事によって、自分の存在と気持ちを伝えようとしています。見ていてください。」
「そうなんですか?・・・幹夫ったら・・・」
「頑張れ!幹夫。」
お父さんが叫んだ。
「幹夫!!もう少しよ・・・幹夫!」
お母さんも叫んだ。
その時写真たてが、僅かだがスッと動いた。
「やったね・・・幹夫くん。上出来だよ。」
「幹夫・・・本当にここに居るのね?ごめんね・・・時間が掛かっちゃって・・・もっと早く気がついて、井口先生にお会いしていたら・・・本当にごめんね。」
また写真たてが、今度はカタカタと震えた。
「幹夫くんは、そんな事は無いよ・・・感謝しているから・・・と言っていますよ。とても穏やかな顔だ。」
「ありがとう・・・・幹夫・・・それに井口先生」
「さあ・・・これから幹夫君を天上界に上げます。一度のチャンスですので、へまは出来ません。よろしいですか?」
「あの・・・幹夫が、私に最後に欲しかった物は何だったか 聞いていただけますか?」
お父さんが最後に声を張り上げて聞いて来た。
「実は・・・幹夫が死んだのは、もうすぐ誕生日だという矢先だったもので・・・プレゼントの話も・・・・途中だったんです・・・だから、せめて仏壇に飾ってあげたくて・・・間が悪くてすみません。」
「それ。。。大事な事ですよ。お父さん・・・幹夫くん・・・最後に君が欲しかった誕生日プレゼントは何だったのかな?」
私は幹夫君に向き直り、聞いた。
「僕がねだったのは・・・プラモデル・・・それもオートバイの・・・手しか使えなかったから、プラモデルでオートバイを作って、夢の中で遠くまで走っていけるかな?と思って・・・」
「お父さん・・・オートバイのプラモデルが欲しかったそうです。かっこいいヤツをお願いしますね」
「は・・・はい!オートバイか・・・そうか・・・歩く事ではなく、オートバイか・・・すぐに必ず」
お父さんは大きくうなずいた。
続く