遺書で残した手紙まで燃えてしまい、最後にしたためた気持ちを伝えられないまま悔しさを・・・継続してしまい、ご主人に会いに行ったらいつしか別の女性と再婚されてしまった・・・とは・・・
あまりにも空しすぎる結末・・・
でも・・・この女性の心は優しかったのだろう・・・復讐に行くことも可能だっただろう・・・その女性を呪う事も憑依する事も可能だっただろう。
しかしそれをせずに・・・あの寺の中に閉じこもった。
自殺をした事への後悔に呪われながら。
「貴方の悔しさは分ります。どうしますか?あの家を呪いますか?私は今回は止めません・・・少しご主人には同情出来ない部分もありますから・・・ね。」
「もう・・・もう良いんです・・・これ以上空しくなりたくない・・・と思っています。」
「諦めていいんですか?」
「ええ・・・薄情な男だったんです。あのまま生きていても・・・きっと同じ結末になったと思うんです。だから・・・」
「うん・・・よく決断できましたね。今の状態で苦しみ、悲しみに明け暮れているよりは、生まれ変わって笑顔を取り戻しましょう。」
「はい・・・これが・・・これが望みだった・・・だから来てもらいたかった。貴方に・・・井口さん・・・」
「はい・・・この井口はあなたに呼ばれました。しかし気持ち悪かったですね・・・吐かせて頂きました。あはは・・・」
「ごめんなさい・・・みなさんにも同じ苦しみを与えてしまったようで・・・本当にごめんなさい・・・」
「少し待っててください。今までの会話を、ここに居るみんなに説明して、貴方が誤っている事も伝えますから・・・みんなもすっきりするでしょうから・・・貴方の存在が悪霊のままでは忍びないですからね」
「あ・・・ありがとう・・・」
そうして私はかいつまみながら説明した。
「いま・・・ここにいらっしゃるんですか?」
誰ともなく聞いた。
「はい!この辺りですよ。」
私が指さした一角に向かい、一斉に手を合わせた・・・
「事情はお聞きしました。私たちは気にしていません・・・どうか楽しい生活に生まれ変わってくださる事をお祈りしています」
「うん・・・うなずいてくれているよ・・・涙も流している・・・」
「先生・・・お顔は?元に戻られたんですか?」
「いや・・・やけどはまだ治っていない・・・でも禍々しさが消えたから、やけどをしていても清らかな顔をしているよ」
「顔は元に戻るんですか?」
「ああ・・・成仏すれば治るさ・・・」
「良かった・・・それなら・・・笑顔で送れますね。」
私は悲しき女性に向きなおった。
「お聞きになりましたか?みんなあなたを送りたいそうです。良かったね。」
「相談相手もいなかった私にも、この世の最後になって・・・お友達が出来たのね。
もっと早くお友達がいたら・・・自殺なんかしなくて済んだのにね・・・暗いのね、私・・・」
「それももう終わりさ・・・店に行くつもりだったけど・・・貴方の気持ちを考えたら、この場であなたを解放して、浄化して上げた方がいいですね。」
「お願いします・・・ご迷惑をお掛けしました・・・ありがとう・・・みなさん」
「みんな・・・この一点に気持ちを込めてあげてくれないか?そう・・・ここ・・」
みんなが各々のスタイルで手を合わせた。
「あの・・・私を除去徐霊しないで頂けて、ありがとうございます。もう一つ・・・私が浄化された後、あの寺の中を見てください。渡井の結婚指輪が落ちている筈です・・・その指輪よ、あの家の塀際にそっと埋めていただきたいのです・・・いえ・・・呪う訳ではありませんからご心配なく・・・ただ結婚指輪を返したいと思っただけですから・・・」
そう言って今の彼女にとっての最大級の笑顔を作って微笑んだ。
「分りました・・・責任を持って・・それでは始めます・・・」
続く