その頃私はまだサラリーマンをしながらこの仕事をしていました。
その日も仕事から帰った私は、部屋で着替えをし、ソファーに腰を下しました。
それから一呼吸をついたかどうかの時に、家の電話が鳴ったのです?
時間は9時ころでした・・・
「はい・・・井口ですが?」
何気なく私は電話に出ました。すると・・
後で考えれば多少ドスの効いた声だったのですが、その時はただ低めの押し殺した声だなと思っただけでした。
「井口先生ですか?」
「はい・・・どちら様ですか?」
「先生はきつね憑きなども・・相談に乗っていただけるのでしょうか?」
「ええ・・・でも、名前を名乗ってもらえない人に、それ以上はお答えできませんね・・・」
私は少しむっとして、この失礼な電話の主に冷たく言い放った。
「これはこれは失礼いたしました・・・私の名前は河野と申します。」
「河野さん・・・ですか。」
「無礼な私にお怒りですか?申し訳ございません。お許しください。」
「いえ・・・機嫌は多少治りました。」
「やはりなかなか太い方だ・・・おっと失礼しました。」
「ところできつね憑きについてでしたね?」
「はい・・・実は私の知り合いの方が、どうも・・・そのきつね憑きと言うものになってしまいまして・・・手に負えなくなってしまった・・・のです。」
「きつね憑きになったとは、どなたが判断したのですか?」
「あはは・・・実はですね・・・先生で3人目なんですよ・・・霊の先生は。」
「その先生たちの判断ですか・・・ではその先生たちが手に負えなかったのでは、私の出る幕はありませんね。そこまで私は優秀ではありませんから・・・」
「そう言われると思いましたし、お聞きしていました・・・先生の性格を。」
「確かに私に電話をしてきたと言う事は、私をどなたかに聞いた訳ですよね・・・誰ですか?」
「・・・・・・」
「そうですか・・・では失礼します。これから食事ですから・・・」
「ちょっと待ってください!気が短いですね・・・本当に・・・」
「少し空腹なもので・・・」
「分りました・・・言います。阿黒臣従(アグロシンジュウ)先生と言う方です・・・」
「阿黒?・・・ああ・・知っています。阿黒さんが私を?でも阿黒さんは確か・・・普通の人は見ていないはずでは・・・」
「はい・・・ですから私はその普通の仕事の人種ではないのです。」
「と言いますと・・・そうですか・・じゃあ 明日でもお話を聞きましょう。」
私は一旦話を切り上げようとした。すると
「いえ・・・そうおっしゃると思いましたから、もうお迎えに来てしまいました。」
「えっ?来た・・・ここに?」
「はい・・・窓から下を見てください。私が手を振っていますから・・・」
私は慌てて窓を勢いよく開けて
そこには上を見上げながら携帯を片手にしている男が立っていた。
「なるほど・・・だから私の帰宅に合わせて電話が鳴ったわけだ・・・」
「申し訳ございません・・・」
「と言う事は・・・今から?ですか」
「はい!そのつもりでこんなご無礼をしてしまいました・・・お許しください。」 続く