ドアの前に立つお嬢さん。
「あたし・・・あたし、みんなに迷惑をかけたみたいで・・・まだ頭の中がボーッとしていて、よく思い出せないんだけど・・・でも・・・みんなに迷惑を掛けた事はすごく感じる・・・ごめんなさい」
「井口さん・・・」
阿黒さんが目で語りかけてきた。
私は立ち上がり、そのお嬢さんの前に立った。
「井口と言います。貴方は何も気にしなくても良い・・・少し頭の中の靄を消してあげるから、少し頭を触らせてね?」
「はい・・・」
驚くほどに素直だった。
パニックになる前に、少し頭の中をまとめ、鎮めるために頭の中に気を送った。
「これで・・・楽になるよ。」
私はお嬢さんの頭から手を放しながらそう言った。すると・・・
「私・・・井口さんと言う名前を、何度も何度も夢の中で聞いた気がするんです。井口さんが助けてくれる!ってそう夢の中で思っていました。」
「そう・・・それは正夢かな?そして君はいまこうして立っている。無事にね。」
「何日も前から・・・意識が薄れて行き・・・みんなの声が遠くで聞こえていて・・・そうだ・・・狐?狐が怖い目で私を見ていた・・・夢の中でずっと。」
「今はその怖い狐はいないよ・・・安心して。」
こうして見ていると、本当に先程までの怪力が想像つかないくらい華奢だ。
「そうだ・・・友達が・・・美佐江と雄二君が・・・そう・・・狐は・・・あのお稲荷さんに行った時からだから・・・あの二人も・・・」
「ほう・・・そこまで分っているんだ・・・それでも落ち着いているな・・・大したものだ。」
「私には皆さんが居るから・・・でもあの二人には守ってくれる人達が居ない。」
「お稲荷さんの記憶があるかい?」
「はい・・・あります。」
「君たちはあそこで何をしたのかな?」
「はい・・・お稲荷さんにある狐の石像に、バッグを掛けて・・・狐の首にぶら下げて・・・それで話し込んで・・・ごみも散らかして・・・それから・・・バッグを下した時に・・・・」
「下した時に?どうしたの?」
「あの・・・狐の耳が折れて・・・ポテッと落ちちゃったんです・・・その落ちた耳を、雄二君がやばいからと言って、賽銭箱の中に入れちゃったんです。証拠隠滅とか言って・・・大変な事をしてしまった・・・本当に。怒られても仕方のない事をしてしまった・・・・」
私はみんなを振り返った・・・
みんなも呆然としてその話を聞いていた。
「それなら怒られて当然だわ・・・」
和服姿のお母さんが溜息交じりに言った。
「どうりで・・・いたずらレベルであそこまでするとは思えなかった・・・やはりな」
阿黒さんが同じく溜息をついた。
「うん・・・悪いのはこちらか・・・ですね?」
私は自分に言い聞かせるように言った。
孤地(コチ)と言う先ほどの狐の事を考えながら言った。
少し心がざわついた。
続く