「しかし このままの状況で、この部屋には長居は出来ません。肉体的な疲労と精神的な障害が、普通の人には、いや霊にもきついと思いますので・・・」
私はみんなに同じように伝えた。
「私たちなら平気です・・・もっと一緒に居させてください。」
奥さんが私の腕を強く掴み そう言った。
「○○・・・俺が悪かった・・・でも俺も、女房も・・・お袋も・・・付き人の○○ちゃんだって・・・それに多くのファンもお前を忘れてなんかいない・・・」
ご主人が 前に出て来て話した。
「ありがとう・・・私・・・女優 ○○ ○○として記憶の中で生きられるのね?みんなの中で生きられるのね?」
「そうよ・・・私なんか歳を取って行っちゃうけど、○○ちゃんはずっと綺麗な時のまま・・・羨ましいくらいよ。」
奥さんも笑いながら答えた。
「タイムリミットが来たようです・・・私の力ではここまでです・・・申し訳ない」
薄れて行く姿のまま、女優 ○○ ○○はとてもまぶしい笑顔を見せた。
さっきまでの搔き毟ったえぐれ後もすっかり消えて・・・映画の中で見せた笑顔で
「ごめんね・・・ここまでで許してもらえるかな?」
私は 妹さんに頭を下げた・・・
その私の肩をそっと触れながら
「井口さん・・・ですよね?本当にありがとう。私を見つけてくれる人に会いたかった・・・私 永遠に孤独のらせん階段の中を上り下りを繰り返していました・・・途方もなかった・・・見られる事を喜びと思って生きてきた人種が、誰にも見られなくなる辛さを知りました。たとえそれが写真展でも、再放送でも・・・どんなに幸せか・・・私には良い兄がいます。そして良いお姉さんがいます。お兄ちゃん・・・これからも昔みたいに、私のプロディースお願いしますね。」
「おう!任せておけ!!」
「そうよ!お兄ちゃんは凄いプロディーサーだから大丈夫よ。」
ご夫婦は力強く言い切った。
「それじゃあ・・・行きますか?」
私は妹さんに向きなおってそう言った。
「はい・・・お願いします。」
胸を張って晴れやかな顔だった。
こんな清々しい顔を見れるなんて思わなかった・・・来て良かったと思う。
「それでは・・・・」
それから3分ほど沈黙の中を、ゆっくり回りながら昇って行く・・・まるで舞台で、透明のらせん階段を昇って行くようだった。
「終わりましたよ・・・・妹さんは、死んでも尚・・・ずっと女優だったんですね。
見られることが生きがいの職業。それなににまったく逆の、誰も見てくれない 気が付いてくれない世界で苦しみました。
これで彼女は、美しいままで写真展を応援してくれるでしょう・・・・」
「死んでも・・・なお 女優・・・か」
「彼女が、忘れられないように努力しなくっちゃね。私達も・・・」
「そうです・・・お二人がまず 芸能界で消えていかない存在でいなくてはいけませんよ。」
「こりゃあ 手厳しいですね・・・さあ 明日から一層の努力しなくっちゃな?」
ご主人の顔に迷いはなかった。
続く