「私は・・・ただあそこに帰りたかっただけなんです。こんな所に居たくない。死んだのなら受け入れる・・・家族が待っている処へ・・・帰りたい・・・」
そう言って黙り込んだ・・・
「じゃあ、約束は守ってもらえますね?私が貴方の魂をこの車から解放します。そして事故現場に行って魂を浄化させます。そうしたら貴方はこの人たちには危害は加えない・・・それでいいですね?」
「き・危害か・・・そう思われていても仕方のない事か・・・実際 俺は一人に危害を加えた訳だから・・・いつのまにか自分の事ばかり考えて・・・人に危害を・・・あの私を轢いた奴と同じになってしまっていたんだな・・・申し訳ない・・・本当に申し訳ない・・・情けない・・・」
「私はその危害を加えられた者の妻です。でも・・・怒ってはいません・・・だから心配しないで・・・」
近藤さんの奥さんが鼻をすすりながらそう言った。
「そうおっしゃっていますよ・・・。ちなみに貴方のお名前と事故現場を教えてください。じかにお宅の住所を聞けば早いのかも知れませんが・・・」
「井口先生・・・そうですよ。住所を聞いて家族の方に知らせましょうよ。我々で・・・」
小暮さんがそう言ってきたが、私は静かに答えた。
「もし・・・私たちが家族に伝えに行くとして・・・どうやって?話の切っ掛けは?
まだ未解決事件なんですよ、この事故は・・・そこに我々が被害者にここの住所を聞きましたじゃ・・・家族や警察はどう思いますか?まだ日本では認められていない霊能力者の言葉を聞くどころか・・・いつの間にか犯人として疑われてしまうのが現実です。だから・・・だから彼には申し訳ないが、そこまで携われない・・・悲しい現実です。」
私の言葉を弱気な発言と捉えられるかも知れないが、リスクは冒せなかった。
国家権力に立ち向かうだけの強さは持ち合わせていない・・・今の私には。
「そうですね・・・無理はしなくても良いです。私は帰れれば・・・名前は毛利利治(仮名)と申します。○○県○○市○○です。自宅はそこからすぐです・・・」
「分りました、毛利さん。私の出来る事は全力でやります。そしてその後・・・そこの現場に行きます。待っててくださいね。それでは・・・」
続く