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乗り捨てられた放置自動車 30(最終回)

2008-03-07

本当に人通りの少ない道路だ・・・
これが深夜では目撃者もおそらく・・・
看板には確かに被害者は2人と書いてある。

被害者のその時の洋服の写真も載っている。
白いシャツに紫のカーディガン。
「先生・・・間違いないですね、ここで・・本当に書いてある通りだ・・・あの時先生に聞いた女の子像だ・・・」
小暮さんのご主人が少し興奮気味に言った。
昨夜の恐怖が、相当脳裏に焼き付いていたのだろう。
「これだけ人がいなければ線香をあげましょう。」

2束のお線香に火を点けて、全家族の方が数本ずつお線香を置いて行く。そして手を合わせる。
私はその間に毛利さんとあの女の子を探した・・・
ちょうど横断歩道角にその毛利さんが立っていた・・・頭を軽く下げて・・・
あの子は?どこに・・・・・
いた・・・恐らく飛ばされたのだろう、少し離れた街灯の下に立っている。
「道橋さん・・・少し花とお線香を持って私についてきて下さい。」
「は・はい・・・」
私はその女の子の立つ街頭下にきた。
「道橋さん・・・ここに・・・」
「分りました」
そこに花束と真新しいお線香の煙が広がった・・・
「昨日のおじさん?あたし・・・やっぱり死んじゃった見たい・・・ここ・・しっているもん・・・」
「もう冷静になれたね?そうだ・・・ここで君は・・・車から動けなかった・・・それを解放して、ここに連れて来て成仏させてあげる為に今日は来たんだ・・・」
「こんな無音で・・・孤独な場所にはもう居たくない・・・だから・・・」
「分っている・・・もう終わらせよう・・・犯人は捕まるように、情報提供は警察にしておくからさ・・・君はこれ以上苦しむ事はない・・・いいね?」
「うん・・・お願いします。」
ぺこりとお辞儀すると、頭の傷が痛々しく私の目に飛び込んできた。
そして私は毛利さんの方を見た。
「毛利さんもこちらに来て下さい。これくらいの距離なら動ける筈ですから」
その時になって全家族のお父さんお母さんが集まって来た・・・その中には今日退院した近藤さんのご主人も加わっていた。
「毛利さん・・・ここに貴女と同じ車に跳ねられたお嬢さんが居ます・・・見えますか?」
「はい・・・薄らと・・・」
「今見えるようにしてみます。」
私は特殊な印を結び、念気を膨らませた。
「おお・・・可哀そうなお嬢さんだ・・・まだ若いのに・・・」
「私にもおじさんが見える・・・おじさんもあそこに居たの?」
「そうだよ・・・どうやら君と同じようにね・・・もうおじさんも疲れたよ・・・君は?」
「私も・・・痛いのはいや・・・怖いのもいや・・・もう普通に死にたい。」
「井口さん・・・貴方は言った・・・私たちを成仏させてくれると・・・本当に出来るのですか?」
「はい・・・お二人の気持ちが同じようなので・・・やってみます。」
「お願いします・・・パパやママの所へ行けるのね?」
「そうだよ・・・そして伝えるがいい・・・自分がこの家に居る事を・・・」
2人は頷いた・・・
私は全家族に簡単に説明した。
「すまなかったね・・・貴方たちの気持ちをすぐに分かってあげられなくて・・・許して欲しい・・・」
近藤さんのご主人が、代表して答えた。
「井口さん・・・みなさんに伝えてください・・・本当に子供達には危害は加える気は全くなかったと・・・あとこの方には申し訳のない事をしてしまった事も・・・許して欲しいと・・・」
私は再度 毛利さんの言葉を伝えた。
「ところで・・・最後に聞いておきたいんだが、君の名前は?」
「私の名前は牧野 洋子です・・19歳・・・」
「そうか・・・それじゃあ・・・毛利さん・牧野さん・・・未成仏霊から、動ける成仏霊に変えます・・・」
特別な大きなアクションはない・・・
それが私のやり方だ・・・
しかし・・・仕事は必ずやる。
「終わりましたよ・・・みなさん」
「そういえばさっきまでもやっていた物が無くなった・・・本当に行ったんですね?」
これでここでの仕事は終わった・・・
彼ら2人の霊は、改めて四十九日を過したのち成仏の路に進むだろう・・・

後日 警察の方から連絡があったとの事。
ここでの僅かな目撃情報にあった、車種とカラーが同じだったの事でした。
警察力も馬鹿にならないものです・・・あとは犯人が捕まる事を願って・・・

               完

Posted by kiyoman 02:01:38 │Comments(3)TrackBack(0)

Posted by ezzo at 2008-03-12 03:30:19

下らない質問だったのに、丁寧にお答えくださって
ありがとうございました。

簡潔でわかりやすく、目から鱗な気分でした。
確かに自分がそんな状況にいたら、辛くて寂しくて仕方ないです。

愛する身内や親しい友達なのに、どんなに訴えても誰も答えて
くれない。自分を失って流してくれる涙を、ただ見守るのみ。
誰も、自分を見ない。同じような存在もまったく感じられない。
たまに自分を感じる人がいたとしても、気のせいで片付けられるか
面倒ごとはごめんだとばかりに、そそくさと立ち去られ、残された
自分はぽつんとひとり。

…書いてて本気で涙にじんできました(笑)

また、自分の中で霊=未成仏霊だという思い込みというか、枠の
ようなものもあったので、その点も目から鱗でした。
知識として知っているはずなのに、成仏霊も未成仏霊も、認識
としてはなぜかごっちゃで一緒くたになっていたようです。

きっと、全然違うものなんですよね。

長々と大変失礼しました。重ねて、ありがとうございました。

Posted by 井口です at 2008-03-09 11:51:48

ezzoの質問に簡単にお答えします。
未成仏同士は 交流は出来ません。
また 死してその後に生きているような日常会話などが、霊同士で出来たとしたら、死の世界の意味もあまりなくなってしまいます。
居やすい場所だったらまずいですよね?笑

寂しく辛いから 成仏の路へ行きやすい・・・
そう言う事だと思うといいですね。

Posted by ezzo at 2008-03-09 01:28:22

今回も悲しい、でも最後は悲しいながらも安心できた事件でした。
ひき逃げの犯人、出来たら自首してほしいものです…。


ところで、ここでお聞きしていいものかドキドキしながらの、
質問です。


今回の件で、霊同士はお互いを認識できないことを知りました。
(読み間違いならすみません)
しかし、どんな霊同士でもそうなのでしょうか?

例えば、自分の死をある程度諦観と共に受け入れた霊が
たくさん集まる場所(そんな場所があるのかどうか不明ですが)
で、霊同士が世間話を交わすことはないのでしょうか?

「2か月前に病死しました新参者です、よろしくお願いします」
「あこりゃご丁寧に、しかしわたしはぼちぼち成仏しますので
 失礼します、あそこの髪の長い方がこの辺は詳しいですよ」

みたいなのってないのでしょうか?
…アホらしくてすみません。


生きている人間でも自分がいっぱいいっぱいな
時は、周囲に目を配れない=周囲の状況やひとが見えないってことが
ありますよね。
勝手な想像ですが、お互いを認識できない霊というのはもしかしたら
そういう状態の霊なのだろうかと思いまして…。

ホント、くだらなくてすみません。

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言霊の伝言師

言霊の伝言師
名前 井口 清満
性別
自己紹介 霊関係の仕事に携わっていますが、中身はいたって普通の人間です。
どちらかというと、明るくてポジティブな人間です。
皆さんの期待しているような格好をしていませんし・・・笑
趣味 映画鑑賞
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居住地 東京都
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バナナ・あんみつ・お肉系・・・
ピーマンは大っ嫌いです!!

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