「しまった!」
私は焦った・・・・そして部屋の入口を見た。
そこには乙部家の家族が立っている。
しかしその心配も必要なかったようだ。
まるで何かに押し返されるように後ずさる宮坂権造。
その後ずさった向こう側には、左手で右手首を握りしめ、右手の平をかざした乙部家の繁夫お父さんが立っていた。
本人にはこの霊は見えていないだろうが、異様な雰囲気と、気の圧力を感じたのかもしれない。
おそらくは、今でもこの時の自分の手柄は分ってはいないかも知れない。
「なんだ・・・さっきまでとは違う。
この先の場所が見えない・・・幕だ・・・真っ白い幕が張ってあるようだ」
そうか・・・良かった。この男からも家族が見えていないのだ。
あの右手からこのような男には、前が見えないくらいの光の幕のような物に見えるのだろう。その分乙部家の家族が見えないのだ。
「危ない所だった・・・がもうそれも終わりだ。お前の存在できるのは、いまはもうこの部屋しか無い。一歩も外には行けない。もう終わりにしよう。宮坂・・・」
「お前に・・・そんな力があるのか?俺を殺す気か?殺人だぞ、それは・・・」
「殺人だと?お前・・・自分の状況が把握できていないのか?お前は死霊だ・・・人間じゃない。そうか・・・肉欲が強すぎて、まだ生々しい感情がその霊魂の中に渦巻いているのか・・・外道よな。」
「死んでる?俺が?そんな事はどうでもいいや。しかしいい女だったぜ?あの女。親方の所へ連れて行く前には、俺の勝手だ。必ず味見してやっただけの話だからな」
そのにやけた顔を見た瞬間だった。
私の念気が弾けた!
その男には見えただろう・・・この部屋いっぱいに広がる光の輪を・・・それが最後だ。
シュッと広がり、そして閉じて行く。
私の感情にリンクして発してしまったようだ。
これでいい・・・それ以上聞きたくなかった。
それと同じ目でこの乙部家のお嬢さんたちも見ていたとしたら、ぞっとする。
まさかこの家に来るまでは、ここまで凄い家だとは、正直思っていなかった。
心が痛む・・・
続く