「乙部さん・・・今までのいきさつを聞いていてくれましたか?」
私は突然 振り返り乙部さんたちに聞いた
「はい・・・ちゃんと聞いていました。井口さんの言葉で大体の流れは把握できています。」
友子さんがそう答えた。
「井口さん・・・この部屋 異常に冷えてきたように感じるのですが、気のせいですか?」
乙部さんのお父さんが言ってきた。
「いえ・・・その通りです。冷えて来たのは、水の中と同じ状況になって来たからです。沼の底・・・そう考えてくれればいいのかな・・・そんな感じです。」
「沼の中・・・道理で藻の匂いがすると思っていました。」
これもご名答だった。お父さんはなかなかやるな―と思った。的確だ・・・
沼の底に沈んでいる、兵太クンの意識と、ここに今いるお良ちゃんの意識を引き上げる為に・・・肉体は朽ち果てて、沼も消えてしまっても、関係ない。
「最後の仕上げです・・・見ていてください。こんなに大変な内容と作業になるとは思ってもみませんでした。でも・・・やりがいはあるな・・・本当に。」
そう言って私はお良ちゃんの肩に手を置いた。
もちろんみんなからは見えないが、私が手を置いた状況が、不自然ではなかった事は、分るはずだった。
「さあ・・・お良ちゃん、呼びかけるんだ、遙か昔の自分と兵太くんに・・・」
「兵太!兵太!!出て来て・・・あたしを見て・・・・」
お良ちゃんは胸の前でしっかり手を握りしめながら叫んだ。
「兵太クン・・・もういいんだよ。本物のお姉ちゃんだよ。今なら壁を抜けて来られるはずだ・・・どう?」
その時 部屋の窓がガタガタと鳴った。
ラップ音も鳴りだした・・・
乙部の皆さんは、キョロキョロト周りを見回して怯えていた。
「さあ・・・手を貸すぞ!」
続く
次回は最終回です・・・