隣との境目のドアが開かれた。
そこは少し前までの奥さんの苦悩が渦巻いていた。
そしてその先の、小さな箪笥の上に、可愛いおもちゃがあり、その横に・・・悲しげにお菓子とジュースが置かれていた。
一体何日間・・・・奥さんはこの部屋で苦悩の時間を過ごしたのだろう・・・
そしてそこには、私の求めていた物があった・・・それは
「近藤大樹」と書いた紙が立てかけられていた。
「彼の名前は・・・近藤大樹くんですね?良い名前だ・・・・」
「ありがとうございます・・・まさかあそこで急に名前を求められるとは思っていませんでしたので・・・妻にも聞かずに付けてしまった名前で・・・本当にこんな名前で良かったのか・・・もっといい名前があったのでは無かったか・・・とずっと悩み続けてしまいました。本当に井口さんはいい名前だと言ってくれますか?」
いつのまにかご主人が今度は泣きだした。
相当悩んだのだろう・・・答えの決して出ない悩みに押しつぶされていたのだろう。
「ええ・・・私は勿論・・・彼も喜んでいますよ。二人で呼んであげてください。」
私はニッコリ笑いながら言った。
「はい!」
ご主人はそう言って奥さんの顔を見た。
そして2人は同時にうなずいた。
小さな声で「せーの」と言って
「大樹ちゃん!」「大樹!」
この時の2人の顔は、心に引っかかっていた物が、落ちた顔をしていた・・・
エクスタシーという顔だろうか。
「いまここで・・・はいはいして聞いていますよ。」
私が指さした場所は、お菓子やジュースが置かれた箪笥の前だった・・・
続く