「井口先生・・・何にも言わないでください。私たち夫婦は、間違いなく信じておりますから・・・井口先生の入って来た時からこの家の空気が、一気に変わったのは、私たちが一番分かっているのですから・・・私がこんなにまともに話が出来る事自体、主人が一番びっくりしていると思いますから・・・」
奥さんはそう言って笑いながら言った。
「本当ですよ・・・昨日までは妻と話をしていても上の空と言うか・・・話がかみ合わない事ばかりでした・・・だから自然と会話も少なくなっていたくらいですから・・・こんなにしっかり話が出来るのは、あの日以来かな・・・本当に、なっ!」
ご主人も釣られて笑いながら言った。
「本当にそうだね・・・会話が楽しい。かなしい気持ちがどこかに行っちゃった感じだもの・・・」
「そうですか・・・信じてくれたなら、私も全力投球しますよ。それでは会話方式でやりましょうか?私が大樹君の通訳士になりますから、質問して言ってください。いいですか?」
これは私の得意な、死者の遺言と言う手法です。通常の遺言は、生きている時に残す遺言ですが、私の場合は、死者から現在の状況での言い残しや、伝えたい事を伝える事をします。
それが死者になってからの遺言と言う訳です。
「そんな事が出来るのですか?嬉しい・・・それが一番うれしいです。」
奥さんはソファーに座り直すくらい喜んでいた。
「イタコのように、声まで真似をする事は出来ませんが、恐らく心当たりがある事が聞けるのではないかと思いますよ。」
続く