その美青年の生い立ちも複雑で苦労が多かった。孤児院で少女期を過ごしたシャネルと重なるところがあったのか、二人はすぐに意気投合し惹かれあっていった。
そして、シャネルの愛人を説き伏せ、資金を提供しシャネルの出店を実現させてくれたのだった。
シャネルは愛人と別れ、二人は恋人として過ごすようになった。
店も恋も順調だったシャネルに青天の霹靂の出来事が起こった。
それは、恋人が婚約したことだった。
彼はシャネルではなく、別の女性を結婚相手に選んだ。その女性は由緒正しい家柄で貴族だったからだ。
彼は生い立ちがコンプレックスであり、社交界でビジネスをする障害を感じていた。
シャネルはその気持ちが痛いほど理解できた。
シャネルも同じコンプレックスを感じていたからだ。
彼は結婚してもシャネルの元へ通い続けると言い、不満ながらもシャネルは承諾し、関係は続いていた。
けれど、そんなある日、彼は交通事故にあい、帰らぬ人になったのだった。
シャネルは飛んで会いに行ったが、彼の家族関係者から不審がられてしまい、ゆっくり見舞うこともはばかれた。
シャネルは心から嘆いた。
「資金を援助し、成功の基盤を作ってくれた・・・だがその陰で私を裏切ってもいた。天国と地獄、あらゆる思いを味合わされた。復讐したいと憎悪したこともあった・・・だが、裏切りがなんだろう・・永遠に会えなくなることに比べたら、生きていてくれるだけで、十分だった。なぜ、そう思えなかったのだろう・・」
より大きな不幸にあって初めてシャネルは気づいたと回想します。
けれど、彼は死んでしまい、もう二度と会えないのです。
喧嘩しても憎悪しても、生きて共に過ごせることに価値があり、素晴らしい縁なのだと思います。
もし、恋人とうまくいかないとき、悩んでいるなら、励みにしていただければ幸いです。