著書のエッセーを時々紹介しております。
本日の紹介エッセーは信頼をテーマにした内容です。
智子さん(仮名・40歳)には義男君(仮名)という中学生の息子さんがいます。ある日、義男君の友達のお母さんから電話があり、「うちの子がゲームばかりやってるから注意したら、そのゲームうちで買ってあげたものじゃないのよ。問いただしたら、『義男君から借りた』て言うの。ほんとに義男君に借りてるものか聞いてくれない。嘘ついてるみたいなの、内緒で買ったと思うのよ」
智子さんは、「義男に聞いてみます」と電話を切ったものの、対処に困っていました。なぜなら、義男君はゲームを貸してなかったからです。そのまま伝えれば、義男君の友達はこっぴどく叱られ、「義男が親にチクッた。あいつは信用できない」と義男君の信用はガタ落ちです。仲間はずれにされるおそれもあります。そうかといって、「義男がゲームを貸してます」とその場しのぎの対応をすれば、本当のことが発覚した時、相手の母親から「あてにならない人。信用できない人だわ」と智子さんが見限られてしまいます。
では、どうするか?こういう時は、隠し立てすることなく、正直に自分の状況や苦境について説明し、理解してもらうことが一番なのです。
「先日の、義男がゲームを貸してるかどうかの件なんだけど。申し訳ないけれど、その真意については、直接お子さんと話し合ってもらっても、いいかな。私も板ばさみで、あなたに誠実になりたいのね。でも、義男との信頼関係があやういものになりそうで…。義男とお宅のお子さんとの関係にも影響あることでしょう。こちらもどう対応したらいいか、わからなくて。義男は今のところは私になんでも話してくれるのね、ここで友達との関係が悪くなったら、信用されなくなって、何も話してくれなくなるんじゃないかと…。他のことなら相談にものるし、助けてあげたいのよ。だからなんでも相談してね。だけど、この件では申し訳ないけど、お役に立てそうになくて…」と相手を立てて丁重に話すことが大切です。口ごもったり、説明が足りないと誤解をまねき、関係が悪化します。自分の置かれている苦境を説明することで、「無理なお願いして、かえって迷惑かけたわね、ごめんなさい」と相手の気を損ねずにすみます。
ポイントは相手にとっても自分にとっても最良の方法で対処すること。解決の道がなくても、了承してもらえるよう努めることで、「かえって悪かったわ」「誠実な人ね」「信頼できる人だわ」という印象を与えることになるのです。