現代の人々は進歩と引き換えに多くのものを失った、特に精神的な豊かさを、なんて良く聞きます。
私なんかは典型的なクリシェ(紋切り型の表現)だと思うんですが、これを言っておくとなんとなく、ちゃんとしたコメントをしたような感じがしますから、テレビでも、日常生活でも頻繁に目や耳にします(ブログでもこれで締めている文章が山のようにあります)。
ただ、精神的な豊かさとは具体的には何を意味しているかが明確に示されることはまずありません。
ところで、国民生活調査に「今後の生活は物質的な豊かさと精神的な豊かさ、どちらに重きをおきたいと思うか」との項目があります。
当然ながら所得の低い人ほど「物の豊かさ」を重視し、所得の高い人ほど「精神的な豊かさ」重視しています。この傾向は30年前から変わりません。
また、若い世代ほど物を重視し、世代が上がるに連れて心を重視しているという傾向も見られるそうです。
この結果はある意味では当たり前です。
一般的に若い人は貧乏ですから。そして正直なのかも知れません。
物のほうが心よりも大事だと断言するには勇気が必要です。
年を取るに従って人は虚栄心と言うか、いいカッコウをするようになって心が大切なんてお題目を臆面もなく言えるようになるんでしょう。
大体、物と心なんてイメージだけで言われると、金のほうが大事に決まっているだろうなんて正直なことはよほど斜に構えている人ではないかぎりなかなか言えません。
みんなお金が入っている可能性がないことを知っているから、心なんて言うんでしょうね。
実際にそんな選択を迫られることもまずありませんから。
しかし、私は心の豊かさは物の豊かさにリンクしていると考えています。
貧すれば鈍すと言いますが、物質的に満たされていないと精神的にはなかなか満たされないでしょう。
たとえば、前にも書いたように、芸術なんかは食べることに追われているようでは生まれ、育つことができません(若い芸術家が貧乏であることは別の問題です)。
精神的な豊かさうんぬんと言えるのは、曲がりなりにも物質的に豊かになった日本人の贅沢な言い草でしょうね。
では。
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