会社が押しつける誓約書

「私が死んでも会社の責任は問いません。権利は永久に放棄します・・・」

ある関西の介護会社が、フィリピン人の女性職員たちにこんな誓約書を提出させていたそうです。

驚くかも知れませんが、実は、この種の契約書、誓約書、念書(煩雑ですので、以下、契約書に統一します)はそれほど珍しくありません。

多くの日本企業(特に、小企業)は従業員を縛るために、会社側に一方的に有利な契約書を交わそうとします(レベルはいろいろですが)。

そして、当然ながら、雇用関係は、建前上では平等であっても、雇う方が立場が強いに決まっていますから、従業員は署名を拒否することはできません。

しかし、このような契約書に署名・押印があったとしても、公の秩序や善良な風俗に反する内容、つまり社会的妥当性を欠く内容であれば、無効になります(民法90条)。

つまり法的拘束力はないということですね。

ついでに書いておくと、従業員が退職する際に、同じ業界の競合他社への転職などを禁止する誓約書(競業避止義務に関する誓約書)を書かされることがあると思います。

これも、原則として、法的拘束力は認められません。

職業選択の自由を侵害するなどの恐れがあるからです。

簡単に言うと、どのような契約があったところで、労働基準法、商法、そして最終的には憲法と、上位の法律が優先され、これらに違反するものはすべて無効なのです。

皆さんや皆さんの知り合いがもし、会社から契約書や誓約書をたてに理不尽な要求をされたら、泣き寝入りせずに、専門家に相談し、正当な権利を主張してください。

では。