かなり昔のことですが、大型台風が東北地方を襲い、収穫寸前だったリンゴが甚大な被害を受けました。
なんでも7割以上のリンゴが落ちてしまったとのこと(9割とする説もあります)。
被害に遭った農家のほとんどはこの不幸を嘆くばかりだったのですが、ある人が一つのアイデアを思いついたんですね。
残ったリンゴをちゃんとしたラッピングをして「落ちないリンゴ」として受験生に1個1000円で発売したんです。
そして、この「落ちないリンゴ」は大人気を博し、受験生のお守りとして飛ぶように売れたそうです。
正に起死回生のアイデアと称賛されました。
めでたしめでたし。
この話はしばしば一種の美談というか、機転の利いた話として紹介されます。
たとえば、既存のものを別角度から見て新しいものを生み出した例だというわけです。
しかし、本当にそうでしょうか。
私には納得できません。
それまでたとえば100円で売られていたものを、たまたま台風で落ちなかったからといって、10倍の値段で売るんですよ。
生産者はなんの努力もしたわけではありません。
なんの新しい付加価値もないのに、値段だけ極端に上げた。
それは藁にもすがりたい受験生は買うでしょう。
しかし、こんなのを人の弱みに付け込むと言うのではないでしょうか。
私にはとてもほめられたこととは思えません。
これでは真面目に働く気がなくなるでしょう。
これからはなにも苦労してリンゴを造らなくても、適当な名目を付けて高い値段で売ればいいと考える人がいたとしてもおかしくはないですね。
ひねくれた考え方かも知れませんが、こうした話はあまり持ち上げないほうが良いと思います。
では。
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