"幽霊"に負けたハイジン

img183.jpg

占いのお客様に50代半ばになるハイジンがいる。
"俳人"ではなく"廃人"である。
本人いわく「学生時代は成績が良かった」
30年以上も昔の話だが、無事に志望の大学に合格し上京した。
アパートは山手線沿いの所謂"曰く付き"物件だった。
不動産屋が「このアパートは、幽霊が出るとの噂で安くしましたが、あまりお勧め出来ません」
彼は「僕は幽霊なんて信じませんから大丈夫です」と、その曰く付き格安物件を借りることにした。
入居して程なく、かつて経験したことのない霊的な現象に遭遇した。
学業にも手が付かなくなり、大学も中退せざるを得なくなった。
爾来ふつうの生活をすることさえ儘ならなくなってしまった。
まともな職にはつけず、精神病院へ通うことになった。
霊的なことを否定し続けてきた彼もさすがに信仰を受け入れざるを得なくなりクリスチャンになった。
はじめて私が彼の(※その時は悪霊の出ない)アパートを訪ねた時も「僕はカトリック信者なので本当は占いは駄目と言われてるんですけど、占いが好きで...」ということだった。
部屋は煙草のヤニで黄ばんでいた。
第一印象が、失礼だが「生ける屍」という感じだった。
目は精彩を欠いており、焦点が定まっていなかった。
タバコを毎日二箱(40本)吸うヘビースモーカーだった。
障がい者年金で生活していた。
占いも格安料金でしてあげた。
とても喜んでくれたのは有り難いが、自分の弱さに立ち向かうまでには至らなかった。
「タバコを月1本ずつでいいから減らしたらどうか。3年頑張れば辞められるようになる」とアドバイスした。
彼は私の提案を拒んだ。
その時「もうこの人は廃人のまま、結婚もしないで人生を終わるんだろうな」と、予感した。
あれから、20年近く時が流れた。
1日40本ペースの喫煙を辞められない彼は、
「(半強制的に)精神病院に入院させられることになりました」と、
呂律の回らない声で私に電話を掛けてきた。
「あ、もう今生で彼に会うことはないな」と直感した。
どんなに、占い師がアドバイスをしても、最後は本人が命懸けで越えていかないといけない峠がある。
自己の弱さに打ち克つか否かで、運命が大きく変わることがある。