人間性喪失システム

89793.jpg人間の行動についての、ある有名な興味深い実験があるので以下に紹介します。

被験者が2人、くじ引きで生徒役と教師役を決めます。

そして、実験を指示する指導官が別にいます。

教師は生徒に問題を出します。

この問題は比較的簡単なものです。

正解の場合は次の問題に移り、間違えば生徒に電気ショックを与えることになっています。

この電気ショックは1から10まで段階を調節でき、間違いが続くに従って強くなります。

レベル10では生命の危険さえあります。

最初のうちは教師は生徒に気を使い、弱い電気ショックを与える時も謝り、電気ショックを強くしなければならない時には躊躇します。

しかし、指導官に叱咤され、強く命令されると徐々に平気になっていくんですね。

しまいには、生徒が泣き喚き、許しを乞っても、教師は許さず、生徒が死ぬかもしれないレベル10まで電気ショックを上げてしまいます。

間違うほうが悪い、命令だからと言いながら。

当然ながらこの実験はやらせです。

生徒役はあらかじめ決められていて、役者が務めます。

生徒が間違うのはわざとで、電気ショックも演技ですから、何も苦痛など感じていません。

要するにこの実験は、どの程度まで教師役が命令に従うかを見るためのものです。

そして、ほとんどの被験者が逆らわず、生命に危険があることを知りつつ、電気ショックを与えます。

つまり、人は自分の責任ではなく、誰かの命令であるとの言い訳があればどんなことでもできるんですね。

こうした人間の性質は昔から経験的に知られていて、軍隊などではこれを利用して命令への絶対服従をはかっていました。

だから戦争時にはとんでもない残虐行為が行われます。

兵士は何も感じず、ただ、命令に従うだけです。

企業においても、会社に忠誠心を抱かせるようなさまざまなシステムが実施されています。

よく会社ぐるみでの犯罪行為が発覚すると、なぜ内部告発しなかったのかと言った疑問が出されます。

しかし、内側にいる人間には何も見えなくなっていることが多いんです。

自分で考えなくなった人間は人間性をも失くしてしまうということなんでしょう。

では。