ダウンタウンの松本さんの番組で、最近は殺人事件が増えている、特に、凶悪な事件が多い、10年ほど前から親が子供を殺したり、子供が親を殺すような事件が増えた。昔はそんなことはなかったなんてことをある出演者が言い、他の人たちも賛成していました。
相変わらずのコメントですね。
しかし、実はこれは誤った思い込みなのです。
罪状別動向の「凶悪犯」(殺人と強盗、放火、強姦)についての統計によれば、殺人は終戦後から昭和40年代前半までは200人台から400人台で増減を繰り返し、40年代後半からおおむね減少傾向を示し、50年代に入ると100人を割り、その後現在まで、おおむね70人台から90人台で推移しています。
強盗については、昭和40年台前半までは、だいたい2000人から3000人の間で推移していましたが、減少傾向に転じ、昭和46年には1000人を割り869人になりました。その後は横ばいでしたが、平成になってからやや増加し、平成8年は1082になっています。
確かに、この数年だけを見ると増加傾向にありますが、全体的に見ると特に大幅に増えているとは言えません。
ついでに言うと、少年による犯罪が増えているとの指摘も結構聞きますが、実際には、少年犯罪は減少し、高齢者犯罪が増加しているんですね。
たとえば最近の犯罪白書を読むと、少年の検挙数は、昭和40年代が15万人前後、昭和55~60年ごろが25万人前後と増加、しかし、その後減少して最近はまた15万人前後になっています。
これに対して、過去10年で65歳以上の高齢者人口は1.3倍の増加で、高齢者による犯罪はそれを上回る3.5倍も増加しています。
現代は不良老年の時代なのです。
さらに言うと、家族間での殺人は、10年前から急に増えたわけではありません。
これは日本の犯罪の一つの特徴と言え、昔からそうだったのです(煩雑になりますから、これ以上、数字は上げません)。
そのために、日本では殺人事件の検挙率が高いと言われています。
肉親や親戚を調べれば犯人が捕まるのですから、捜査が簡単だと言うことですね。
では、なぜこうした間違った思い込みが一般化しているのでしょうか。
いくつかの理由が考えられますが、やはりマスコミの責任が大きいでしょうね。
まず、新聞やテレビは高齢者犯罪が増加しているとの事実をなぜか取り上げません。
どうも、ニュースやワイドショーの役割は、人々の不安を煽り立てることだと勘違いしているようです。
だから、少年犯罪が増加し、凶悪化している、肉親間の殺人が増えたと報道したがるんですね。
もちろん、キャスターやコメンテーターの不勉強もあります。
人は今は昔よりも悪くなっていると思いたがる傾向があります。
要するに犯罪率は増加している、凶悪化している、そして最近の少年は昔の少年よりも悪いと信じたいんですね。
前も書いたように人は自分の信じたいことしか信じませんから、今後、凶悪犯罪についての正しい知識がいくら紹介されても、浸透しないでしょう。
では
コメント