記憶の河を遡る(2)

IMG_0016.jpg続きです。

昨日の話から、最近一部で流行っている退行催眠を思い出しましたので、今日はこれを取り上げます。

退行催眠という言葉は日本でも最近よく耳にするようになったとは思いますが、あまり詳しくない方のために、以下に簡単に説明します。

要するに、催眠術によって、過去の抑圧された記憶を掘り起こそうというものです。

これを利用して、なんらかの精神的障害の原因を取り除く療法もあります。

また、退行催眠によって生まれる前、つまり前世の記憶まで思い出すことができるとも云われています。

退行催眠は、ご想像の通り、アメリカで生まれたのですが、ある女性が子供の頃に父親が殺人を犯したことを思い出した事件(1990年)をきっかけに、一躍注目を浴びました。

そして、多くの女性が幼い頃の性的虐待の事実を思い出し、父親に対して裁判を起こすといった現象も見られています。

しかし、その後こうした退行催眠によって呼び覚まされた記憶の信憑性について疑問視する声が高まりました。

確かに、これらの記憶は細部にわたって鮮明であるために一見真実であるように思えますが、実際には、それが事実であるとの証明がほとんどの場合できないんですね。

記憶とは本来非常に不確実なもので、事実とは異なる情報が思い出されてしまうこと、つまり、記憶システムの中で記憶情報の変容が起こってしまうことがあります。

これは、本人には間違った記憶だという自覚がまったくなく、正しい記憶のつもりでいることから、思い出せない場合よりタチが悪いと言えるでしょう

また、退行催眠には術者の能力、術者による暗示、被験者が過去に見聞きした情報の混入、被験者が術者の潜在的な欲求に応じてストーリーを演じる可能性などの問題があるとも考えられています。

もう少し続きます。