続きです。
ところで、「野生の少年」(1969年)という映画があります。
ヌーベルバーグ(よほどの映画好きじゃないと若い人は知らないでしょうね)の旗手と言われたフランソワ・トリュフォーの監督作品で、18世紀末にフランスのアヴェロンの森で発見された野獣のような少年の「教育物語」です。
「狼少女、カマラとアマラ」の話と似ているでしょう。
私は30年ほど前にフランスでテレビ放送されたのを見たことがあります。
ドキュメンタリータッチでなかなか良かったと思うのですが、いかんせんあまりにも昔のことなので、よく覚えていません。
それはいいとして、これは実話をベースにしているんですね。
「狼少女」とは違い、信頼に足る資料が沢山残っていますから、本当の話であることは間違いがありません。
この少年(ヴィクトールと名付けられます)は発見当時、四足で歩き、見世物になっていたのですが、パリでの検査の結果、親に喉を切られて捨てられた赤ん坊の成長した姿であり※、知能が非常に低いと判断されます。
※昔は結構こんなことがあったんですね。日本でも口減らしのために間引きといって、赤ん坊を捨てる(または殺す)ことがありました。
これに対して、内科部長のイタール博士は、ヴィクトールは、親に捨てられ長い間人間の手によって育てられなかったために、人間的な能力を発達させることができなかったのではないかとして、自宅に引き取って教育(実験)を始めます。
しかし、イタール博士はある程度の成果をあげることはできたものの、ヴィクトールは結局話すことができるようにはなりませんでした。
そして、イタール博士は、4年間の教育実験の後にヴィクトールから手を引いてしまいます。
まあ、見捨てたんですね(さすがに映画ではこの話はしなかったように思います)。
ヴィクトールは聾唖教育施設に引き取られるんですが、何年か後にやはり厄介払いされます。
その後の消息は知られていません。
なんか酷い話ですね。実験に使って、うまく行かないと見捨てる。
やはり現実は厳しいようです。
ともあれ、「野生の少年」の話は 人間にとっての環境の意味、言い換えれば環境の教育力の興味深いケースとして取り上げられることが多いようです。
しかし、難しいものですね。
「狼少女、カマラとアマラ」は嘘で「野生の少年」は本当の話だなんて普通は分かりませんから。
では。
「狼少女、カマラとアマラ」(3)
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