少し前のことですが、あるテレビ番組で、タレントの一人が「自分に霊が見える以上、あることは間違いがない」といった主旨の発言をしていました。
これはいわゆる霊感がある人に共通の主張でしょう。
一見正しく思えますね。
また、見えない人には言ってもわからないといった態度を取る人も多いようです。
しかし、残念ながら見えているから存在するとは限らないんです。
これは存在や認知の本質に関わる非常に難しい哲学的問題を含み、本気で考えると大変なので、ここでは基本的な話に留めさせていただきます。
脳研究では、脳は幻覚をよく視ることがわかっています。
そして、この幻覚は本人にとっては現実とまったく変りがなく、区別することは不可能なんです。
つまり、見たものが本当に存在することを証明するには客観的なデータを提示するしかないことになりますが、私の知る限りでは、霊についてこうしたデータが示されたことはありません。
こうした幻覚は実は感覚についても言えることで、四肢の一部(手、腕、足、脚)を失くした人が無くなった部分に痛みや痒みを覚えることは良く知られています。
これを幻肢痛と呼び、当人は本当に痛みを感じているんですね。
しかし、物理的、客観的には存在しません。
治療するには脳に無くなったことを納得させるしかないのですが、これは容易なことではありません。
また、脳に傷を受けたり、強い刺激を与えられた場合にも幻覚を視ると言われています。
この現象は場合によっては強い磁気を浴びても起きるようです。
いわゆる心霊スポットで多くの人が霊を見たり、何か異常な感覚を覚えることもこれである程度は説明がつくのではないでしょうか。
私は決して超常現象を完全に否定しようとしているわけではありません。
ただ、一見不思議に見えることでも常にできる限り理性的に、全ゆる方向から解釈する努力を怠ってはならないと言いたいだけです。
最後に脳が視る幻覚については「妻を帽子と間違えた男」(オリバー・サックス著 晶文社)と「脳のなかの幽霊」 (V.S. ラマチャンドラン著 角川21世紀叢書)といった大変な名著がありますので、興味がある方は読んでみてください。
では。
脳の視る幻覚
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