この世の中が住み難いことは、昔、夏目漱石も言っています。
もっと沢山の人が言っているでしょうが、今思いつくのは漱石ですね。
有名な「草枕」の冒頭の部分をご紹介します。
大変な名文です。
最近、この手の文章を書く人はいないんじゃないかな。
抜粋して引用します。
「山路を登りながら、こう考えた。
智に働けば角が立つ。情に棹させば流される。意地を通せば窮屈だ。とかくに人の世は住みにくい。
住みにくさが高じると、安い所へ引き越したくなる。どこへ越しても住みにくいと悟った時、詩が生れて、画が出来る。
人の世を作ったものは神でもなければ鬼でもない。やはり向う三軒両隣りにちらちらするただの人である。ただの人が作った人の世が住みにくいからとて、越す国はあるまい。あれば人でなしの国へ行くばかりだ。人でなしの国は人の世よりもなお住みにくかろう。
世に住むこと二十年にして、住むに甲斐ある世と知った」
漱石は一級の知識人で、なかなか難しい性格の人だったみたいです。
それはいいとして、たとえ住みにくくても、他に行くところはないし、結局のところこの世は住む甲斐があると言っています。
大人は信じられないそうです。
なるほど。
しかし、私だったら文句ばかり並べて学校の窓ガラスを壊して回る子供よりも、絶望を知った上で、それでもこういう前向きの意見を言う大人の方を信じたいですね。
では。
「卒業」と「草枕」(続き)
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