気分はいつもアンビバレント

突然ですが、「アンビバレント」という言葉をご存じでしょうか。

あまり聞きなれない言葉かも知れませんね。

アンビバレントとは、「相反する感情の」とか、「葛藤的な」、「反対感情の併存した」といった意味の形容詞です。

英語ではambivaelntと書き、フランス語でも綴りはまったく同じです。

ただ、発音は少し違って、アンビバランになります。

恋愛なんかで相手のことがすごく好きなのに、同時に憎くて堪らないといった時に使っても間違いではないでしょう。

私の好きな言葉の一つです。

それで、今日の話ですが、昔、パリに住んでいた時に、よく話をする仲のいい超一流の日仏通訳者がいました。

彼はミッテラン大統領の通訳を務め、いわゆる首脳会談なんかでは必ず呼ばれていました。

その彼が、「自分が通訳をする時はいつも不安と自信がせめぎあっているよ」とよく言っていたんです。

おもしろいですね。

彼のような自他ともに実力を認めるトップ通訳者でも常に自信満々ではないわけです。

ところが、特にまだ世間を知らない若者に多いのですが、意味もなく自信だけもっている人がいます。

私はパリでは翻訳・通訳会社を経営していたので、よく翻訳者を募集しました。

その時に実力を見るために翻訳を提出させたのですが、とても使いものにならないようなレベルの出来なのに、それを指摘されると、怒り出す人が結構いたんですね。

きっとプライドが高いのでしょう。

しかし、それでは社会では通用しません。

第一、自分の翻訳を批判されて怒るようでは進歩などするわけがない。

本当に実力があり、しかもそれに満足することなく、進歩を続ける人は常に自分をかえりみることができる人なのです。

自信と不安がせめぎあうアンビバレントな感情。

これを忘れないことが大切なのではないでしょうか。

では。