フランス泥棒事情(16) 空き巣編

それでは、昨日約束した通り面白い空き巣の手口を紹介します。

ある裕福な老夫婦が高級住宅街である16区の閑静なアパルトマンに住んでいました。

二人とも仕事を引退し、悠々自適の生活。※

※ フランスではかなり裕福な家庭でも共稼ぎが多いんです。この辺の話はまた機会があれば書くことにします。

ある日、彼らのところに手紙が届きました。

「おめでとうございます。あなたは懸賞に当選されましたので賞品のオペラ鑑賞券をペアでお贈りします」

老夫婦は、覚えはなかったのですが、本物のオペラの入場券が入っていたので大喜び。

チケットの入手が難しいと言われているかなり有名な演目で、その上良い席だったこともあります。

当日、彼らはいそいそと出かけました。

そしてオペラを十分に楽しみ、家路につきました(フランスではオペラに限らず演劇関係はかなり遅い時間に終わります)。

そして自分たちのアパルトマンのある建物に着くと、入れ違いに引越し会社の大型トラックが発車しました。

随分遅くに引越しするなと思いながら、アパルトマンの前まで行くと、なんとドアが開いています。

壊されていたんです。 あわてて家の中を見ると酷い有様。

家具という家具、家電製品、何もかも持ち出され、ほぼ完全に空になっていました。

そう、あのトラックだったんですね。

臍(ほぞ)を噛んでももう遅い(この表現は古すぎるかな。わからない人は辞書を引くこと)。

すぐに警察に連絡したものの返ってくる可能性はゼロです。

これはよくあった手口で、比較的知能犯と言えるでしょう。

犯人たちはあらかじめ調査し、老人の一人または二人暮らしの裕福な家庭に目をつけます。

そして、例の手紙を送るんです。

ある程度金持ちのフランス人はだいたいオペラが好きですし、特に無料に目がない。

そうした性質をうまく利用した犯罪です。

この老夫婦が犯人たちとすれ違ったのは犯人側の手違いでしょう。

それに鉢合わせしなくて良かったとも言えます。

出会っていれば最悪の場合、命の危険まであったのですから。

ただより高いものはない、余りにもありきたりの教訓で今日の話を締めくくらせていただきます。IMG_0016.jpg

では。