運命(大人の寓話続3)

運命はうなずきました。

「毎晩、わたしが人間たちに投げてやった

贈り物を見ていただろう。

金と宝石を受け取った人々は生涯、金持ちでいられる。

しかし、小石と小銭しかもらえなかった連中は、

一生貧しく困窮する。

おまえは小石と小銭の日に生まれ、

おまえの弟は金と宝石の日に生まれたのだ」

兄は何とか成らないか運命に頼みました。

運命はちょっと考え込みました。

「おまえの弟には娘がいるが、

彼女も父親のように金と宝石の日に生まれた。

その娘と結婚しなさい。

そうすれば、彼女がおまえの幸運になるだろう。

しかし、おまえの所有するものは、すべて彼女のものだ

ということをくれぐれも忘れるんじゃないぞ」

貧しい男は運命に礼をいって急いで家に帰ると、

弟の家に行き、弟の娘との結婚を申し込みました。

弟が承知したので、結婚式があげられました。

ミリザが兄のところでくらすようになると、

たちまち運命が変化し、

あっという間に兄は金持ちになり幸せに暮しました。

この物語は大人の童話集に書かれている

「運命と中年」という話です。

「中年になると人は自分の限界を知り運命を受け入れ

心静かに人生を送るようになる。」

この物語はそれを教えているという人もいます。

この物語には続きが有って、豊かに成った男に、

旅人が「この農園は誰のものか」と尋ねます。

男は「この農園はわたしのものだ」と答えました。

すると農園は火事に見舞われ燃えて行きます。

男は慌てて「この農園は妻ミリザのものだ」

と言いなおしました。

すると火は消え農園は元に戻ったそうです。