運命(大人の寓話続2)

そして、真夜中になると昨夜と同じように声がしました。

運命は立ち上がって小さな木製の箱のところに行くと、

銀貨をどっさり取り出しました。

「新しい魂には、今日、わたしが楽しんだだけの恵みをやろう」

運命は叫んで、銀貨をばらまきました。

朝になって男が目を開けると、そこはさらに小さな家でした。

その夜の夕食もさらに質素になっていました。

そして、夜中に猛々しい声が叫ぶと、運命はその日、

生まれた魂に銅貨をあたえました。

これが毎日続き、とうとうある日、男が目覚めると、

ちっぽけなあばら屋にいました。

運命は外にいて、食べる物を探していました。

その夜の夕食は小さなパンが一個でした。

真夜中に猛々しい声が叫ぶと、

運命は小さな木製のたんすを開けて、

小石と小銭をばらまきました。

「新しい魂には、今日、わたしが楽しんだだけの恵みをやろう」

運命は宣言しました。

「彼らは一生、今のわたしのように暮すだろう!」

朝になると、貧乏な男はまたもや壮麗な城にいました。

すると、運命が貧乏な男のほうを向いてたずねました。

「なぜ、はるばる、わたしに会いにやって来たのかね?」

「おれは朝から晩までいっしょうけんめい、働いているんです。

それでも、不幸ばかりが次々に起きる」貧しい男は説明しました。

「だから、その理由を教えてもらおうと想ってやって来たんです」

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