蔵の中には… 〜ホンマにあった、ちょいおそがい話〜

  
 
『…また、何かあったとですか?』

ワシは、目の前に座ったリピーターである女性に話し掛けた。

『いえ…』

彼女はかぶりを振った。

『今回は、お礼を云いたくて。

予約して、鑑定をして貰ったら…お金、払えるじゃないですか』

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…かなり泣かされました。

『でも、本当に感謝してもし尽せないんですよ?』

彼女は云うた。

…なんか

魔導士やっとって良かったなぁ…って。

彼女の夫(婿養子)が経営している会社は、不況のあおりでかなり苦しくなっていた。

その原因を色々探っていると、風水の鑑定では診ていなかった、少し離れた場所に蔵がある事が、たまたまひょんなことから話に上がってきた。

…そこに何か、感じる。

『割高になってしまうかもやけど…そこ、診せて頂いてよろしいですか?』

ワシの方から、営業掛けてしまったw

曾爺さんか曾々爺さんの時代に建てたと云う、立派な蔵。

『この時代は…本当に豪農だったみたいで…商売も少ししてたらしいですよ』

蔵の戸を開ける。

ホコリとカビの臭い。

『もう…ね、手ぇ付けられなくて、放置…ですよ=mark_11=』

お宝の臭いも…少々。

でも…

その片隅に…

『…狐?』

置物の様に、阿吽の狐の石像。

『5〜6年位前の大型台風で、蔵の横に建てられてた祠が飛んでしまって…

危険やから、って、取り壊して、中のモンを取り敢えずココに移したんです』

曾爺さんの時代に、蔵の横にお稲荷さんを勧請して貰って祠を立てていたそう。

『…これ、ちゃうかなぁ?お宅の会社が業績上がらない原因…』

呼び付けられるだけ呼び付けられて、放置されている鏡やら石やら…色々無造作に置かれている其処から発せられているモンからは、勿論悪意以外は感じられない。

つか…

『…む〜っちゃ、怒ってはるやん?』

『スミマセン。

存在自体を、すっかり忘れてました…!』

印を組み、真言を唱えながら、ワシは彼女に水や酒や…色々、必要物品を持って来て貰う。

席を外しても良いから…と、買い物にも行って貰った。

そして…その間に、ワシも色々“お道具”を出し…

彼等と“取引”。


『もっかい…大きくなくて良いので…祠を建てるコトは可能ですか?』

『え?そんなお金は…』

『この蔵の中の…上の右奥の方に、売ったら金になるモン、あるらしいです。

それ売って、充てて下さい』

複数尾を持つ狐と共に現れた、痩せてて眼鏡をかけた、着物を着た爺さんの、意思。

(後に確認したら、曾爺さんの写真とそっくり…つか、曾爺さん本人でしたw)

彼女はワシに云われた通りにしてくれて…

更に、その売れた焼き物は、祠を建てるだけでなく金額的に余力があったらしく、会社の運営資金の一部にもなったらしいw

(そんなモノが蔵の中に眠っていたとは微塵も思わなかった!って^^;)


彼女の話では、会社は新しい取引先が出来て持ち直し、良い流れになって来たそう。

『蔵の中、これから整理したり…色々“いじり過ぎ”たら嬉しくないらしいですよって、しばらくこのまま置いて下さい。

触って良い時期になったら、また指示しますね^^』

ワシは彼女に云うた。

『ええ。

…実は最近、主人が“まだ何か売れるものがあるんじゃないか?”って蔵に入ろうとしたら、扉がびくともしなくて…

きっと“入るな”ってことなんだろうね…って、諦めたところだったんです』

『いや〜ん!こっわ〜い!!』

ワシは笑った。

彼女も笑っていた。

その笑顔は、数年前、初めてお逢いした頃の彼女とは全く別人のようだった。


えへへ…=mark_04=